公表されない化血研の報告書

 化血研不正問題で続報が出ています。中身はだいたい同じ。ただし東京新聞は添加物を「ヘパリンなど」と報道しています。強調山本。

****

化血研、歴代理事長ら不正隠蔽 第三者委報告「常軌逸した体質」
2015年12月3日 朝刊 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201512/CK2015120302000124.html
 熊本県の一般財団法人「化学及血清療法研究所」(化血研)が国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを製造していた問題で、化血研の
第三者委員会は二日、歴代理事長ら幹部が不正な製造を認識し、隠蔽にも関与してきたとする報告書を公表した。承認外の製造は一九七四年ごろから行われ、多くは八〇年代以降続けられていたとも指摘。二日の厚生労働省血液事業部会に提出した。
 国の査察で発覚を防ぐため幹部の指示や承認の下、虚偽の製造記録を作成するなどしており、医薬品医療機器法(旧薬事法)に違反する悪質な行為と認
定。「組織の閉鎖性、独善性が最大の原因」「常軌を逸した隠蔽体質が根付いており、研究者のおごりも根幹にある」と分析した。厚労省は近く、同法に基づき
立ち入り検査をした上で業務改善命令などの行政処分を出す。化血研は、宮本誠二理事長が二日付で辞任したと発表。他の全理事も同日付で辞任や降格などの処分とした。
 報告書によると、化血研は血液製剤の早期の製品化や安定供給を最優先する中で、血液が固まるのを防ぐヘパリンなどの物質を添加するなど、三十一の工程で承認書と異なる製造法をとっていた。国の定期査察の際には、承認通りの製法で作ったとする偽の記録を用意。国に求められた過去の書類がなかったため、紫外線を浴びせることで変色させ
て作成時期を古く見せかけたほか、虚偽の出納記録も作成していた。製造工程変更の際に必要な国への申請もしておらず、これらの方針は理事長を含む幹部が決
定し引き継いでいたという。
 不正があった製品はいずれも出荷前の国の検定には合格しており、重大な副作用などは確認されていないという。一方、報告書は、ワクチンに関しては承認外製造の隠蔽を図ったとまでは認定できないとした
 今年五月、匿名の情報提供が厚労省にあり不正が発覚。同省は六月に血友病患者らに使われる血液製剤十二製品の出荷差し止めを指導した。九月にはワ
クチンでも国の承認と製造法が異なることが判明し、ワクチン十製品などの出荷自粛を要請。一部出荷が認められた
が、インフルエンザワクチンなどの供給不足
が懸念される事態となった。化血研は血液製剤の売上高が国内二位で、インフルエンザワクチンも国内シェアの約三割を製造する医薬品メーカー。
◆薬害エイズ訴訟中も
 化血研は八九年、血友病患者らがエイズウイルスに汚染された輸入非加熱血液製剤を投与され、感染した事件で血友病患者らから提訴された。九六年に和解したが、今回の不正は訴訟の最中にも続けられていたことになる。第三者委はこうした経緯を踏まえ「患者を軽視し企業の利益を優先させる姿勢が強くうかがえる」と批判。大阪HIV薬害訴訟原告団の代表の花井十伍
さん(53)は「薬害エイズ事件を反省していないと言われても仕方がない」とし、「長年、不正を見抜けなかった国にも責任がある」と語った。

 ************

「匿名の情報提供」とは、内部告発とは限りません。日本の医薬産業界の現状、その後の化血研の慌てぶり、そして厚労省の善後策とメディア報道の「ずれ」を考えると、グローバル企業の「指示」があったと思えるんですけどね(このあたりは長くなるので説明略)。
 もひとつ、この化血研の「報告書」がアクセス不可なのもおかしい。「公表された」とあるのに、厚労省やPMDAのサイトにはこの事件を匂わす情報はなく、化血研のサイトに至っては、アクセスが多いのか「Internal Server Error」で出てきません。で、厚労省血液対策部会に電話し、何で出さないのか聞いたら、「化血研さんの方で出していらっしゃるので…」なんて言うので(敬語でした)、「公表されたと書いてある、さっさと出しなさい」と求めました。最後は(6~7分待たされて)、「今日中にアップします」との返事がありましたけどね。みなさん、午後に厚労省をチェックし、遅くなるようなら電話して急かしてください。
 なお、下は化血研叩きの記事。こういう流れなんですね。強調山本。写真はカットました。

********

化血研、発売遅延恐れ不正…常勤理事会で隠蔽ゴーサイン
読売新聞(ヨミドクター) 12月3日(木)12時4分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151203-00010001-yomidr-soci

 血液製剤やワクチンを未承認の方法で製造してきた化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)に対し、2日公表された第三者委員会報告は、「組織ぐるみ」
「利益優先」などと厳しい指摘を連ねた。薬害エイズ問題で激しい批判にさらされた化血研は、なぜ患者軽視の不正を重ね、悪質な隠蔽を続けたのか。化血研問題、ワクチン供給に影響も

◆発端◆
 「弁解になるが、献血を扱うメーカーとして製剤を早く出したいという思いがあった」。化血研の宮本誠二理事長は2日夜、記者会見で苦渋の表情で語った。報告が不正製造の大きなきっかけとして言及したのは、1980年代後半から90年代前半の薬害エイズ問題だ。輸入された非加熱製剤が原因で多くの感染者が出たため、政府は血液製剤を国内生産に切り替える方針を打ち出し、化血研もこの波に乗ろうとした。血液製剤は感染リスクをなくすため、国が認めた承認書通りに製造することが厳格に求められている。しかし、化血研は89年以降、新薬の製造工程で止血効果がなくなるなどの問題が生じた際、発売の遅れを恐れた担当理事の指示で製造工程を変更。承認書にはない方法で添加物を投入することで問題を解決した。そ
の後も、工程の省略などを重ねた。「不正は、早期の製品化や安定供給を最優先したことに起因している」。報告はそう指摘した。

◆隠蔽◆
 組織ぐるみの隠蔽に事実上の「ゴーサイン」を出したのは、96年9月の常勤理事会だった。血液製剤の製造部門の担当者が、承認書と実際の製法が異なることを説明。国の査察では虚偽の製造記録を提示することも示唆し、出席した理事から疑義は出なかった。
 同じ時期に医薬品業界では、国際化の流れに合わせ、国による査察の厳格化の動きが強まっていた。製造部門の幹部は98年、部下からの相談に、「このままでは(国に)見せられん。製品供給継続を第一に、しばらくは見せられる記録で対応しよう」と応じた。
 製造部門では、過去の記録も査察で示す必要が生じたため、古く見えるように紫外線を紙に浴びせて変色させたり、筆跡を過去の関係者に似せたりした。査察に見せる虚偽の記録は字体を変えて取り違えを防ぐ念の入れようだった。不正はその後も放置され、昨年に新薬の承認を受ける際も、添加物を不正に投入することを隠した。

◆特殊な組織◆
 化血研の売り上げの半分以上を占めていた血液製剤部門の特殊な組織体質も、不正の背景にあった。元々はワクチンの売り上げが多かったが、70年代から血液製剤重視に転換。同部門の発言力は増し、一連の不正は同部門出身の前理事長が主導した。部門内に新入職員を集めたため外から異動してくる職員はほとんど
おらず、内部での不正の一斉点検にも「自前で対応する」として加わらなかった。不正が安全性に影響した事実は確認されていないが、小柳仁・東京女子医大名
誉教授(心臓血管外科)は「承認と違う製法で作れば、人体に影響が出る可能性
は少なからずある。人の命に密接に関わる組織として信じられない」と批判した上で、「日本の医療が世界でも信頼性が高いのは、医薬品類が徹底的に品質管理
されている大前提があるからだが、今回で信頼が崩れかねない」と指摘している。(読売新聞社会部 小田克朗、医療部 赤津良太)

 *************

 そりゃあ特殊な組織でしょうよ。日本の医薬産業界は、731部隊の頃からの「闇」を抱えて成立したから、もともと「常軌を逸して」いるし、常に「国益(=企業益)」を優先させるクセがある。2015.12.4

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/