高浜3号機、60年運転だって?

  311、フクイチ事故から五年。寒い日です。五年前もこんなに寒かったのか・・・私は当時、山東省の小都市にいましたが、地震・津波・そしてフクイチの事故を知らせるテレビニュースを見て、社会が変わった、と思いましたっけ・・・。
 さて、昨日のうちに、大津地裁の稼動停止決定に伴い、関電は高浜原発3号機を停止させています。でも、やっぱり不満、で、以下のようなコメントを出しています。

(コメント)高浜発電所3、4号機再稼動禁止仮処分の決定について
 高浜発電所3、4号機は、新規制基準の適合性審査会合等で、当社が科学的・技術的観点から安全性についての説明を重ねてきた結果、原子力規制委員会から原子炉設置変更許可等をいただいております。大津地方裁判所において、仮処分の申立てがなされて以降、当社は、申立ての却下を求めるとともに、審査会合の中でご説明してきた内容も含め、発電所の安全性が確保されていることについて、科学的・技術的かつ専門的知見に基づき具体的に主張・立証してまいりました。本決定については、当社の主張を裁判所に理解いただけず、極めて遺憾であると考えており、到底承服できるものではありません。
 資源に乏しい我が国においては、安全確保(safety)の「S」を大前提に、エネルギー安定供給(Energy
security)経済性(Economy)環境保全(Environmental
conservation)の3つの「E」の同時達成を目指す「S+3E」の観点から、特定の電源や燃料源に過度に依存しないエネルギー供給体制を構築す
ることが極めて重要であり、当社は、原子力が一定の役割を果たしていくことが不可欠であると考えております。本決定に従い、当社は安全を最優先とした工程で
運転中の高浜発電所3号機を停止いたしますが、今後、決定文の詳細を確認のうえ、速やかに不服申立ての手続きを行い、早期に仮処分命令を取り消していただ
くよう、高浜発電所3、4号機の安全性の主張・立証に全力を尽くしてまいります。以上

 司法の判断より、原子力規制委員会の許可の方が上だっていうわけですね。それに、原発で「安全確保」と「環境保全」は達成できないって。それに、日本のエネルギー需給は、原発が全基停止していた数年間も、ほとんど影響はなかったし、エネルギー安定供給の面ではモノの役に立っていません。「資源に乏しい我が国」なら、まずはエネルギー浪費型の産業体制を改めるべきですが、そこはおいといてゲンパツ。おまけに、いずれ表面化するはずの「核のごみ」問題、そして立地を中心にした低レベル放射能汚染についても無視してゲンパツ、廃棄物と常時汚染については市民側ももって勉強すべきです・・・なんて思っていたら、関電、「次の手」を打っていました。

美浜発電所3号機の運転期間延長認可申請の補正書等の提出について
2016年3月10日 関西電力株式会社
 当社は本日、原子力規制委員会に対して、美浜発電所3号機の運転期間延長認可申請の補正書等を提出しました。運転期間延長認可申請については、特別点検の結果を含めた高経年化技術評価を行った上で、長期保守管理方針を策定し、60年までの運転期間を想定しても問題がないことを確認したことから、平成27年11月26日に、原子力規制委員会に申請書を提出するとともに、原子炉施設保安規定変更認可申請書についても提出しました。その後、原子炉格納容器内の主要機器等に対して、最大加速度993ガルとした全ての基準地震動(全24波)に基づく耐震安全性評価等を実施した結果、60年までの運転期間を想定しても問題がないことを確認したことから、本日、原子力規制委員会に補正書を提出するとともに、原子炉施設保安規定変更認可申請の補正書についても提出しました。今後、残りの補機等について、引き続き最大加速度993ガルの基準地震動に基づく耐震安全性評価を実施し、準備が
整い次第、補正書を提出する予定です。

 添付資料:美浜発電所3号機の運転期間延長認可申請の補正書等の概要 [PDF 79.30KB] 

 60年運転だって? なんというクレイジー。ま~、大津地裁の「決定」に対するあてつけでしょうが、その翌日に出すことで、いずれ別の裁判官がこの決定をひっくり返すこと、その時までに規制委は60年延長を許める、ということを暗に示しているわけです。さすがはゲンパツマフィア。ほんといやみな企業です。もちろん、関電は電気事業者であって、原発の専門家じゃないから、彼らが「原発60年稼動でも安全」といっても誰も信じませんが、それを信じさせたいグローバル原子力マフィアは、今後、サンケイなどを使って「常識」を書き換えてゆくんだろうなあ。
 人類は危険な湯沸かし器なんぞなくてもやっていけることを教えてくれたのが311とフクイチですが、最も教訓を得なければならない連中は相変わらずです。市民は真剣に東電や関電の解体を考えないと。2016.3.11

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/