中学生の反乱、広東のゴミ焼却炉計画でまた衝突

 また中国で焼却炉計画をめぐる衝突が起きました。今回は住民が学校や警察を襲撃したというので驚きました。なぜ「学校」が破壊のターゲットになったのか?

中国でごみ施設に反対、150人が暴徒化し警察・学校襲撃 広東省
2015.12.25 21:58
http://www.sankei.com/world/news/151225/wor1512250050-n1.html

 中国広東省普寧市雲落鎮で、ごみ処理施設の建設に反対する学生や市民のデモ隊約
150人が暴徒化し、警察や学校を襲撃した。普寧市が25日発表した。デモ隊は24日に地元の二つの学校に侵入、ガラス窓を割り、他の学生や教師にけがを負わせた。警察車両も破壊し、地元政府庁舎も襲撃しようとしたため警察が鎮圧したという。デモ隊にけが人が出たかど
うかは不明。中国では市民の環境意識が高まり、ごみ焼却場や化学工場の建設に反対するデモが各地で相次いでいる。普寧市は「ごみ処理施設は国内最新レベルの設備を採用している。人々の懸念を拭い去り、建設を推進する」としている。(共同)

 何が「国内最新レベルの設備」やら・・・この記事の出典は↓のようです。記事をそのまま翻訳しただけで、これじゃ事態はわからない。
http://www.881903.com/Page/ZH-TW/newsdetail.aspx?csid=261_341&itemid=844356

 でも検索したら、いろいろ動画や写真付きの記事が出てきました。
 たとえばこれ↓、住民が武装警官隊を投石で追い散らしている場面。
廣東普寧市反焚化爐示威
民眾擊退防暴警察
YouTube


 それからこれ↓ いずれも広東語。音が大きいので、あらかじめ音量を絞って下さいね。
http://hk.on.cc/cn/bkn/cnt/news/20151225/bkncn-20151225103700102-1225_05011_001.html

 で、以下にこの記事の簡訳です。衝突のきっかけは「学生たち」、それも中学生だったんですね。中国の若者には「革命の遺伝子」が伝わっているようで。

 広東市普寧市雲落鎮のごみ発電所計画の反対はさらに激しくなり、12月24日は、報道によれば一万人以上が参加し、近年もっとも激しい衝突になった。警察は住民をけちらすために催涙弾を発射し、住民数百人に怪我をさせ、数十人が逮捕されたと指摘されている。
 当地では何千名もの中学生が抗議活動に参加しようとしたが、学校側が彼らを止めようとしたため、そこでも衝突が起きた。学生たちはさらに「人間の鎖」を作って公安の圧力に対抗した。普寧市ニュース局は、事件は大げさに掻き立てられている、何者かが学校に侵入して学生を脅したなどと述べたが、現地住民は、政府自らデマを飛ばしている,と激しい怒りを表している。。

 雲落鎮の村民と学生たち合わせて一万以上のデモ隊は、24日午前、村の広場に集結してデモを開始し、住宅地から1キロも離れていない場所にごみ発電所を建てると、村民に大きな健康被害をもたらすなどと政府に抗議した。(山本注:このデモの横断幕には「なぜちゃんと学ばないんだ?」などと書いてあります。政府が「学ぼうとしない」のは洋の東西を問わないようで)。
 このデモの間、村のあちこちで待ち構えていた何千人もの警察隊との間で激しい衝突が起きた。現場では写真や動画が示すように、催涙弾の音が鳴り響き、デモ隊は大きな声で叫びなが、盾を持った警察隊に投石を続け、警察隊は棍棒でデモ隊を殴打したため、大勢のデモ者が怪我をし、頭から血を流す者もいた。同地の雲連中学校と雲落中学校でも数千名の生徒が授業をボイコットしたが、学生のデモ参加を認めなかった学校では、学生たちが怒って教室や職員室の設備を破壊した。
 同地の村民によると、当時、両校の学生が再びデモに参加しようとしていたところに、村の派出所の所長が学校にやってきて学生たちを足止めし、教師と学生を脅してゴミ発電所建設への同意書に署名させようとしたため、クラスのなかで割とおとなしい学生は署名してしまったという。署名しなかった傳君(仮名)は、この派出所の所長に椅子で投打されたが、これで怒った学生たちは椅子を投げて反撃した。この後、大勢の警察増援部隊が学校に駆けつけ、所長を保護して連れ去った。
 その後、学生たちは校門付近に集まって「人間の壁」を作り、警察の包囲を突破しようとして警察とぶつかっている。この村民と警察の激しい衝突は5時間にもわたり、警察車両が何台かひっくり返されたり、壊されたりし、村は散らかり放題となった。また警察はこの間、デモ隊に数十発の催涙弾を発射した。24日午後から、普寧市周辺地区の警察が続々と雲落鎮に増援に派遣され、うち掲陽市は大量の武装警官を送り込んでデモ隊制圧にかかったが、衝突は夕方になってようやく一時的に落ち着いた。この間、少なくとも十数名の学生と村民が逮捕され、数百人が傷をおった。その中には9名の中学生、小学生がいる。当日は深夜まで大勢の警察官、警備車両が村内を巡らした。
 この村民によると、村人はすでに政府にも警察にも信頼を失っている。ただ、当地には事情をきちんと取材して報道してくれるメディアがない。「全村民が弾圧された今、私たちはどうすればいいのか」、今はただ逮捕者が早く釈放され、事件が広く知られ、それによって政府が我々の求めを聞き入れる事を望んでいるだけだ。
 
雲落鎮役所は、事件当日、電話したメディアの取材を拒んだと指摘されている。普寧市役所はこの事件について、「デマだ、無責任なことを言うな」と述べた。


 中学生に同意書、というのも初めてなら、中学生の社会運動というのも初めて聞きました。中国の若者が社会的関心が強いのは、おそらく家族の結びつきが強いからだと思います。また、政府が市民の声をきくどころか、デマを流していることにも驚き・・・まさか、事業のオーナーは日本の企業じゃないよね。JBIC,JICAが動いていたらそりゃ日本ブランドですが、今は現地合弁を作っているので調べてもなかなか出てこない。中国にごみ処理施設が増えて、泣かなければならないのは偏西風東側にあたる日本なのですが、焼却炉メーカーは「売ればいい」だけ、環境のことなど何ひとつ考えていません。2015.12.30

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この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/