愛知学院大,「幹細胞」論文不正で取り下げ

 山本は今年から「論文取り下げ」のサイトをフォローしています。毎日膨大な情報が流れてくる中で、とりあえず「見出し」は読むようにしていますが、論文不正は特に「医学関係」に多いことを実感しています(社会科学系、物理系もあるんですけどね~)。

 そして、今日、目についたのが「幹細胞研究者らの論文取下げは23に、研究機関が不正行為を認定」という情報。

 …読んでびっくり。「幹細胞」を用いた技術開発がさかんな日本にとって、これは相当ショックなはず。

 で、検索したら、日本でも報道されていました。

愛知学院大元講師ら 20論文で不正認定 図表を捏造

2020/11/21 11:33 (2020/11/21 12:09更新)

愛知学院大(愛知県日進市)は21日までに、尾関伸明・元歯学部講師と茂木真希雄・薬学部准教授らが2013~17年に発表した20編の学術論文で、存在しないデータから図表を捏造するなどの不正があったとする調査結果をホームページ上で公表した。

2人のいずれかが主な著者などとなっている20論文を調査し、全ての論文で計149の図表の捏造を認定した。

尾関元講師が実験や図表の作成を担当。調査に対し、図表の基となったデータが全く提示されなかったという。茂木准教授は指導的立場にあり、データを確認しないまま論文執筆を進め、責任は重大と判断した。2人の他に論文に関与した歯学部元教授ら11人も、共著者として正確性を担保する努力を怠った責任は免れないとした。処分を検討する。20論文の撤回手続きを進めており、うち4編は既に撤回された。愛知学院大は、引田弘道学長名で「研究倫理の徹底を図り、再発防止に努める」とのコメントを発表した。

大学は18年3月9日に論文1編の捏造を公表、元講師は同13日付で退職した。関連する論文を追加調査していた。〔共同〕

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 全論文で、図表の元データがなかったなんて考えられない。私たち一般人は「これは研究費取得をめざした詐欺、犯罪」だと考えますが、学者は特別な人間。彼らは特別に保護されているのです。

 記事にある「調査」メンバーも基本的に学内のものだし、「処分」といっても学内処分、あるいは一定期間の「謹慎処分」で終わるはず。メディアは不正学者の名前さえ出していません。

 でも彼らの研究には国の科研費が使われているため、その窓口である日本学術振興会はこんな↓声明を出しています。

科学研究費助成事業に係る研究活動の不正行為について

 本会は、「研究活動の不正行為及び研究資金の不正使用等への対応に関する規程」(平成18年12月6日規程第19号)に基づき検討を行った結果、科学研究費助成事業に係る研究活動の不正行為を行った以下の研究者に対し、措置を講ずることとしました。

●措置の対象者と措置の内容
① 尾関伸明講師(愛知学院大学歯学部)

平成30~35年度の6年間、本会の所管する全ての競争的資金等への応募・申請を制限する。
② 茂木眞希雄准教授(愛知学院大学薬学部)

平成30~35年度の3年間、本会の所管する全ての競争的資金等への応募・申請を制限する
③ 中村洋名誉教授(愛知学院大学歯学部)

平成30~35年度の2年間、本会の所管する全ての競争的資金等への応募・申請を制限する。

●不正行為が行われた競争的資金及び交付額

  研究種目:若手研究(B)
  研究課題名:3種類の幹細胞を用いた象牙質・歯髄複合体再生治療法の開発
  交付額:平成22年度~平成24年度 4,030千円

  ●不正行為の内容

  ① 尾関伸明講師・・・責任著者である被通報論文1編で捏造、改ざんを行ったと認定された。

  ② 茂木眞希雄准教授・・・当該不正行為に関与したとまでは認定されなかったものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文の責任者としての注意義務を怠ったこと等により、当該論文の内容について一定の責任を負う著者として認定された。
  ③ 中村洋名誉教授・・・当該不正行為に関与したとまでは認定されなかったものの、不正行為があったと認定された研究に係る論文の責任者としての注意義務を怠ったこと等により、当該論文の内容について一定の責任を負う著者として認定された。

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 以上、学術振興会のサイトhttps://www.jsps.go.jp/j-grantsinaid/06_jsps_info/g_180315/index_2.htmlから一部抜き出し。

★ 一番驚いたのは、2006年まで「論文不正」の規程さえなかった=禁止されていなかった=こと。文科省は法制化を避け、窓口の学術振興会にまかせてお茶を濁している(https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/hojyo/07051621/002/002.htm)。その後になって各大学も倫理規範を設けたようですが、それまでは論文不正が野放しだったわけです。

★「若手研究」と言う言葉にはずっと違和感がありました。上サイトは、「 若手研究(スタートアップ)は、若手研究者が自立して活躍できる機会を確保し、若手研究者の活動を活性化するため…将来の発展が期待できる優れた着想を持つ研究計画を対象とする研究種目」としています。でも、わざわざ「若手」を抜擢するのは、倫理感が強い経験者に比べ、野心と功名心が強い若手の方が、カネになる研究ができるからでしょう。こうして「若手」ほど倫理観を無くしてゆく。

「愛知学院大学における研究活動上の不正行為に関する追加調査結果について(概要)」 を見ると、相当数の研究者がかかわっていたことがわかりますが、不正を認定されたのは二人だけ。でも、論文の影響を考えると、学内だけで調査を完結させるのはおかしい。特にこの論文を「査読」し、評価した連中の責任が全く問われないとしたら、それもやはり医薬産業界全体の「組織的腐敗」を示していると思えます。

★ 腹が立つのは、不正が「認定」され、不名誉が国際的なものとなっても、依然、科研費の応募が全面禁止されていないこと。そこには背後の医薬産業界への組織的「忖度」があるのでしょう。

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 論文不正は犯罪とされていません。学者本人も自分が罪を犯したとは考えておらず、「見つかっちゃった」のレベルでは?

 ご存じの方もいるでしょうが、学者の常識は一般人の常識と違います。彼らは「学問の世界」を取り巻く異様な仕組みに浸り、正常な社会を知らないのです(社会科学系も法曹界も同じだからね)。

 今のワクチンには、胎児細胞や、犬・サル・芋虫など動物細胞で培養したウイルスが使われていますが、その倫理感のない、悪しき慣行に対し、学者が文句をつけたという話は聞いたことがない(海外はありますが)。倫理観のない科学者は社会に害毒・危機を及ぼすことを知っておきましょう。2020.11.25

(訂正:見出しの「肝細胞」は「幹細胞」の誤りでした。ご指摘ありがとうございます。2020/12/1)

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/