「インフル転落」じゃなくて「タミフル飛び降り」では?

インフルエンザシーズンも終盤戦に入り、医薬産業界は「ワクチン」から「治療薬」の売り込みに力を入れることにしたようです。そのせいか怪しい報道も過熱気味。

まずはこの記事。

インフルの小6男児、3階から転落してけが 異常行動か

20191231939 https://www.asahi.com/articles/ASM1R5G30M1RUTNB00T.html

 埼玉県鶴ケ島市で22日、インフルエンザで学校を休んでいた市立小6年の男児(12)が、マンション3階の自宅から転落していたことが、市教委や県警西入間署への取材でわかった。男児は胸や腕を打撲したが、命に別条はないという。市教委はインフルエンザ患者の「異常行動」だった可能性もあるとみている。署などによると、同市富士見の5階建てマンションで22日午後3時ごろ、「男児が落ちてきた」と住民から119番があった。男児は高熱を出して3階の自宅で寝ていたといい、ベランダの真下にある駐車場の屋根にぶつかってから、地面に落ちたらしい。市教委は、インフルエンザ患者が突然走り出したり、飛び降りたりする「異常行動」だった可能性もあるとして、保護者らへ一斉メールで注意を呼びかけることにしている。同市では23日現在、市立小6校で計10学級がインフルエンザで閉鎖になっている。(西堀岳路) 

 この記者はわざわざ教育委や警察に取材して「インフルエンザによる異常行動」と書き、さらに「保護者への一斉メール」「学級閉鎖」に触れてインフルエンザの危険性を強調していますが、なぜか担当医師には取材していません。この症状は典型的なタミフル副反応なので、担当医師に投薬の有無を聞けば済んだのですが、そうすると、話が「インフルの危険性」から「タミフルの危険性」になってしまうので、医師への取材を避けたのでしょう。なにせ医薬産業界はメディアの大スポンサー、そこを苦境に陥れることはできないという計算が働いている。なお、他のメディアも一斉にこの件を報道していますが、チェックした限り、どこもタミフルには触れていません。

 その中でこの↓記事は「インフル転落」という造語まで作っていて、悪質だと感じます。

 

小6男児も3階からインフル転落、どう防ぐ?  

2019.1.24 http://www.zakzak.co.jp/soc/news/190124/soc1901240015-n1.html

 インフルエンザに感染した人がマンションから転落したり、線路に落ちて電車にはねられたりする事故が相次いでいる。専門家は関連は不明としつつも「高熱が出ると意識がもうろうとし、ふらつくこともあるため、極力外出を控え、休養を十分に取ってほしい」としている。埼玉県鶴ケ島市教育委員会などによると、22日午後、インフルエンザで学校を休んでいた市立小6年の男児が、自宅マンションの3階から落ちて負傷した。車庫の屋根にぶつかってから地面に落ちたため、命に別条はなかった。同日朝には、東京メトロ日比谷線中目黒駅で線路に転落し、電車にはねられて死亡した女性会社員(37)の遺体からインフルエンザウイルスが検出された。川崎市健康安全研究所の岡部信彦所長は「患者を1人にせず、様子をよく見ておく必要がある」と指摘。「一度かかった人も別の型のウイルスに感染する恐れがあるため、手洗いやマスクで予防してほしい」と話した。

 「遺体からインフルウイルスが検出された」ことをもって、「インフル転落」と称していますが、ワクチンをもってしてもインフルエンザへの感染は防げないから、この説は成り立ちません。それを「インフル転落」などと称するのは読者を欺くものです。

 第一、フルウイルスに感染しても、ほとんどの人は症状が出ず(不顕性)、発症するのはごくわずかです。次に、その発症者のうち、病院に行き、薬剤―タミフルなど―を処方された人に、それこそ「転落」を含む副作用がまちかまえているので、インフル罹患者すべてに「転落」の危険があるかのようなこの報道は間違っている。第三に、タミフルによる異常行動はすでに確認されているのに、そのことを書かないのはおかしい。

 

7. **精神・神経症状、異常行動

(頻度不明)

精神・神経症状(意識障害、異常行動、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)があらわれることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には投与を中止し、症状に応じて適切な処置を行うこと。因果関係は不明であるものの、インフルエンザ罹患時には、転落等に至るおそれのある異常行動(急に走り出す、徘徊する等)があらわれることがある(「重要な基本的注意」の項参照)。

https://chugai-pharm.jp/hc/Satellite?c=DiMedicine_P&cid=1402918574494&docpm=pi&pagename=Chugai%2FDiClassification(タミフルの添付文書から)

 このように、タミフルで異常行動、せん妄、幻覚などが出ることはまぎれもない事実なのです。それが証拠に、埼玉県の小6のケースでも、保護者が「タミフル」について触れています。(ツイッターの画像がコピーできないので本文を抜き書き)

 「みーさんがタミフルの影響で3階のベランダから飛び降りた。ドクターヘリで埼玉医大にいます。自分も今到着。無事でいてくれ。」午後4:57 2019年1月22日

 「ご心配をおかけしました。隣の家のカーポートの上に落ち、且つ下が芝の上だったので奇跡的に腰の打撲で済みました。コンクリートの上だったら足趾でした。本当に奇跡です。本人に聞いたところ全く覚えていなくて夢の中で、落ちた痛みで気がついたとの事。子供のタミフル(リレンザ)使用時は気をつけて」

 本当によかった。よほど運が強い子なのでしょうね。それにしてもこのケース、「インフル転落」ではなく「タミフル飛び降り」とすべきです。

 なお、風邪やインフルエンザの熱は、病気と闘っている体の自然な生体反応であり、それをクスリで抑えるのは決していいことではありません。市民も医薬業界も、そろそろクスリ万能という考え方を改めるべきでしょう。2019.1.26   

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/