大阪市の排ガス実験でセシウムの一部が行方不明

  大阪市は10月11日、がれき試験焼却に先立って、排ガス中の放射性セシウムの測定試験を行ないました。これは市議会の要求(予算通過に伴う付帯決議)の一つに答えたものですが、やったことは「環境省のガイドライン通りにやったら、ちゃんと測定できたよ」というアピールのみ。

 
[2012年10月11日] 東日本大震災により生じた廃棄物の広域処理に関わり放射性物質の測定方法に関する実験を行いました
 東日本大震災により生じた廃棄物の広域処理に関わり、ごみ焼却工場から排出される排ガス中の放射性物質濃度の測定については、環境省から『放射能濃度等測定方法ガイドライン』等が示されています。大阪市は、このガイドライン等による排ガス採取のサンプリング方法において、特にガス状のセシウムの挙動がどのようになっているのか、実際の測定方法と同様の実験装置を用いて確認を行いました。
1.開催日時・場所:平成24年10月11日(木)大阪市立環境科学研究所2.内容
実験の様子を
USTREAMでライブ配信しました(外部サイトにリンクします)
配布資料 (pdf, 696.44KB)



http://www.city.osaka.lg.jp/kankyo/page/0000187721.html
 上の配布資料を見た上での私の疑問ですが:
1 塩化セシウム試薬について記してない(市販品ならメーカー、塩素とセシウムの配合割合、使用した量等)→→ここをはっきりさせず、「全部取れた・・・」なんて言うな。
2 実験手順が書いてない→→例えば、セシウムを加熱する「ガス化装置」で、いきなり800℃になったかのような表現。目的温度にいたるまでの時間と沸点の関係を書いておかないと。
3 実験番号1-4で異なった濃度を設定した理由は何か?
4 揮散セシウムとは何か?
5 それとろ紙で捕集したセシウムとの差は何なのか?
などなど。具体的に言うと、実験番号1の結果では揮散セシウム量209.2mgに対し、円筒ろ紙捕集セシウム量(固体、「粒子状」)は198.7mgだから、その差10.5mgはどこに行ったの?という話です。気体のセシウム量(吸収びん捕集分、気体状)はNDだから(0.01mg以下)、それを勘案しても、一部が環境中に逃げ出したのは明らか。
 環境研はその後、濃度を変えて実験していますが、実験2で行方不明になったセシウムは1より多くなったため、実験3以後は濃度をうんと低くしていますが、それでも一部は行方不明。実際の焼却炉では、その量はもっともっと増えるでしょう。したがって、まとめの「国ガイドランで示された排ガス採取装置での捕集実験において、セシウムは円筒ろ紙で全て粒子状として捕捉された」には、「同装置では気体状のセシウムは捕捉できなかった」とのただし書きが必要です。さあどうする? これでは試験焼却なんて危なくてできないよ。2012.10.13

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/