名古屋市の子宮頸がんアンケートへの疑問

 HPVワクチンの一刻も早い接種勧奨を求めているのは産科医学会だけではありません。日本小児科医学会は、2013年7月、「海外と比して日本の接種後症候群の増加がなければ」、すぐに差し控えを解除するよう要望書を出しています。子宮頸がん予防ワクチンの「積極的な接種勧奨の差し控え」に関わる要望書

 医薬産業界が熱心に求める「積極勧奨の再開」、それに対する厚労省の姿勢はというと:
答3 今後、積極的な接種勧奨の再開の是非については、子宮頸がん予防ワクチン接種の副反応について可能な限り調査を実施し、速やかに専門家の会議による分析・評価を行った上で、改めて判断することとしています。」
 http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_hpv.html

 でもね、ワクチンの事業主体は市町村。接種者名簿を持ち、一人ひとりに質問して回答を引き出せるのも市町村だけです。これは予防接種法・地方自治法に関する事務なので国は手が出せない(注意:ところが、これがマイナンバー制によって国・企業がワクチン接種・非接種者の動向をすべてつかむことができるという、恐ろしい状況がまちかまえています。この件に関しては別ブログhttp://mirushakai.jugem.jp/をどうぞ)。
 なので、厚労省(医薬業界)としては、どこかの自治体が大規模調査の結果、「海外と差はなかった」という結論を出すのをまって、勧奨再開に踏み切るのではないか、というのが私の読みでした。そこに、この推測にぴったりあてはまるニュースが飛び込んで来たのです。

名古屋市 結果 年内にまとめ 子宮頸がん接種独自調査
(2015
627) http://iryou.chunichi.co.jp/article/detail/20150629132900517
 名古屋市は、子宮頸がんワクチンを接種した女性らを対象とした独自調査の結果を、年内に取りまとめる見通しを示した。市は201010月から中学1~2年の女子にワクチン接種費用全額補助を開始。対象を順次拡大し13年度には小学6年~高校1年に広げた。市によると、これまで4万2千人余が接種している。だが、接種後に激しい痛みなど副反応の訴えが相次いだため、13年6月に接種の呼び掛けを中止。本年度、接種していない同年代の女性を含め、約7万人を実態調査する700万円を計上した。調査スケジュールをただした北野由晴氏(自民)に、健康福祉局の纐纈敬吾局長は「9月に調査票を発送し、1011月にかけて集計を行い12月中に結果を取りまとめたい」と説明した。副反応で記憶障害などの症状に悩む女性もいるため、市は本年度中に、検査やリハビリを市総合リハビリテーションセンター(瑞穂区)で支援を始める方向を示した。

 被害者救済が目的なら接種者だけを調査すれば済むのに、非接種者も調査対象にするのは、行政の事務にしてはムダだし、おかしい。なおアンケートの中身はここ↓から見ることができます。http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/cmsfiles/contents/0000073/73419/mihon.pdf
 で、電話したところ、約7万人にはすでに調査票を発送済みでした。なぜ非接種者も対象にしたのか聞くと、「通常、疫学調査では接種者と非接種者を比較するのはスタンダードな方法。オーストラリアでも国民的レベルでこういう調査が行われた」といいます。ではその結果は?と聞くと、「あまり差がなかった、という結論が出ています」とのこと。・・・(;´Д`)。
 「それで、今回も、『あまり差がない』という結果を出すために、非接種者も調査するの?」と突っ込むと、「いえ、違います。これはHPVワクチン被害者連絡会の提案なんです」「提案そのままじゃないでしょ?、誰か専門家が監修したはずよ」「・・・名古屋市立大学公衆衛生学鈴木貞夫氏の知見をいただき、質問を作りました」。
 アンケートでは他のワクチン接種の有無も聞いているし、症状は他のワクチンのせいかもしれないとして、「差はない」との結果を出すことも可能でしょう。
 だんだん腹が立ってきて、電話に出た職員を詰問すると、「因果関係を調べるために・・・」なんて言葉が出ました。 おいおい、名古屋市はこれは「実態調査」だって言ってるし、
http://www.city.nagoya.jp/kenkofukushi/page/0000073419.html
無記名なのにどうやって因果関係が証明できるの?
担当者は最後はこういうことを言っていました。
「接種後症候群に『紛れ込み』があるかもしれないので、それを調べるのが目的のひとつ」「もうひとつの目的は被害者連絡会も、ワクチンのせいと思っていなかった被害者を掘り起こせるかもしれないので、それを把握すること」

 ★まとめ★ 実態調査なら、被接種者だけで済むはずです。非接種者を含めるのは、必ず何らかの魂胆がある(考えすぎならいいけど、医薬業界ってこれくらい考えてちょうどいい世界)。また、アンケートのまとめを行うのもこの鈴木氏のようですが(確定はしていないとのこと)、彼は科研費をもらっており、これも広い意味の利益相反にあたると私は考えます。
名古屋の人々、アンケートに答えるなら、「利用される可能性があることを」念頭に入れておいてください。2015.9.5

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/