まだ増やす気? 焼却炉

 いったん下火になっていた焼却炉発注が、2009年には息を吹き返し、
荏原製作所、日立造船、タクマがその恩恵を受ける―そういう予想を
目にしました。野村證券の分析です(産業アウトルック、7月号)。
 
http://www.nsjournal.jp/news/news_detail.php?id=164923
 焼却炉再ブームの理由はやはり金。環境省が2009-2014年度に
ついては、焼却炉建設補助金(循環型社会形成推進交付金)を3分の
1から2分の1にひきあげるため、「稼動20年を経過した既存炉の建て
替えが進む」と見ているのです。またもや談合常習企業の救済策…
これによって、「地方自治体の費用負担が34%減少する」といわれれ
ば、おバカな首長率いる自治体はこれに飛びつくことでしょう。
 また同誌は、焼却炉の発注低迷の理由として、①自治体の公共投
資抑制と、②市町村合併による混乱をあげていますが、ウソっぽい。
 実際は、百%「お上に従う」地域でない限り、どんな片田舎でも、
計画に強い反対運動が起き、しかも計画撤廃を勝ち取ったケースが増
えています。発注低迷の理由は「納税者の反乱」もあるはず。
 それにしても、この国の環境省はいったいどこまで汚染施設を増やせ
ば気がすむのか。焼却炉による健康被害(特に子供への被害)、環
境汚染、地球温暖化への悪影響をこうまで無視できるのは、いまだに
この国が実質的にアメリカの占領下にあるからかもしれません。何より
自治体側に自治意識がまったくない。
 国際的に見ると、ストックホルム条約(ダイオキシンの発生源削減
―ごみ焼却炉の停止)の遵守を求める声はますます強くなっているし、
水銀条約も現実味を帯びています(焼却炉はセメント工場にならぶ水
銀発生源)。気候変動と焼却炉汚染の批判もあるのに、環境省は
平気で条約遵守義務をボイコットしているのです。
 でも、環境省が汚染に「OK」でも、住民には「ノー」を言う権利と
代替策を実施させる権利があることを忘れないで下さい。残念なのは
日本の産業界がなぜ、その能力をまともな方向に生かせないのかと
いう点です。そのとっかかりになる自治体が出て来ないものでしょうか。
2009.6.30

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/