がれきで議員が言論統制

  4月27日、神奈川県真鶴町で、一人の議員に対する議員辞職勧告決議が賛成多数で可決された、と騒ぎになっています。こんな決議が上がったからって、辞職しなくちゃいけないわけではありませんが、とにかくこの決議文を読んでみようか・・・・・・でも、出てこない。代わりに、勧告を受けた議員本人のブログhttp://blogs.yahoo.co.jp/manaduru_love/archive/2012/04/28を見つけたので、その弁明を見てみましょう。(長いので一部カット、文意を変えずに一部編集、太字は議員本人、下線マーカー筆者)

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 私に対する議員辞職勧告案が賛成多数で可決されました。再三の申し入れにも関わらず弁明の機会を与えられませんでした。(中略)ツイッターでの発信は、今回の件で厳重注意という処罰と合わせて中止処分を受けており、当面の間は休止させていただいております。ブログでの発信は、中止処分の対象ではありませんが、慎重な対応が必要と考えたうえで、自粛しておりました。今回は、弁明のために緊急を要するものと判断し、ブログでの発信を行います。私の弁明を下記に掲載いたします。
議員辞職勧告決議に対する弁明

真鶴町議会議員 村田知章  

 弁明に先立ち、ツイッターでの発言をした背景を説明させていただきます。(中略)
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2日の神奈川新聞の記事で、湯河原町真鶴町衛生組合の焼却灰が、奈良県の民間業者に搬出されているという事を知りました。また、湯河原町真鶴町の両町のHPに、湯河原町真鶴町の焼却灰から、飛灰で642~1516ベクレル、主灰で165~257ベクレルであるという測定結果が公表されています。当該の焼却灰は最大490ベクレルです。これは国の定める放射性物質汚染対処特別措置法の基準である8000ベクレルよりははるかに低いものの、一般ゴミとして処理することができるとされる国のクリアランスレベルの100ベクレルをはるかに超えるものです。
 (中略)今、全国各地で起きている,放射性物質で汚染された焼却灰受け入れに反対する住民感情を考えたとき、この事実を黙認することが、将来的に奈良県民から真鶴町民に対する恨みをかうだけでなく、奈良県住民、特に焼却灰の持ち込みによる土壌汚染を心配する奈良県の農家の方たちからの真鶴町に対する、損害賠償請求の危険も生じることもありうるのではないかと危惧しました。そこで、こうした将来起こりうるかもしれない事態を懸念し、ツイッターという場を借りて自らの議員としての一意見を述べさせていただきました。次に、辞職勧告決議文に対して、私の弁明を述べさせていただきます。(太字は決議文の一部です)

「議員として、住民生活に必要不可欠な処分場の検討をせず、安易に緊急避難的な措置を否定した。」
 ・・・たしかに、議会や委員会では自らの発言が、実際の町政の方向性にただちに影響を与えるもので、その表現内容や表現方法については一般人よりも表現の自由にある程度の制限が生じうることも理解しています。しかし憲法21条で保障された表現の自由の場の提供というツイッターの社会的性質からは、その表現方法や表現内容については、守秘義務に逸脱するなどの場合をのぞき、公人にも個人と同様、表現内容や表現方法は発言者の自由にゆだねられるものであるという認識です。それに対する制限を加えることにつながるツイッター発言に基づく辞任勧告決議案提出行為そのものが、表現の自由の侵害という重大な憲法違反行為と考えます。
「カナロコの掲載記事直後の発信であり、関東の焼却灰という発言が、あたかも湯河原町真鶴町衛生組合の焼却灰と誤認されたことにより、大きな影響を受けた。これは、配信後の影響を考慮しない行為であった。」
 ・・・
湯河原町真鶴町の焼却灰も、関東の焼却灰であり、「誤認」という言葉の意味が理解しかねます。また、「大きな影響」についてですが、この大きな影響というのが「奈良県業者からの焼却灰受け入れ拒否」ということをさすのでしたら、奈良県業者がそもそも私のツイッター発言だけで受け入れを拒否した場合にのみ、この表現は成立すると思います。しかし焼却灰受け入れを奈良県民が知ったきっかけは、そもそも神奈川新聞で公になっていた事実からです。
 「配信後の影響を考慮しない行為」については、反対に私としては、将来的に奈良県民から真鶴町が恨みをかう危険性、さらには半永久的土壌汚染をもたらしたという理由で損害賠償請求を受ける危険性があることを危惧し、そのことを事前に防止したいと行った発言行為であり、軽率な発言というよりも、むしろ事後の将来にわたる影響を十分に考慮した上でのものであります。また、私の発言は「関東の焼却灰は関西に比べ放射能汚染度が高い」と一般論を述べているもので、虚言には当たらないものと考えます。

 公人としての議員にも、ツイッターの場での表現の自由が保障されることは、住民の知る権利に資するものだと思っております。私はこの奈良県への焼却灰搬出を黙認することこそ、真鶴町住民を代表する真鶴町議員としての責務を果たしていないものと考えました。以上をかんがみまして、議員の皆様に今回の辞任勧告決議の再考をお願いしたい所存です。以上
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 地方議会ではおなじみの、「異分子排除」です。まともな人ほどこうしていじめられる。議員のツイッター発言も決議文も呼んでいないので、中身にはふれませんが、相当あほっぽい決議文のよう。つまり、この議員のつぶやきは、がれき広域処理への告発に直結していたので、推進派はあわてて口封じに動いたのでしょう。ターゲットになったのが、情報伝達の最大のツール、ツイッターにおける自由発言。彼のサイトにはこういう書き込みがありました。
 後付で説明をしなければ真意も何も伝わらないようなことを、安易に発信することは憲法上は許されても、議員という職にある者には許されないのでは?短い文章で正確な発信ができないのなら、すべきではない。それが公職にある者としての常識でしょう。その判断ができない時点で資格が無いと判断されても仕方ありません。ツイッターは止めたらどうですか?
 憲法上は許されても議員には許されない、だって?…やっちゃったね。つまり、政府・財界は、議員にこのような「自粛」「自己規制」を強く求めているのです。別の言い方をすると、自主的言論統制。ま、応援団も出てくるだろうし、事態を見守りますが、彼にガッツがあるなら:

 ★憲法、それから支援する多数の力を信じて、ツイッターをすぐ再開すべき。それが問題に正面から立ち向かうことになる。→憲法違反で、賛成議員を訴えてみようよ
 ★「問題のツイッター」「辞職勧告決議」「中止処分」の全公開を。後の二つは公文書、原則公開のはず。
 ★真鶴町民は、同町議会が制定したばかりの議会基本条例↓にもとづいて、7月1日以降、議会と町民との意見交換会を開いたらどうや~これは関係してくる奈良県民も要求できるよ。
 ★ 問題のツイッターをキープしている人、大拡散を。議員への言論封殺は、実は一般市民の自由な言論封殺だからね!2012.4.29
(参考)
http://www.town-manazuru.jp/assets/files/pdf/gikai/h24_4rinji.pdf
平成24年4月27日 第2回真鶴町議会臨時会日程
(補正予算にあわせて議員辞職勧告決議が審議・採択されたが、討論はなし)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120425-00000010-kana-l14
神奈川新聞(425日)「ツイッターに「放射能が拡散」、真鶴町議が焼却灰の県外搬出で
真鶴町議会基本条例(PDF 143KB) 
真鶴町議会基本条例制定に関する特別委員会検討経過(PDF 130KB)
(平成243月定例会で、議会運営における最高規範として、この条例が制定されている。町民参加を基本とした透明性のある開かれた議会運営を目指します、議員相互の自由な討議を尊重し、事務の執行に関する監視及び評価を行う役割を確認できます・・・7月1日施行。) 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/