プラ焼却と大気中のビスフェノールA

 環境ホルモン(内分泌かく乱物質)が騒ぎになったのは、テーオ・コルボーンの「奪われし未来」がきっかけでした。そういえば、最近、あまり聞きませんね……
 
 確か当時は水質汚染が問題になったと記憶していますが、今や地球上のどこの大気中にも、このビスフェノールA(BPA)が普通に存在しているということです。この驚くべき研究を発表したのは、北大の川村教授ら。http://www.sciencedirect.com
 
  彼らは、特殊な溶液と、ガスクロマトグラフィなどを用いて、農村部、都市部、海岸部、極地などにおけるBPAの集中度を調べ、その結果、BPAは世界中に敷衍しており、場所によって四桁以上も濃度が違い、大陸から離れるにつれ減少することがわかったそう。1-3-5トリフェ二ールベンゼン(廃プラ焼却の追跡子)との間で正の相関関係も発見されていますが、これは都市部における廃プラ焼却が、大気中のBPAの大きな発生源であることを示しているということです。
 …確かに。BPAそのものも可燃性のある有害物質ですが、それよりも、エポキシ樹脂やポリカーボネーと樹脂の原料として多方面で使用されていることから、廃プラを燃せば、BPAが大気中に出るのは避けられません。なのに、それを取り締まる法律はないのです。まさか、都市部の男たちの女性化は、そのせいじゃないよね。
 ところが、WIKIPEDIAでBPAを調べると、「通常の摂取条件ではヒトに対して大きな影響を及ぼすものではないという考えが強まっている」し、厚労省も「成人への影響は現時点では確認できない」などと書かれています。化学工業会と関連学会でそういうことにしたようで、その証拠に、「奪われし未来」のことなんかどこにも書いてありません。
 
 でも、もともと大気中にはBPAなんて決して存在しなかったのだから、廃プラ焼却が大きく関係しているのは確かでしょう。これを人体、特に将来世代が受け止めることができるなんて考えないでほしい。「プラごみはもっと燃せ」なんてことをいう焼却派は、それが将来に何をもたらすか、よくよく考えてほしい。2010.9.10
〔参考〕
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%8E%E3%83%BC%E3%83%ABA
http://www.nihs.go.jp/ICSC/icssj-c/icss0634c.html

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/