「核汚染水」を「処理水」と称して放出開始

原発事故から12年経過、溜まり続ける核汚染水の重圧にとうとう耐え切れなくなり、日本政府と原発業界は、汚染水を公然と垂れ流し始めました。それも「科学的根拠に基づいて」。以下、NHK報道に少しコメントを加えました。

福島第一原発 処理水放出開始 2023年8月25日 6時30分NHK

東京電力は24日政府の方針に基づき、福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水を、薄めた上で海への放出を始めました。放出後に原発周辺の海域で海水を採取してトリチウム濃度の分析を進めていて、25日午後に結果を公表するとしています。 【詳しくはこちら】原発の処理水 海への放出開始 国内外の反応は 

福島第一原発では、汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水が1000基余りのタンクに保管され、容量の98%にあたる134万トンに上っています。東京電力は、政府の方針に基づき24日午後1時すぎ、大量の海水で薄めた処理水の放出を開始しました。これまでのところトラブルは報告されていないということです。また、放出開始の2時間後から原発周辺の海域の10地点で海水を採取してトリチウム濃度の分析を進めていて、25日午後に結果を公表するとしています。

 一行目から、医処理後の「汚染水」は、たとえトリチウムなどを含んでいても「処理水」となり、もはや「汚染水」ではないという論調が打ち出されています。詐欺のナラティブ。しかも、ALPS「処理」水には、トリチウムだけでなく炭素14、セシウム137、コバルト60など、64種の放射性核種がなお存在しているはずですが、そのことには触れていません。これらの放射性核種の半減期は、短い人間の命に比して半永久的と思えるほど長く、こういうものを生み出すような原発が人間と共存できるはずはない。

 放出の開始で、今後はタンクが減少し、廃炉作業に必要なスペースを確保できることが期待されていますが、今年度計画される放出量がタンクおよそ30基分となっているのに対し、およそ20基分の処理水の増加が見込まれていて、実際に減るのはおよそ10基分の1万1200トンにとどまる見込みです。処理水の元となる汚染水が1日およそ90トンのペースで増え続けているためで、東京電力は海への放出量を増やすとともに、汚染水の発生をさらに抑制することを計画しています。

 原発サイトの地下水脈が断てない以上、汚染水も増え続け、いつかは公海に放出することになることは、最初からわかっていました。しかし政府は、多くの警告もアドバイスも無視し続けました。それは、「いずれ海に流せばいい」と考えていたからです。それが最も安上がりで企業は助かるし、汚染と被害の関係など証明することはできないから、誰も責任を取らなくていい・・・原発産業ほど日本に向いているものはありません。この汚染水放出に対し、中国が全水産物の輸入を禁止するなど、反発が出てていますが、日本は、ありもしない「科学的根拠」を持ち出して開き直っているのです。

 中国の措置について岸田総理大臣は「外交ルートで中国側に即時撤廃を求める申し入れを行った。科学的根拠に基づいて専門家どうしが、しっかり議論していくよう働きかけていく」と述べました。政府は、IAEA=国際原子力機関の報告書で、処理水の海洋放出は国際的な安全基準に合致し、人や環境への影響は無視できる程度だとされており、中国による輸入停止措置は不当だと抗議するとともに、重ねて撤廃を求めていく考えです。また、風評対策などのために政府が設けている総額800億円の基金の活用のほか、東京電力による賠償も含め、漁業者らの損害を防ぐ対応に力を入れる方針です。

「科学的根拠にもとづいて専門家どうしが議論する」というのは、閉ざされた学術界で「合意」が成り立てばそれでいいという意味。地球温暖化も「科学」ではなく、「(政治的)合意」の産物であり、すべてが壮大なウソあることは、良い子のみなさんは知っていますよね。ちなみに「風評対策費」の多くはメディアに回るので、今以上に「汚染も被害もない」という論説が繰り広げられるはず。売り上げ不振に悩む漁業者に回されるのはほんの一部だけ。

政府は、IAEA=国際原子力機関の報告書で、処理水の海洋放出は国際的な安全基準に合致し、人や環境への影響は無視できる程度だとされており、インドでのG20会合では山田副大臣は「わが国の処理水の海洋放出は、科学的根拠に基づき透明性を持って国際社会に説明を行っていて、多くの国から理解と支持を得ている」と述べました。そのうえで「中国の科学的根拠に基づかない措置は全く受けられず、即時撤廃を求めた」と述べ、中国側に輸入停止の措置を直ちにやめるよう求めたことを明らかにしました。

 汚染水の海洋放出はこの件が初めてで、まだ誰もその環境影響や人体被害など評価することなどできません。当然、IAEAが言う、「国際的な安全基準」など存在しない。おまけにIAEAは最大の原発推進グローバル組織、彼らにとっては、事故が起きようが、汚染が広がろうが、原発を作り続け、稼働させ続けられればそれでいいのです・・・というか、汚染事業だからこそ儲かる。これは一般的な廃棄物業と同じ。従って、人間は「処理できない汚染」をもたらす事業は、どんなものでも避けるべきなのですが。この常識が、政治の世界には欠落している。なお、岸田氏は事前に、この事業に対する米のバックアップを取っており、米国もまったく問題ないと太鼓判を押しています。

米国務省声明「国際基準にのっとったもの」 アメリカ国務省の報道担当者は24日、声明で「放出については今後も引き続き科学に基づいて判断されるべきだ。日本の計画は安全で、IAEA=国際原子力機関を含めた国際基準にのっとったものであり、満足している」としています。そのうえで「日本はIAEAと緊密に連携し科学的根拠に基づいた透明性の高いプロセスを踏んできた日本が科学者や、インド太平洋地域の各国の意見を聞いてきたことも理解している」とコメントしています。(後略)

各国は「日本は意見を聴かない」と反発しているのに・・・なお、岸田氏は8/17~19の、いろいろ異例づくめの訪米で、国民には無断で反ロ反中的な米の傘の下に入ることを約束していますが、その行動に文句をつけられる国会議員はもういないのでしょう。文句をつけると死の脅しを受けたり、すさまじい人工(自然)災害が起こされたりするのだから・・・なお、いずれ書きますが、マウイ島の大火も人工火災です。2023.8.26

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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