ワクチン強制接種法、裁判所に禁止される

 4月4日の記事ワクチン未接種者の登校禁止令(米、NY州)の続編が入っています(これがなかなかアップできなかった)。
 先月27日、アメリカ、NY州ロックランド郡は「ワクチン未接種児童の公共場所への出入り禁止」を含む緊急事態宣言を出しましたが、その翌日には、これに対する二件の訴訟が起こされています。ここまでは予想通り。

 予想外だったのが、州最高裁の判事はすぐに住民の訴えを認め、この緊急事態宣言の一時的執行禁止(remporary injunction)を命じたこと。郡はこれに抗告できますが、それには4月19日前に提訴しなければならず、そうすると宣言の効力期間の終わりに近いことから、抗告はあきらめたようです。

 さて、その訴訟のうち一件は、ある私立小学校に通う何十家族が起こしたもの。原告の訴えは「学校でははしかの発症はなく、ワクチン未接種児が他の子どものリスクにはなっていない」「子どもが家にいるので仕事に行けないため、金銭的負担が増えた」「今回の宣言の根拠とした法律は不適当だ」「子どもたち全員が学校に戻り、教育を受けられるようにすべきだ」というもの。子どもたちは全員、宗教的理由でワクチンを受けていなかったことから、学校にも買い物にも行けず、友達と遊ぶこともできなくなったのです。

 判事のロルフ・トーセンはこれらの訴えを認めただけでなく、「十月からの166件のはしかを以って緊急事態だというが、このレベルでは大流行とはいえないし、大災害の規定にも当たらない」とバッサリ。それどころか、「郡は、緊急事態宣言を『執行法』にもとづいて出しているが、これは法的根拠を欠くというべきだ」と声明を出したそう。これは、行政の事業にとっていわば死刑宣告にあたります。原告はまた、デイ執行官の宣言を「権力の乱用」としていますが、これは上位法にあたるNY州法では「宗教的理由によるワクチン免除」の権利を認めているから。私も、ロックランド郡が何を以ってNY州法を否定したのか不思議でしたが、これはおそらく、オール業界と、政治団体、圧力団体のプッシュがあったからでしょう。

 すっかり顔をつぶされたデイ執行官は、裁判所に不満を示しながら、呼びかけに答えた市民を称え、「20年前に撲滅された病気の再燃を何としても抑える。ロックランドをリスクにさらしたくない」と述べたとのこと。・・・それにしても、アメリカで「接種拒否」を貫く市民はよく勉強している、というのが私の感想です。

 

 なお、この全米初のワクチン強制法のニュースはあっというまに世界に広がり、大きな波紋を投げかけたとのこと。日本ではほとんど話題にもなっていなかったのではないでしょうか。なお、2017年、同じように世界に衝撃を広げたイタリアの「強制ワクチン接種法」事件がありましたが、これは新政権の誕生によってひっくり返され、強制ワクチンはなくなりました。この件、まだ紹介していないので、そのうちに。2016.4.9

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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