佐那河内ではどうやってごみを減らしたか

 せっかくなので、佐那河内村のごみ減量の.記事を全国町村会のサイトから全文紹介しておきます。写真はカットました。原文はここ→(http://www.zck.or.jp/forum/forum/2605/2605.htm)
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廃棄物行政を変えた地域力~”伝統の絆”を活かしたゴミ分別運動~
2605号(2007年6月25日付号掲載) 徳島県佐那河内村健康福祉課 安冨圭司
山々には初夏の訪れを告げるヤマボウシ。
 果樹園には、佐那河内村の花スダチが心地よい香りを漂わせる。
  先人達から受け継いだ土地と心が今も尚伝わる。徳島県佐那河内村。

佐那河内村ってどんなところ?
 県都・徳島市から車を走らせ、わずか30分。四季折々に豊かな表情をみせる山々と東西にゆったりと流れる清流・園瀬川。そして素朴でのどかな田園風景に囲まれた自然豊かな村です。古くより農業を基幹産業として栄えてきました。そして現在、全国ブランドに成長した「ももいちご」、県の特産品でもある「すだち」、貯蔵み
かんのブランド化をすすめている「大福みかん」や「しいたけ」、「ほそねぎ」をはじめとする数多くのブランド農産物を生産し、全国の市場へ供給していま
す。また観光では、あじさい3万本が咲き誇り、大型風力発電施設15基の建設が予定されている標高約1,000メートルの「大川原高原」には、自然観察の拠点
でキャンプ場もある「県立いきものふれあいの里」や美しい星空を観測する天体観測施設「ヒルトップハウス」などがあります。

伝統の絆が自治の基本

 佐那河内村には、古くから伝わる「講中」という呼ばれる相互扶助組織や「常会」「名中」と呼ばれる住民自治組織が多く存在しています。これらは、佐那河内村の自治の基であり、地域の心と絆を紡ぐ独特の組織は、今も尚、大切にされています。
*「講中:こうじゅう」助け合いを目的とした頼母子講や萱講、信仰を目的とした氏神講や伊勢講など様々な種類があります。現在は、援助を目的とした講を行っている地域は少なくなってきていますが、地域の氏神を奉ることや葬儀を執り行う習わしが残っています。
*「常会:じょうかい」いわゆる自治会ですが、歴史は古く、藩政時代の五人組の流れを汲んでいるといわれ、本村の納税や自治の改善の上で大きな役割を担っていました。
【平成11年度まで納税率100%、現在99.4%】現在は47常会があり、加入率・出席率と共に90%以上となっています。また、毎月1回定例会が開かれ、行政や農協、地域行事などの連絡事項を周知し、地域の合意形成やコミュニケーションを図る場になっています。
*「名中:みょうちゅう」秋祭りの氏子を名中という単位で地区割りしています。
 特に「嵯峨名中」は嵯峨地区(11常会181戸)の住民で組織し、祭事のほか地域防災・公民館運営・地域団体補助などを行うために、独自の予算委員会を設けています。運営資金は、1年間の地域運営予算を戸数割りにして、年貢として集め独自の地域自治を行っています。地域防災を担う消防団活動の資金は、名中以外に各戸から米集め(協力金)という風習も残っています。

ゴミ分別活動とまちづくり
 佐那河内村にあるこれらの組織は、同じ地域に住む人たちが生活文化や仕事(農事等)、暮らしを守るために共同で支え合う組織として継承されていますが、経済が豊かになり、行政が地域の公共を担うようになり、共同関係を維持していく意味が失われつつあります。これらを再認識し、地域力の向上と地域の結びつきを保つために、住民と協働でゴミ分別活動を行っていきました。ゴミ分別活動には、ゴミ減量化や環境意識の向上等、様々な意味が含まれていますが、本村のような小さな自治体では、分別活動で得られる成果は得にくいと考えていたため、その活動自体をまちづくりの一つとして行ってきました。その結果、平成18年4月には、23ヶ所全ての集積所でゴミ分別・洗浄の活動が行われるようになりました。結果として、住民主導のゴミ分別活動は、次のようなメリットが出てきました。
【メリット】
・ゴミ処理経費の縮減 平成13年度約4,400万円が平成18年度約2,000万円
・縮減された経費で9歳未満の乳幼児医療費無料化
・住民の発案で分別品目が、資源ゴミ集積所21分別、全体で33分別となった。
・住民のアイデアで指定ゴミ袋が減った。(5種類から1種類)
・ゴミ分別と集積所管理から生まれる新たな地域の公共と共同意識の再認識 等々

 以上のような目に見えない住民の環境意識の向上や地域力の向上が、本村にとって大きな成果と考えています。

佐那河内村のゴミ処理
 佐那河内村には、ゴミの焼却施設や最終処分場はなく、全ての処理を県内外の民間処理業者へ委託しています。そのため、ゴミとして排出するのを抑えるため、23ヶ所の資源ゴミ集積所が村内各地に設置されています。行政が収集する資源ゴミは、分別・洗浄をした9種類としていましたが、行政からの指導では
一向に改善されませんでした。しかし、容器包装リサイクル法の施行や廃棄物の処理及び清掃に関する法律等の改正と社会状勢の変化に伴い、全ての地域と住民を対象にした説明会を開催したことで、この状況が少しずつ変わり、自発的な取り組みが行われ始めました。

住民主導のゴミ分別運動のはじまり
 佐那河内村にある47常会の一つに新町常会があります。ここでは、平成12年頃まで国道沿いの歩道に資源ゴミを集積していましたが、分別や洗浄もされず散乱していたため、様々な問題がありました。その状況を地域で改善しようと、上勝町に先進地視察に行ったことをキッカケに、新町地区でのゴミ分別活動が始まりました。当時、新町常会のメンバーは、役場職員にゴミ分別や処理の現状を学び、地域内で議論を重ねました。その結果、分別品目(16種類)と地域のルール(洗浄の徹底など)を決
め、地域の集会所の軒下に、分別用のコンテナを並べて取り組み始めました。新町常会の取組みは、他の地区の女性達へ伝わり、ゴミ分別活動に興味を持ち、地域での環境学習会やゴミ分別活動に向けての活動が活発になり、コンテナを利用したゴミ分別収集へ移行しました。その後、新町常会と行政が協働して、環境学習や事例報告を各地で行い、平成15年度に新たに4地区が、ゴミ分別活動を取り組み
始めることになりました。行政は、新町常会を合わせた5地区を佐那河内村のモデル地区としてワークショップを行い、それぞれ地域独自のアイデアやルールを
地域コミュニティで考え、実践するサポートを行いました。

地域への広まり
 この活動は、住民の「口コミ」と実施した成果を住民自ら発表する機会を設定したことで広がりを見せていきます。地域の心は徐々に伝わり、活動への共
感が得られたことで、絶えず地域から説明会の依頼があり、対応に追われました。その際、新たに実施した地区の方と一緒に説明会に出向き、地域での事例を説
明してもらうことで、新しいアイデアや想いを次の地区に継承していけるように努めました。地域住民の環境に対する少しの気づきと行動、行政が地域を尊重することで地域主体での集積所の管理運営が可能になり、自発的なゴミ分別活動が実現し、地域コミュニティの連帯感を高め、環境問題を共に考えるキッカケとなりました。

コンセンサス

 行政は、全ての地域でゴミ分別活動に対する合意形成を図るため、地域の世話人や協力者と情報の提供と話合う場の設定に務め、常会等で承認を得て取り組み始めました。
行政が、地域の合意形成に至るまでのプロセスに絡むことはなく、地域の要望に応じて、説明会やワークショップを行いました。また、期限を切らずに、納得がいく形で地域の合意形成が図れるようサポートをしながら、ひたすら待ち続けました。説明会では、
行政への批判や要望など様々な意見が出されましたが、地域住民と行政との役割分担を明確にすることで、地域と行政の協働事業として取り組むことが出来ました。また、地域住民は行政が財政難であることを認識し、地域の活動で改善できることが解ったことで、ゴミ分別に対する合意形成を図りやすくしたと考えています。

ゴミ分別推進委員と集積所の管理
 各常会には毎年変わるゴミ分別推進員委員が2名いますが、大きな役割は担っていません。集積所の管理やゴミの分別・洗浄は、当番や個々の責任で行う
ため、行政等から得た情報を地域で伝えたり、問題が生じたら必要に応じて集積所利用者を常会長と共に招集し、対応を協議する場を設定します。また、地域内でトラブルが起きないように、できていない人を特定したり、行きすぎた指導や注意はしないよう全地域で決めています。
【全地域の約束事】
・ゴミのことでケンカをしない。
・犯人捜しはしない。
・自分(みんな)が出来ない役員は作らない。
 また、集積所の管理は、地域やそれぞれの集積所を利用する者が、地域の実情に合わせて地域全体の意見で決めています。
【事例】
・集積所の近くに氏神様があり、毎日地域住民が順番でお参りに行っているため、その時に集積所の管理を行っている。
・地域で氏神様をお参りしていた順番を利用して、集積所の管理を行っている。
・若い世帯と独居老人の世帯とを組み合わせるなど、地域内の状況を考えて2戸1組で集積所の管理を行っている。

廃棄物行政を変えた住民力
1.集積所を自由に使いたい。
 
 行政が管理していた頃の集積所は月2回の収集日と前日のみの利用でしたが、地元管理に移行することで、地域で決めたルールの範囲で自由に使用できるようになりました。それに合わせて行政は、収集日や収集回数を変更しました。また、地域によってはプルトップやペットボトルの蓋などを集め、福祉団体等に寄付する地域も出てきました。
2.分別品目を住民の視点で決めたい。
 
 素材や処理・収集行程の効率で分別品目を決めるという行政側の視点ではなく、使用した物で分別品目を決める住民の意見を取り入れています。結果、資源ゴミ集積所は21分別、全体で33分別となりました。
3.指定ゴミ袋を減して欲しい。

 缶・ビン・トレイ類・紙おむつ・家庭用廃ビニールと5種類の指定ゴミ袋がありましたが、分別活動に合わせて麻袋を大量に集積所に置くことで、家庭用廃ビニール以外の指定ゴミ袋を廃止にしました。
4.この取り組みを地域の子供達の環境学習に使ってはどうか。
 保育所、小学校、中学校では、地域住民が講師となってゴミ分別の取り組みや必要性について授業や説明を行うようなりました。

みんなの成果「乳幼児医療費に!!」
 住民主導のゴミ分別活動が実践されることによって、分別に係っていた人件費や業者に支払う処理経費が大幅に削減されました。平成13年度のゴミ処理経費が約4,400万円だったのに対し、平成18年度では約2,000万円まで削減。その削減された経費を少子化対策の一つとして、県内ではいち早く9歳未満の乳幼児医療費の無料化を実施しました。また、今年度から集落独自の取組みを支援する佐那河内村活性化補助金を予算に計上して、より一層の地域活動をサポートする制度を新設しました。

今後の課題
 佐那河内村は、このゴミ分別活動で縮減された経費を活用して、現在の9歳未満の乳幼児医療費の無料化を義務教育が終了するまでに拡大することを検討しています。また、この官民協働による経験を活かして、「地域の公共」や「共同意識」を再認識し、現在の社会情勢に合わせたシステムをローカルな視点で再構築することで、自立した地域コミュニティの育成を推進し、古の心を継承したまちづくりを展開していきたいと考えています。

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 どうです? この、全体の0.5%しかごみを出さない土地に広域の焼却炉を持ってくることに異常まのもを感じませんか? 環境省の本音は「もっと燃やせ~」。それはごみを減らすと関連業界が困るし、官僚の天下り先も減るからです。だから、地域に伝統が受け継がれ、住民に思考力と、自治能力がある佐那河内村が「見せしめ」として狙われと思います。 子どもたちには「今度から全部燃やすんだよ」と教えるのでしょうか。将来は、焼却炉が社会科見学の場所になるのでしょうか(汚染施設、岐阜の施設のように爆発も起こす危険施設)。そして、さまざまな自治組織のこれまでの努力を無かったことにするのでしょうか。
 焼却炉は環境だけでなく地域も破壊します。金がばらまかれるので人の心が汚染されるからね。すでに「売郷奴」がいるようで、まったく犯罪的な計画です。2015.10.30

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/