神奈川県の「がれき秘密協定」

 8月20日、神奈川県と「がれき交渉」を再開しました。
 頭ごなしの「魚網(がれき)受入」に怒った南足柄市の市民と、その周辺自治体の市民が十人ほど参加し、活発なやりとりが交わされました。
 この日、最大の問題になったのは、神奈川県が7月29日に達増拓也岩手県知事および水上信宏洋野町長と結んでいた、「災害廃棄物の処理に関する基本協定書」でした。
http://garekikouiki-data.env.go.jp/kanagawa.html (環境省、リンク切れ)
http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/life/684922_1666502_misc.pdf
(神奈川県HP, 8月15日掲載)

 反がれきの市民何人かに確認しましたが、この協定書に関する新聞報道は見た人がおらず、県のHPでも気づいた人はいません。なのに、メディアは、二日後の7月31日に結ばれた神奈川県と南足柄市、箱根町の「魚網の広域処理に関する合意書」を異常なほど大きくとりあげている。でも、そこでも合意書の「元」となっている「協定書」については全く触れていないから、県・メディアを抱き込んだ情報コントロールを疑わざるを得ません。私も↓の記事を書きながら、「何じゃこれは」と思ったけれど、忙しくてうっかりしていました。
汚染焼却灰の海面埋め立てと、魚網埋め立て合意書神奈川

wonderful-ww.jugem.jp/?eid=861翻译此页
漁網の広域処理に関する合意書(南足柄市) [PDFファイル/83KB]

 広域処理のシステムではまず県同士の協定締結が前提で、それなしに神奈川県サイドだけでこういう合意書を結ぶなんてことありえないのです。で、それまでも、協定書の締結予定についてはしつこく尋ねていたのですが、答はいつも「何も決まっていない、不明」。これが真っ黒なウソだったわけです。この日は、ある議員が「他の人には見せるな」と注意つきでこの協定書を見せてくれた、との南足柄市民の証言もあり、神奈川県がこれを「秘密協定」として結んだことは間違いないようです。おそらく地元の合意が取れていないため(とれそうもないため)、どさくさにまぎれて既成事実を作ってしまえ、と言う作戦でしょう。

 メディアはそれに協力しているわけ。それを示すのが、この日の交渉後に行われた南足柄市民の記者会見には共同通信一社しか参加しなかったという事実。事前の申し入れにも「参加者はないかも」なんて言われたそうで、ほとんどボイコットに等しい扱いを受けたわけです。行政とメディアが結託して市民運動をつぶす、というのは、グローバル社会の(特にアメリカ)基本戦略ですが、それは、「報道しない」ところから始まることに注意が必要でしょう。

 ところでこの日、「この協定書(合意書も)の根拠法令は?」と聞くと、野中環境部長らはぐっと詰まり、顔を見合わせて、異論続出。「ないことはない」「いや、ありません」「民法だな」「いや、信義則なんですよ」などなど・・・は?信義則を元に行政が協定書を結ぶの?  次には、このあやふやな協定書を元に契約書を締結するの? もう、あいた口がふさがりません。「法的根拠がない=無法」。このシステムなら、いくらでも無法事業ができるわけだから。これが「利権」に直結するからこそ、法治主義が求められているのですが、トップがダラだと、下もゆがむ。2013.8.22

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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