日立が正式にイギリスの原発計画の凍結を発表しました。
「いったん止める」とありますが、周辺の事情を探ると、一刻も早く完全撤退するのがベストな選択肢のようです。
日立、英原発建設凍結=今期3000億円の特損計上-完全撤退も視野2019/01/17 21:24時事通信社
日立製作所は17日夕、取締役会を開き、英原発建設計画の凍結を決めた。採算性への懸念から日立が事業継続の条件とする出資集めのめどが立たず、損失拡大を防ぐためにいったん計画を止める。人員を縮小するとともに2019年3月期に3000億円の特別損失を計上。連結純利益予想を1000億円(従来4000億円)に下方修正した。
日立の東原敏昭社長は東京都内で記者会見し,「英政府から(経済合理性に見合った)新たな提案がなければ、これ以上の投資はできない。意思決定の先送りで将来にリスクは繰り越せない」と凍結の理由を述べた。英政府との協議は継続するが、英原発事業の売却・完全撤退も視野に入れる。さらに東原社長は英計画凍結を受けて、国内の他の原発メーカーと人材確保に向けて協議を進める考えを表明。業界の統合再編に関しても「そうした話があれば一緒に議論したい」と述べた。三菱重工業もトルコでの原発建設計画を断念する方向で検討中だ。大手メーカーの方針転換で、国策として官民一体で進めてきた原発輸出政策は大幅修正が避けられない。
(計画図:アングルシー、ウェールズ)
日立はウェールズ北西部のアングルシー島に原発二基を建設する予定でしたが、コンソーシアム(企業体)を組んでいたベクテル社(アメリカ)は、昨年8月、「コストが高すぎて採算が見込めない」ことを理由に計画から降りていました。そのコストとはなんと約3兆円!フクイチ事故を背景に安全基準が高められ、それが建設費用を押し上げているのです。そして、これは「官民事業」なので、損失はすべて日本国民に課せられます。
でも、世界最大の建設会社といわれるベクテル(色々黒いうわさもありますが、それはおいといて)が、費用は日立の予想よりずっと高くなるとして降りた以上、その後を引き受ける企業はおそらくどこにもないでしょう。日立にも、日立が2012年(フクイチ事故の翌年!)に原発輸出の受け皿として買収したホライゾン・ニュークリア・パワーにも、コンソーシアムの一角だったJGC(日揮会社)にも、この事業を完遂する能力はありません。つまり、日立はこれ以上傷を広げないためにも、とっとと子会社を清算し、原発産業から身を引くのが一番なのです。
それにしても、自民党政権の「官民一体型原発輸出」政策は言語道断です。