出羽三山の風発計画、中止される

 久しぶりに風力発電の件をいくつか。

 出羽三山の峰にずらりと風車が立ち並んだら、そこにはもう「信仰の山」の趣などまったくありません。

↓は出羽三山の風車建設に反対する会が事業者の縦覧書情報より作成したものです。

 「羽黒山山系に40基の巨大風車を建てる」という罰当たりな計画の事業者は前田建設。計画が明らかになったとたん、地元の猛反発を招いていましたが、8月7日にアセス手続きに入ったのを機に、住民の反発が一層高まり、反対運動が結成されました。

 

出羽三山周辺の風力発電計画 地元有志が反対署名運動を開始

Sep 1, 2020 www.kahoku.co.jp › tohokunews

 前田建設工業(東京)が山形県鶴岡市と同庄内町の出羽三山(羽黒山、湯殿山、月山)周辺で計画する大規模風力発電事業を巡り、地元の山伏や観光協会などが「出羽三山の風車建設に反対する会」を設立し、事業計画の撤回と中止を求める署名運動を31日に始めた。設立は8月30日。呼び掛け人は、羽黒町観光協会や宿坊組合、自然保護団体「出羽三山の自然を守る会」(鶴岡市)の各代表、山伏や住民の有志。「祈りの聖地の出羽三山の麓に歴史と自然、景観を分断する風車群は似つかわしくない」として署名を呼び掛ける。呼び掛け人共同代表で羽黒山伏の星野文紘氏は「神と仏、自然と人をつなぐ山伏として、先人から受け継いできた聖地をつぶすわけにはいかない」と話した。 (後略)

 ところが、この「反対する会」による活動がTVなどで広く報道されたとたん、事業は白紙撤回されたのです。反対運動の結成からわずか10日後のこと。

 ↓は前田建設の事業中止のお知らせです。完全撤退ですね。

(仮称)山形県鶴岡市風力発電事業における環境影響評価法に係る手続きの廃止について

20200909日 本年87日より縦覧開始した(仮称)山形県鶴岡市風力発電事業における環境影響評価法に係る計画段階環境配慮書について、関係自治体、有識者および一般の方々より多くのご意見を頂戴しております。当社は頂いたご意見を踏まえ、総合的に判断した結果、計画を白紙撤回することとしました。なお環境影響評価法における廃止手続きについては、今後速やかに進めてまいります。当社は、今後も地域の皆様に寄り添い、広く社会へ貢献できる企業を目指してまいります

 

 住民意見を入れて総合的に判断して白紙撤回した・・・と、まるで優良企業のような弁明ですが、前田建設がどういう企業か知る人にとっては違和感が残ります。たとえば山口県下関沖の風発事業計画では、前田建設は、地元の反対派に執拗で陰険な裏工作や嫌がらせを繰り返してきました。そのあたりはこのサイト↓に詳しい。

山口県下関市 安岡沖洋上風力発電建設に反対する会 – Facebook

es-la.facebook.com › posts… による健康障害、漁場の喪失など、地域を衰退させる諸問題が浮上し、住民反対運動として、

10万筆の反対署名、地元自治会・漁業者・病院等の各職域23関係団体からの反対要望、5回のデモ行進、5年間毎月延べ13000人の街頭活動等を粛々と行い、また、行政サイドへの働きかけにより、知事・市長の表明・市議会の反対決議では”地元理解”を前提とした事業推進の表明を得ました。然しながら、前田建設工業は、住民の抗議活動に対し住民告訴という暴挙により、現在、係争事案3件に係る法廷活動が行われ、その過程において、住民の思いが届かず理不尽な判決がありました。一方、裁判が始まると、前田建設工業は、環境アセスメントの調査において、ダミー機器を設置するなど、事業者の強引な工作も発覚し、事業者としても、地元としても、とても信頼できる企業ではないことが、改めてはっきりました。

 このように、山口県では大規模な住民運動を何年にもわたって展開しているのに、まだ事業中止には追い込めません。

 逆に山形県では、白紙撤回を受けて、いわゆる「風発適地リスト」からも出羽三山を外しました。

山形県、風力発電「適地」から出羽三山など3カ所除外

2020/9/17 18:54 山形県の出羽三山周辺で大型風力発電所が計画された問題に関連し、県は適地として紹介していた調査結果から3カ所を除外した。あわせて「適地調査」という名称も「可能性調査」「風況等実態調査」に改めた。県が発電事業者に事業ができると保証している、といった誤解を防ぐ。県はこれまで県内41カ所を風力発電の適地として紹介していた。ただ、そのなかの出羽三山周辺で実際に発電所が計画されると、地元が猛反発し事業者は白紙撤回した。県は調査結果に「景観に注意」など留意事項を盛り込んでいたが、「適地」としていたことに批判が出ていた。

 「適地リスト」の行政的意味は「ここなら建設してもいいよ~」というもの。風発ビジネス促進と、風発計画反対を抑える効果を狙ったものであり、科学的な裏付けなど何もない。https://www.pref.yamagata.jp/ou/kankyoenergy/050016/jigyousuisinhan_pdf/H29tekichi/shonai/s3.pdf(冬の庄内地方の写真。重たい雪で風車の回転速度も遅くなり、雪落としは大変な事業のはず)。

2020.10.5 (続きは後で)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/