デング熱ーーワクチン開発競争も激化していた

 デング熱患者が124人に達し(デング熱の国内感染事例の発生状況について 
9月16日 )、さらに危機感を煽る報道が増えていますが、その背後にはデング・ワクチン開発競争があることをご存知でしょうか。デングウイルスがいない日本で、そのワクチン開発に乗り出したのが武田薬品工業です。といっても自力開発ではなく、米のベンチャー企業を買収したんですけどね。買収は去年5月、それからわずか一年後に、こんなデング熱騒動がおきたのは、偶然か意図したものか・・・。

武田、米ワクチン開発ベンチャー買収 35億円で


2013/5/8
10:57 http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD08025_Y3A500C1EB2000/


 武田薬品工業は8日、米ワクチン開発ベンチャーのインビラージェン社(コロラド州)を3500万ドル(約35億円)で買収すると発表した。武田は買収で熱帯地方などで流行するデング熱のワクチン開発を強化、全世界で販売できるワクチンの開発候補品(パイプライン)を増やす。月内に米国法人を通じてインビラージェン社の全株式を取得する。買収にかかる費用として35億円の契約一時金のほか、ワクチン開発の進捗に合わせて成功報酬として最大215億円を支払うことでも合意した。インビラージェン社は2005年に設立、米国とシンガポールに拠点を持ち、デング熱のほか幼児がかかりやすい手足口病のワクチンの研究開発を進めている。従業員は約50人。デング熱などは現在、有効な治療法はないという。武田は昨秋にもベンチャーの米リゴサイト・ファーマシューティカルズ(モンタナ州)を約50億円で買収。食中毒などの原因となるノロウイルスのワクチンの開発を進めており、世界的に流行するウイルス性感染症のワクチン開発事業に注力している。

 武田は記者発表でも、この買収によって、WHO主導の「グローバルヘルス」への取り組みに全面参加することを表明しています。なお、「グローバルヘルス」とは、決して発展途上国の衛生・栄養状態をよくしようというのではなく、あくまでも「グローバルワクチン」=地上すべての人間にワクチンを打ちまくれ、という「事業」なので、誤解のないよう。以下同社のHP(http://www.takeda.co.jp/news/2013/20130508_5756.html 2013年05月08日)から一部(強調山本)。

グローバルヘルスへの取り組みとして、デング熱ワクチンと手足口病ワクチンを獲得 – 
本買収によって武田薬品は、ワクチンの開発パイプラインを拡充するとともに、Inviragen社が開発しているワクチンの対象疾患が多いシンガポールの同社開発サイトを獲得することにより、ワクチンの研究開発能力を強化することになります。さらに武田薬品は、現在保有するウィルス様粒子技術や細胞培養技術などのワクチン製造に関する基盤技術に加え、Inviragen社の生ワクチンと不活化ワクチンの基盤
技術を獲得します。買収完了後、Inviragen社は武田薬品のワクチンビジネス部の傘下に入り、研究開発活動を継続する予定です。

Inviragen社は、生ワクチンと不活化ワクチンの研究開発に特化し、米国ウィスコンシン州およびシンガポールに拠点を有するバイオ関連企業であり、現在、デング熱などに対するワクチンを開発しています。同社のデング熱ワクチン“DENVax”は、デング熱の原因となる4つのウイルス型全てを含む4価ワクチンで、現在、臨床第2相試験1)を実施中です。また、Inviragen社はエンテロウイルス71により発症する手足口病2)ワクチン(臨床第1相試験終了)、チクングニヤ熱3)ワクチン(前臨床段階)も開発中です。デング熱、手足口病、チクングニヤ熱のいずれについても、現在、有効な治療法はなく、武田薬品では、これらワクチンを必要とする世界中の人々に届けるべく、各国政府や国際機関と連携していきます。

デング熱は、蚊が媒介するウイルス感染症としては最も重要な疾病であり、そのワクチンは世界保健機関(WHO)により、優先的に開発すべき4つのワクチンの内の一つに位置づけられています。世界中で年間約4億人がデングウイルスに感染し、その内約1億人がデング熱を発症すると言われています。デング熱による入院患者数は約50万人で、2万人がデング出血熱などの合併症で死亡しており、そのほとんどは小児です。現在、デング熱およびデング出血熱には対症療法しかなく、唯一の予防法は蚊の駆除となっています。また、デング熱などの症状を伴うデングウイルスの感染症の報告は、過去50年間で30倍に増加しており、発症地域も拡大し続けています。(以下略)

 武田薬品のワクチンビジネスへの参入は、2012年1月ワクチンビジネス部設立、同年10月ノロウイルスワクチン開発中のLigocyte社買収、そして13年のInviragen買収へと続いています。というのも、武田は一方で6300億円という巨額の補償を求められている「アクトス」訴訟に対処せざるを得ず(最終確定ではありませんが)、確実に収入が見込めるワクチン事業に乗り出そうとしているのではないかと考えます。なお、アクトス訴訟は全世界で6000件以上(2013年段階)、なのに日本での裁判事例はなぜかヒットしません。⇒は武田薬品の強気の言い分。米国ルイジアナ州における2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱がんを主張する製造物責任訴訟の判決について(2014年09月04日)

 ちなみに、デングワクチンに関する武田薬品のライバルがフランスのサノフィ・パスツール社。サノフィが過去十年以上取り組んできたデンググワクチンは、フェーズ2の治験(一価)が終わっていますが、これが有効率30%という結果に終わり、やや足踏み状態。それでも今後、10カ国3万人を対象にフェーズ3の治験を実施するとのことです。いやはや製薬会社はどこも冒険好きなんだ~。これでは薬害被害者が出るのは当然ですが、そこを考慮していたら医薬ビジネスはできないってことですね・・・仁義なき世界です。2014.9.17

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/