塙バイオマス発電計画、白紙撤回

 福島県塙町のバイオマス発電所計画(汚染木材の焼却発電)の中止、今日になってようやく検索に引っかかってきました。以下は読売新聞と福島民報の記事です。

塙町長、バイオマス発電の撤回表明  
 2013年9月21日  読売新聞
 
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukushima/news/20130920-OYT8T01207.htm?from=tw
 東日本大震災で生じた廃材などを活用するため、県と塙町が町内に計画している木質バイオマス発電事業について、菊池基文町長は20日、「事業計画を取り下げる」と発表した。木質バイオマス発電事業は復興交付金を活用し、総事業費約60億円。来年度中に稼働する予定だったが、8月に発生した鮫川村の仮設焼却施設の破損事故を受け、町は県に対し、計画の一時凍結を申し入れていた。取り下げの理由について、菊池町長は「現段階で町民の理解をいただいたとは言えない。理解を得るには相当の期間が必要と判断し、取り下げることにした」と述べた。町は今後、正式に県に文書などで計画取り下げを伝えるという。事業を巡っては、「木材の焼却で放射性物質の拡散や、風評被害を招く恐れがある」として、町民グループ「塙町木質バイオマス発電問題連絡会」が反対運動を展開。同会は今月14日、菊池町長が事業を白紙撤回しない場合、町長の解職請求(リコール)を行う方針を決め、リコールに必要な署名集めの準備を進めていた。同会の吉田広明代表57は「突然でびっくりした。まだ正式に説明を受けたわけではないので、白紙撤回まで慎重に対応を見極めたい」と話した。
 

 読売は鮫川村の指定廃棄物焼却炉の爆発事故との関係には触れず(一行だけ)、「住民の反対」が功を奏したかのような書き方です。
 

塙のバイオ発電中止 町長「住民の理解得られない」
2013/09/21 09:00
http://www.minpo.jp/news/detail/2013092111013

 塙町と県が事業化を目指していた県内最大規模の木質バイオマス発電施設をめぐり、菊池基文町長は20日、整備計画の中止を表明した。同町は8月29日に発生した鮫川村の仮設焼却施設の破損事故を受け、地域住民の不安を拭えないとして5日に同施設の計画凍結を発表していた。菊池町長は町内の塙農村勤労福祉会館で記者会見し、「施設は町内から産出される間伐材の有効利用が主な目的と考えていたが、住民の間で除染目的の施設との認識が先行し、住民の不安感から計画への理解を得るのが困難になった」と説明した。さらに鮫川村の施設の事故について「鮫川村の施設の安全性を踏まえた上で計画を進めたかったが、施設の再稼働に時間がかかるのは必至」とし、「苦渋の判断だが、計画を白紙に戻す」と述べた。町は今後、県に正式に計画中止を連絡する。また行政区長を通じ町民に説明するとしている。県県南農林事務所は「町から正式な話を受けていないのでコメントできない」としている。施設は町内東河内の民有林内の約4ヘクタールに建設を計画していた。今年度から町が用地造成に入り、平成26年度後半にも稼働する予定だったが、地元の一部住民の反対を受け、町は用地買収に着手していなかった。

 福島民報は、鮫川の事故が白紙撤回の要因だったことを、正直に伝えています。
 でも、この二つの計画は、もともと連動していたんですけどね。それは↑と↓の記事からでもわかる。

塙で「木質バイオマス発電」 14年度稼働目指す
2013年2月16日 福島民友ニュース
 福島県と塙町は新年度、東京の事業者を誘致し、同町の民有地に発電出力12メガワット(1万2000キロワット)の木質バイオマス発電施設を整備する。発電した電力は電力会社への売電を予定。施設の運営などで約80人の雇用を見込み、2014(平成26)年度の稼働を目指す。菊池基文町長らが15日、記者会見して発表した。建設予定地は約4ヘクタールで、新年度に着工する。総事業費は60億円以上と試算。県が国の交付金による基金から半額を補助する方針。県の新年度当初予算案に関連費用を計上した。燃料には東白川郡など県南地域の木材を使用、検査で放射性セシウム濃度が1キロ当たり100ベクレルを下回る安全な木材に限定して利用する。県などは町の約8割を占める木材資源を利活用し、木質バイオマス発電で再生可能エネルギーの導入を進める。

 
 私が現地に行ったのは2013年6月末。2014年度内に稼動予定なら、各種手続きも、用地買収もおおむね最終段階にあってもおかしくないのに、具体的な資料はゼロ、誰もきちんとした情報を知らなかった。で、塙バイオマスは、進行中の鮫川村の焼却炉計画から目をそらすためのダミーではないかと思ったものです。鮫川を先行させるのが最優先かと。
 これは、鮫川についての完全な情報ブラックアウトを見てもあきらか。
 たとえば、8月29日の鮫川の爆発事故を翌日伝えたのは、一部の地元紙だけでした。地元の人にさえ伝えられなかったおいう恐ろしさ。また、上の記事に出てくる塙の「連絡会」は、「鮫川の問題は地元の人がやって」と、私にはっきりノータッチを宣言してたっけ。
 で、私は9月17日に環境省を突撃取材したけど、連中、爆発したケーシングの材料さえ知らず(日立に電話させ、確認させた)、あまりの無責任ぶりに怒りつけてしまいました。
…これって、放射線廃棄物処理は、すべて企業の手に握られているという意味です。福島県南部は日立造船か。2013.9.23

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/