「おめこぼし」されていたインディアンポイント原発

  忙しくて記事アップが遅れがちですが・・・インディアン・ポイント原発火災のニュースは、すでに消えかけています。事故後、同原発は停まったまままであること、ハドソン川に流出した重油のこと、原発閉鎖への圧力がさらに高まっていることは報道されていますが、事故原因は不明のまま。以下は、「インディアンポイントの疑問:なぜ火災安全基準から免除されていたのか?」というニューズウィークの記事①の超訳です(写真はabc)

 5月9日におきた火災は原発がある区域でおきたものではない。原発はただちに問題なく停止され、エンタジー社は放射能汚染の心配はないと述べた。変圧器から流れ出した冷却剤のオイルの量はいまだにわかっていないが、エンタジーによればオイルにはPCBは含まれていなかったという。火事を起こした建物からはいまだに黒い煙が出ている。

 この煙は同原発の問題続きの歴史を思い出させる。同原発の変圧器は、過去8年で3回も事故をおこしている。その2回は、変圧器そのものはまだ新しかった。2007年の火事は1970年代から使われていた古い変圧器で起こったが、2010年に爆発した変圧器は2006年に設置されたもので、今回爆発したのは2007年に稼動開始したもので、まだ8年しかたっていなかった。変圧器の寿命は普通、30~40年といわれているから、これらの事故は説明がつかない。今回、爆発した変圧器の電気系統は、わずか二か月前の3月に査察が終わったばかりだった。エンタジー社もなぜこうも事故が続くのかわけがわからないようだ。変圧器のメーカーはすべて異なる。

 NY市のクオモ知事は、同原発には「本質的な問題がある」と述べ、司法長官のスポークスマンは「心配なのは、今回のような事故はまた起こり得るし、もっとひどい事故になるかもしれないことだ」と述べ、提訴をほのめかした。というのは、エンタジー社はこれまでの40年間に加え、稼動期間をさらに20年間延ばそうと申請しているが、NRCが見直すのは受動素子passive componentsだけで、変圧器(能動素子)は見直しを免除されているからだ。司法長官は、変圧器は「受動素子」であり、見直し対象に加えるよう求めている。

 これに対し、NRCの原子力原子力安全管理者免許委員会Atomic
Safety & Licensing Board
は、当初その求めに応じようとしていたが、今年3月、NRCは「それは委員会の誤り」として、変圧器の見直しは不要としてしまった。また、すべての原発は、1979年以来、火事がおきても一時間は耐えられるように「被覆」を求められていたが、2005年、NRCがインディアンポイントの防火障壁をテストしたところ、基準を満たしていなかった。ところがエンタジー社は基準に従うどころか免除を求め、NRCは2007年、それに応えて基準をゆるめ、耐火時間を24~30分としてしまったのだ。

 その際、NRCは法で定められた「公聴会」を開催しなかったことから、2008年、原子力エネルギー法違反などで提訴されている。この訴訟は、最後は連邦裁(第二回巡回控訴法廷)に持ち込まれたが、裁判所は、NRCの手続きが不適切だったことは認めたが、免除そのものは問題なしとしてしまった。原告によれば、このような「免除」は氷山の一角で、インディアンポイント原発には少なくとも12通の「免除通知ー原子炉の発電部分含む」が出されている、しかし、事故続きであることを考えれば、この原発は稼動延長を認められず、1~2年で閉鎖においこまれるだろう、とのことだ。

 どの国でも規制庁と電力会社の癒着、おめこぼし、は普通なんですね。原発を推進する勢力=原発の監視・監督では、これは当然のこと。しかも裁判所まで仲間だからどうしようもない。原発の存在は、今の「民主主義」が完全にエセであることを示しています。2015.5.17

①http://www.newsweek.com/indian-point-fire-raises-questions-about-nuclear-plants-exemptions-fire-safety-331154 By
Zoë
Schlanger
5/12/15 at 4:30 PM

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/