ごみ処理の土地は汚染される

 前記事の続き。「公害事業」の多くは、地元住民にとって「寝耳に水」の状態で始まります。当然、そこには反対が起きますが、地元の保守派住民・企業と政治屋は、「(事業は)地元の発展のため」「先端技術を入れるので汚染などない」「行政がウソをつくはずはない」などのウソをふりかざし、よってたかって反対運動をつぶし、計画を推進する…というのが各地に共通する流れです。でも、いったん稼働が始まれば、後は誰もーー推進派も反対派もーー追いません。推進派は「よかった」で終わり、そして、打ちのめされた反対派は思考停止状態に陥ってしまうからです。

 しかし「地域の火種」でなくなった後、その現場ではすぐに汚染が始まり、それはやむことなく蓄積してゆきます。

 たとえばこの↓ニュース。

広域ごみ処理施設 予定地から汚染物質 鳥栖市に計画

2018/12/8 https://www.saga-s.co.jp/articles/-/312132

 鳥栖市に建設が計画されている次期ごみ処理施設を巡り、鳥栖市など2市3町でつくる県東部環境施設組合(管理者・橋本康志鳥栖市長)が同市真木町の建設予定地を調査したところ、ダイオキシン類や鉛、ヒ素などの汚染物質を確認したと7日、発表した。いずれも排出基準値を満たしているものの、環境基準値を超えているため県や構成市町で対策を協議する。施設の配置など今後の事業の進め方に影響する恐れもある。建設予定地は1967年から2004年まで旧ごみ処理施設があった跡地で、組合が土壌汚染対策法に基づき16年度から調査していた。市職員OBへの聞き取りで、昭和401965)年代ごろは予定地内の旧ため池部分(現グラウンド)に、ごみ処理施設で処理できなかった生ごみなどを埋めていたことが分かった。埋設物は厚いところで約7メートル、面積約1ヘクタール、総量約2万3千立方メートルと見込まれ、埋設物層などから環境基準値を超える鉛(最大で4・1倍)、ヒ素(同3・9倍)、フッ素(同9・5倍)が検出された。埋設物層の観測用井戸水からは排出基準値内だが、環境基準値の1・7倍のダイオキシン類が検出された。組合は、土壌中の汚染物質は現状のままでは拡散することはなく、地下水のダイオキシン類も「排出基準値を下回っているので健康への影響はない」としている組合は、2019年3月にまとめる最終調査結果の中で今後の対策工事や費用を示す予定で、結果次第では施設の配置など事業方針の確認が必要になるとみられる。「予定通りに23年度に完成させられるようにしたい」とするが、大量の汚染物が見つかった点は「想定外だった」と話した。建設候補地は鳥栖市が選定し、16年に地元から建設への同意を得ていた。

 問題をまとめると;①一度でもごみ処理施設を受け入れたら、必ずまた来る、②ごみ処理施設地の汚染は逃れられない、③汚染が明らかになっても、事業者は事態を過小評価し、責任を取らず、「次期」事業を強行する、④住民が説明を求めても、事業者は答え(られ)ず、ごまかし、はぐらかし、逃げる…⑤「地元の同意」とは、往々にして「地元ボスの同意」を意味するということです。

 つまり、鳥栖のケースは決して「特別」ではなく、全国すべてのごみ処理施設に共通しています。

 私が、特に地元住民に気づいてほしいと思うのは上の②です。いったんごみ処理施設にされてしまえば、汚染は避けられません。事業者は、「事業が終われば、きれいに整地して農地にする」などと言うでしょうが、これは完全なだまし、詐欺です。そのことは、富山県のイタイイタイ病を思い出せばすぐわかる。イタイイタイ病は、汚染土で育てた農産物(特にコメ)を食べた人々に深刻な被害が出ることを証明した事件であり、いったん汚染された土地は、二度と農地としては使えないことを示しています。(根本的に汚染を除去する「浄化法」はありません。また、汚染土で花卉などを栽培することはできますが、それには大量の農薬を使うことが多く、土地はさらに汚染されます)。

 イタイイタイ病の原因は三井金属工業上岡事業所のカドミウム未処理水でしたが、ごみ処理施設から排出される毒物はカドミウムだけではないし、健康被害との因果関係を証明するのは事実上、不可能。従って、公害事業を止めるなら、計画段階で、地元住民をまきこんで止めるのがベストなのだ。2019.2.27

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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