集団接種で学級閉鎖が少なくなるだって?

 読者から↓のような連絡がありました。

「TWITTERで、フルショットが強制だった時は学級閉鎖日数が少なかったとする画像が出回っており、検索したら2011年のニュース記事がありましたが、会員記事だったり、有料記事で詳細を見られません。これに関して何かご存知でしたら教えてください。

インフルでの学級閉鎖日数、8割予防接種で3分の1 慶大など
捏造記事でしょうか。此れを以て強制接種が必要だ、と世論形成されてはたまりません。」
 初めて見るデータです。また、「強制ショットで学級閉鎖の日数が少なくなる」は、ワクチンの歴史など何も知らない、若いお母さんたちを惑わす悪質なプロパガンダとしか思えません。で、さっそく参考サイトを見てみました。
上のサイトは2007年の医学論文、それも有料記事です。

インフルエンザワクチン接種率と学級閉鎖:一小学校における23年間の継続調査

インフルエンザ Vol.8 No.4, 29-33, 2007

川合志緒子伴英子井ノ口美香子田中徹哉德村光昭南里清一郎木村慶子菅谷憲夫

 東京都内の一小学校において, 1983年度から2005年度まで, 各年度の在籍児童のインフルエンザワクチン接種率と学級閉鎖日数を調査した. 集団義務接種の時期(1983年度~1993年度)のワクチン接種率は77.4±15.3%, 学級閉鎖日数は5.7±11.0日だった. 任意接種の時期(1994年度~2005年度)のワクチン接種率は33.6±30.7%, 学級閉鎖日数は13.4±16.4日だった. 東京都のサーベイランス上, 患者発生数/定点のピークが20人以上だった16年間に限定すると, ワクチン接種率と学級閉鎖日数の間に有意な逆相関が認められ, インフルエンザワクチンの学校内流行防止効果が検証された. 「はじめに」わが国では, インフルエンザワクチンは1960年代から小中学生を対象とする義務接種のワクチンとして集団接種されてきたが, 1994年の予防接種法改正により任意接種となり, その前後でワクチン接種率は大きく変動した. 任意接種となってからすでに10年以上が経過し, ワクチン接種率の低下した時期に高齢者の超過死亡が増加したことが報告されている1).

 たった一校の追跡調査をもって、「フルショットの学内流行防止効果が検証された」と断定していることに基本的な不信を持たざるを得ません。この調査結果が一般的に通用するなら全公開して、再度、「強制接種」を主張すればいいのです。でも、有料記事とでの公開ということは、その記事を「利用したい」人=つまりワクチン推進派しか見ないということ。この調査も論文も、再度、集団接種をねらったものではないかという根本的な疑問があります。

 

二番目は2011年の日経の記事…これはもっと不可解。

インフルでの学級閉鎖日数、8割予防接種で3分の1 慶大など2011/6/16付

小学校で全児童の約8割がインフルエンザの予防接種を受けると、学級閉鎖の日数がほとんど受けない場合に比べて約3分の1の7日になるという研究結果を、けいゆう病院小児科の菅谷憲夫医師と慶応大医学部の研究グループがまとめた。論文が16日に米感染症学会の専門誌(電子版)に載る。東京都内のある私立小学校に協力してもらい、1984年から2007年まで、インフルエンザワクチンの接種率と学級閉鎖の平均日数を調べた。児童への集団接種が実施されていた84~87年(平均接種率96.5%)の学級閉鎖日数は平均1.3日、集団接種が中止されていた95~99年(同2.4%)は20.5日だった。これに対し任意接種となった2004~07年(同78.6%)では7日だった。接種率が高くなるほど、学級閉鎖の日数が短くなることがわかった。児童への集団接種が、高齢者や乳児のインフルエンザによる死亡数を減らすという社会的効果はこれまでにもわかっていたが、児童全体としてみた場合の発症リスク低減につながるのかどうかは不明だった。菅谷医師は「集団接種に戻る必要はないが、児童全体の60~70%がワクチンを接種すれば、児童から児童へインフルエンザが感染するのを防ぐのに役立つことは確かだ」と話している。

記事の内容から、上の論文がその後、2011年には米の学術誌に掲載されたことがわかります。でも、2011年といえば、フルワクチンに関する「特別な年」でした。新型インフル(A/H1N1)をめぐって(改正)インフル特措法が成立し、政府が海外からフルワクチンを買い付け、備蓄することができるようになったのです。その裏付けとなったのが上の学術論文。そして、(おそらく)当時の国会審議の後押しとなったのが、4年後の日経の記事だったというわけ。

日経記事には「児童への集団接種が、高齢者や乳児のフル死亡数を減らすという社会的効果はこれまでもわかっていた」とありますが、実際は逆。当時の論調は「集団接種の有効性に疑問が出てきた」「集団接種は社会防衛に役立たない」であり、それが最終的に強制集団接種の中止に至ったのです。その論調を広めたのが、ワクチンによる健康被害の広がりを懸念し、ワクチン強制をやめさせようとする親たちの全国的な反対運動でした。強制接種時代の親たちは、ワクチンは効かないし、危険だ、という共通認識をもっていたのです。今に比べ、はるかに劣った情報量の中で。

この記事がそんな歴史や社会的背景を完全無視しているのは、それらがワクチン推進派にとって、なんとか消し去りたい「汚点」だから。なので、推進派は平気で嘘もつくし、黒を白と言いくるめたりするのです。

残念なことに、社会の圧倒的多数はワクチン推進派・支持派であり、常に産官学+メディアが一丸となって、組織的な推進プロパガンダが繰り広げられます。だから、事実を知りたいと思ったら、少数でコツコツやっている本ブログをどうぞご参照下さい。

2019.2.3

 

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/