太平洋は核廃棄物の捨て場ではない

前記事の追加。日本では、他の国の人々がどれほど核汚染水の放出を嫌がっているかなどまず伝えられません。でも、私たちは汚染者側として、彼らの受け止め方を知り、汚染の責任を負い続けなければなりません。私たちには、国民の声を完全に無視して核電に突っ走っている政治家を選んだ責任があるのだから。以下は、偶然見かけた、NGO、Pacific Elders Voiceによる、汚染反対の記事の簡訳です。太平洋の環境保全を活動目標にしているようですが、これを読むと、日米政府の「科学的根拠」のウソっぱちがよくわかるでしょう。

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 私たちの青い太平洋に130万トン以上の核汚染廃水を排出する日本と東京電力(TEPCO)の無謀な決定は、原子力の危険性の証言だ。太平洋には原発に依存している国はない。2011年の福島第一原子力発電所(NPS)のメルトダウン事故は、原発が太平洋の人々の健康と幸福に人的、環境的、経済的悪影響を及ぼし続けていることを証明している。 今、日本の原発依存のツケは、太平洋諸島の島民と将来世代に払わされようとしている。日本は原発事故収束のコスト削減の試みは、陸地から海域に核汚染廃水を放出する手法に道を開いた。この汚染水排出は今日から30年間続けられる予定だ。

この恥知らずな環境破壊行為は、315回を超える核実験という残虐な核廃棄物の遺産が、まだ完全に処理もされていないこの地域の汚染をさらに増やすものだということを、我々は失望をもって注目している。この行為は、また、ロンドン条約(1972年)、国連海洋法条約(1982年)、ラロトンガ条約(1986年)、ヌメア条約(1986年)、ワイガニ条約(1995年)などの国際協定や地域協定に示された、あらゆる形態の核汚染に反対し、非核太平洋を目指す太平洋地域の歴史的な強い姿勢に対する明白な無礼である。これらの法律や条約のいくつかは、1970年代後半以降、日本が太平洋に核廃棄物を投棄しようとしたことを念頭に太平洋諸国が制定し、合意したものだ。

日本は歴史をくり返し、太平洋諸国、NGO、市民社会グループとの協議、説明責任、対話、合意形成の不在を通じて、太平洋友好の限界を再び試そうとしているのだ。我々は、この計画が太平洋の人々の人権を侵害する危険な前例となること―特に、原発に関与し、あらゆる形の有毒廃棄物を太平洋に投棄しようとしている他の国々―を確信している。

 この計画は、安全で清潔、健康的で持続可能な環境を享受し、安全な食料、飲料水、適切な生活水準、身体的・精神的健康を求める地域の人々の基本的人権を侵害するものだ。.日本とTEPCOの、「希釈が汚染の解決策である」という前提は、科学的にも生態学的にも不健全である。

 我々は、太平洋諸島フォーラム(PIF)が排出に反対し、独自に任命した独立科学専門家パネルの調査結果にコミットし続けることを求める。同パネルは、日本と東京電力が提出した、高度液体処理システム(ALPS)による放射性核種濃度の全体的な減少の証明には、統計的欠陥があり、偏った測定プロトコルに基づいていることを発見した。パネルはALPS「処理」水には、トリチウム、炭素14、そしておそらくストロンチウム90、セシウム137、コバルト60を含む他の64の放射性核種がなお存在し続けていること、海洋への放出の結果、海流、生態系、食物連鎖を通じて、さまざまなレベルでの生物学的取り込みが起き、それが最終的に人間にもたらされることに懸念を表明している。

 私たちは、IAEAが2013年という早い時期にこの未熟な計画を奨励し、時代遅れの安全基準を設定し、それに続いて日本と東京電力の排出計画を承認したことにも落胆している。日本には、漁業者らや、影響を受ける近隣のアジア・太平洋沿岸諸国の声を取り入れることで、責任ある倫理的な核廃棄物処理の先駆者となる機会があったはずだ。私たちは、TEPCO事業による環境と人間への影響を十分に監視するには、国連の原子力産業に原子力の安全利用に関わる権限の丸投げの代わりに、事業の影響を受ける国々の緊密な関与の下で、真に独立した国際的で参加型の監視体制が必要であることを認識している。

私たちはこれまで通り、太平洋地域の利害関係者との真の協議が行われるまで、日本とTEPCOが計画を断念するよう求め続ける。さらに我々は、日本が、すべての関係者との間の信頼、対話、敬意を欠く文化を生み出し、風評被害をおこすのではなく、この地域における原発スチュワードシップの模範となり、日本に風評被害をもたらすような、代替案を適切に検討することを求める。

最後に、我々は、国際海洋法裁判所(ITLOS)において日本に対する訴訟を開始し、太平洋の人々と私たちすべてが故郷と呼ぶ海に対する越境的かつ世代を超えた影響から保護するための暫定措置を求める国際的な行動を支持する。我々はまた、太平洋諸国が、この計画による地域住民の人権侵害に対し、利用可能なあらゆる法的手段を追求するよう勧める。さらに次回のPIF会合が開催される「非核太平洋」の発祥の地であるラロトンガで、福島問題、AUKUS安全保障条約、核兵器禁止条約との共存のための核実験遺産を含むがこれに限定されない、この地域における現在のすべての核問題を再検討する機会を提供するものである。我々は、日本、韓国、中国の沿岸漁業コミュニティや市民社会、そしてこの計画に反対している太平洋諸国の多くの人々と連帯して行動する。さらに、金曜朝、フィージーのスバで予定されているNGO主導の「海の健康のための集会」と連帯し、日本が計画している核汚染廃水の青い太平洋への投棄を阻止するための国際的介入を求める彼らの呼びかけに賛同する。

2023.8.27

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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