TEPCO,電力料金3割値上げ? そして原発復帰?

 関東地方にお住まいの方、東電による前代未聞の大幅値上げが計画されているのをご存じですか?

東京電力が「規制料金」を3割前後の値上げ申請へ 6月以降になる見通し 2023/01/20 13:48 半数の家庭が契約する、電力の「規制料金」の値上げを東京電力が週明けにも、国に申請する方向で調整に入ったことがわかった。電力の「規制料金」は国の規制で「上限」が設けられており、大手10社すべてが上限に達している。燃料費の高騰で電気を売るほど赤字が膨らむ状態が続き、すでに東北、北陸など5社は4月から平均で28~45パーセントの値上げを経産省に申請している。東京電力は、週明けにも値上げを申請する方向で調整に入った。関係者によると、値上げ幅は3割前後で、値上げの時期は6月以降になる見通しだという。(ANNニュース)

 すべての電力会社による一斉値上げというのは、明らかな価格カルテルであり、独占禁止法違反です。なぜなら①エネルギー供給は極めて制限が多い取引分野ですが、その分野の主構成員である大手電力が一斉値上げに走れば、当然、市場での実質的な価格競争はできなくなるから。(独禁法2ー6「・・・公共の利益に反して、一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」)。②他の事業者と結託していたかどうかは、今はまだ不明ですが、昨年、大手電力四社がカルテルで摘発されるという事件があったばかり(↓参照)。状況は他電力も同じで、同様の事件が起きる素地は整っていたわけです。

電力カルテル 大手電力会社に課徴金命令へ 過去最高額の見通し 2022年11月26日 6時02分 NHK 事業者向けの電力の販売をめぐり中部電力、中国電力、九州電力などがカルテルを結んでいたとして、公正取引委員会が総額で少なくとも数百億円の課徴金を命じる方針を固めたことが関係者への取材で分かりました。課徴金としては、過去最高額になる見通しです。公正取引委員会は、「中部電力」や「関西電力」「中国電力」「九州電力」などがオフィスビルや工場といった事業者向けの電力について、互いの営業エリアで顧客を獲得しないよう申し合わせるなど、カルテルを結んでいた疑いがあるとして、去年4月から7月にかけて立ち入り検査に入り、調べを進めていました。関係者によりますと、こうした申し合わせは会社間で協議のうえ、2018年ごろから行われていたとみられ、競争を不当に制限する独占禁止法違反に当たると判断したということです。そして、再発防止を求める「排除措置命令」とともに、中部電力、中国電力、九州電力などに総額で少なくとも数百億円の課徴金の納付を命じる方針を固めたということです。課徴金としては過去最高額になる見通しです。電力の小売り市場は、2016年に全面自由化されたことで各地の大手電力会社がほぼ独占する構図が変わり、異業種からの新規参入も相次いで競争が激しくなっていました。

 報道によると、摘発されたのは、価格取り決めではなく、「顧客獲得を制限する申し合わせ」とのこと。その理由として、2016年からの「電力自由化」で、大手電力独占の構図が変わったからだということですが・・・実際は大きな構造は変わっておらず、今でも日本のエネルギー源を握っているのは大手電力です。そして、現代社会は―特に都市部はーエネルギーがないと一日も成り立ちません。水も食料も医療も安全も、エネルギーが確保されているという前提で、初めて調達できるのです。エネルギーは市民の死活問題に直結するのです。

 ・・・中には、こういうニュースを見て、「やっぱりガスや石油に頼らない再エネしかない!」と考える人もいるかもしれません。でも、それって逆。再エネとは、エネルギー難民を生み出すために導入された政治的幻想であり、やっていることはエネルギー浪費、環境破壊、法治無視、市民監視、市民統制・・・なのですけどね。これらについては山本の過去記事を検索して下さい。

 腹が立つのはTEPCOです。2011年3月11日に起きた東北大地震で「原発3連続メルトダウン」という世界最悪の原発事故を起こしながら、被害者や避難者への補償ゼロ、反省ゼロ。そして今は再稼働を画策し、今年中には世界中の反対を押し切って、汚染水を太平洋に流す予定です(すでに一部は放出しているはず)。そのTEPCOが今また平然と電力値上げを画策しているのは、経産省と広範な企業連合体のバックアップのおかげでしょう。何しろ今回の値上げの対象は「企業」ではなく、「一般市民」なのだから。

 なお、エネルギー源として彼らが今後、打ち出そうとしているのが、「小型原発SR(Small Modular Reactor)」です。↓にいくつか記事の見出しをあげておきますが、まだ開発段階。しかしすでに受注合戦が始まっていて、現在の電料金値上げの下、プロパガンダPRを広げて、社会に受け入れさせる作戦が実行されています。

小型モジュール炉(Smr)開発の動向と原子力機構における …2022年9月9日SMRは安全性向上や立地・運転・利用に関する柔軟性等の社会ニーズに対応できる可能性のある有望な選択肢として期待される一方で、その多くは開発の途上段階にあり、SMRの社会実装を実現するためには・・・

日立とge、カナダで次世代原子炉を受注…世界的に原発再評価 …2021年12月3日カナダに建設されるSMRのイメージ図(GE日立ニュークリア・エナジー提供) GE日立が受注したのは、出力30万キロ・ワット級の沸騰水型SMR。

 これに期待を寄せているのが「再エネ反対派」です。もっとも、きっちり問題を抑えていれば、期待などできないことはわかるんですけどね。日本はどうかな…

2023.2.03

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/