風力発電事業で、警察が市民情報を企業にもらしていた件

 なかなか面白いニュースが飛び込んできました。朝日新聞の特ダネです。まずはじっくりお読みください。

県警、反対住民の情報漏らす 発電所巡り中部電子会社に

朝日新聞デジタル 7月24日(木)5時53分配信 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140724-00000004-asahi-soci

 岐阜県大垣市での風力発電施設建設をめぐり、同県警大垣署が事業者の中部電力子会社「シーテック」(名古屋市)に、反対住民の過去の活動や関係のない市民運動家、法律事務所の実名を挙げ、連携を警戒するよう助言したうえ、学歴または病歴、年齢など計6人の個人情報を漏らしていた。朝日新聞が入手した同社の内部文書でわかった。地方公務員法(守秘義務)違反にあたる可能性もある。 シーテックは大垣市上石津町と同県関ケ原町に16基、最大出力4万8千キロワットの風力発電施設の建設を計画。低周波による健康被害などを心配した上石津町の上鍛治屋地区(46戸)は2月、測量に伴う同社の立ち入り反対を決めた。朝日新聞が入手したのは、同社地域対応グループと大垣署警備課長らとの協議内容をまとめた「議事録」で、2013年8月7日、14年2月4日、5月26日、6月30日の4回分

 何が面白いかというと、①警察は市民のためではなく、企業のために動いていること、②その事実が珍しく「表沙汰」になったこと、です。

 まともな市民運動をしていれば、警察や行政が決して市民の味方ではなく、企業に手を貸しているのでは、と思うことはよくあるでしょう。内部の情報がいつのまにか相手に伝わり、「先に手を回された」と感じたことも少なくないはず。でも、グローバル社会の中では、企業がこうして警察・行政と一体化し、肥大化してゆくのは当然なのです。地域によってはこれに自治会(長)や区長、自治会連合会(長)が情報源として加わるし、もっと陰険な形で、市民団体や個人が情報収集に当たることだって珍しくありません。

 でも、それが「バレてしまった」のは珍しい。警察へ情報公開請求をかけたようですが、同じ問題を抱えている地域は、ぜひこれにならって公開請求してみてください。「あっと驚く」事実が沢山あきらかになることでしょう。

 もひとつ面白いのは、➂「再エネ」が実は原発企業の新利権であることを、偶然にもあきらかにしたこと。再エネは「新エネ」と呼ばれていた頃から補助金づけでしたが、311後は代替エネルギー源として脚光を浴び、2012年には国が全面的にバックアップする新産業構造として国策化されました。もちろん、原発と並行で。だからこそ、東電、中電などが新たな利権を求めて参入しているのですが、その事実はあまり知られていません。

 その結果、日本各地で怒涛のような「再エネ」施設が乱立し、森林は丸裸にされ、農村は侵食されるなど、環境破壊の一歩手前といった状況です。恐ろしいのは、これらの施設が廃棄された後の話。素材にさまざまな有毒化学物質が使われているし、施設の耐久性が悪いため、短期間で廃棄され、それがほとんどそのまま産廃として「焼却」されるのです。どれだけ廃棄物が出るの? どこで燃やすの? どこに埋めるの? 残留毒性は誰が管理するの?これらの問いに答えがないのも、原発と同じじゃない?…でも、国の規制がないため、企業はやりたい放題(地方自治体は拒否・規制する権限があるので、念のため)。

 市民といえば、「再エネ、いいんじゃない?」と思い込んでいる人が多いし、脱原発派は歓迎(原発がなくなれば、と。意外と何も考えていない人、誰かのいうことを間に受けて信じ込む人が多い)、グリーンピースも支援しているからし、反対する人はまだ少ないんだよね。とにかく「オールジャパン」なので、警察もその少数の反対市民の情報を事業者に流し、警戒するようになどアドバイスしているわけ。もちろん公務員法違反、情報公開・個人情報保護法(条例違反)…その前に憲法違反なのでね。関係者は告発・告訴してほしいもんです。警察は私警化するな! 2014.7.24

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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