フクシマ原発:幻想は捨てよう

 先日、「農業は捨てよう」と書いたけど、もっとはっきり言うと、「土地を捨てよう」ということです。つまり、原発から相当の範囲内を、将来数十年にわたって立ち入り禁止の無人地帯にすべき。
 こう言うと、「危機をあおっている」、「ワシはここで死ぬ」なんて人も出てくるでしょうが、前者は単なる無知、後者はそれによって周囲の人にヒバクを強いることになるのに思いが至らないだけです。汚染地域に残って、どうやって食べ物や水・エネルギーを得るの? 病気になったり、糧食尽きて土地を離れる頃には、高濃度ヒバクで救援者にも被爆を広げるかもしれないってのに。幻想は捨てましょう。
 私なら、原発から少なくとも50キロ圏内の人を、政府のお金で一斉避難させます。
「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」
憲法25条。被爆におびえ、畑で採れたものも食べられず、外にも出られないなんて、健康で文化的な最低限度の生活とはいえず、こういう事態に至ったのは原発政策を推し進めてきた国に(自民党政権)に、全面的な責任があるのです。ほんと、もっと早く全域避難させるきべきだったのに。
 それでも、今なら、他地域の被災者と共に移動させても、たいした問題はおきないでしょう。でももう少し時間がたつと、「汚染」差別が起こります。必ず起こります。島国・日本人はそれほど寛容ではなく、汚染や人種など、少しでも違った要素があると、平気ではじき出す国民性ですから(もちろん、人によって違います。本ブログを読んでいるあなたは、必ず度量が大きいはず)。
 ちなみに今後、日本のすべての産品は厳しい輸出制限に会うでしょう。
 食品については、アメリカ、シンガポール、ドイツ、カナダ、オーストラリアが、放射線の影響下にある地域の食品と乳製品の輸入を禁止しています。アメリカでは海鮮品は検査すればOKとしていますが、シンガポールは福島県、茨城県、栃木県、群馬県の乳製品、果物、野菜、海産物、肉類を一律、暫時輸入禁止。ドイツもカナダもほぼ同じ。オーストラリアとニュージーランドでは、これに加えて海草類も禁止。ロシアは「状況が明らかになるまで」、四県の農産物を輸入禁止、タイは肉類、乳製品、海産物を、韓国は食品安全政策会議で、汚染が疑われる食品の輸入禁止を決定。香港は3月11日にさかのぼって、上の四県+千葉県産の加工品、包装食品の輸入を禁止。その他、中国、イギリス、オランダ、マレーシア・・・・。
 輸出はできなくても、輸入は大丈夫? 甘いね。船主が船舶汚染(乗組員含む)を恐れ、日本への渡航を拒否するかもしれません。中国では現に、日本への渡航者が被爆していたことがわかり、隔離される騒ぎになっていますこれは、日本は食糧不足になるかもしれないってこと。だから、安全な食料生産を確保するために農業の担い手たちを、ただちに「西」に移さなきゃ(こういうとき、自給率が低いのは怖い。責めるべきはアメリカのいいなりにグローバル化を進めてきた連中です)。ほんと、議員や政治家なら、これくらいのことはさっさとやらんかい。2011.3.25
(参考)
http://msn.ynet.com/3.1/1103/25/5538169.html

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/