被ばく線量…「あきらめる」のは無責任

 ほとんどの人はこの数値を、「仕方がない」と当然視しているのではないでしょうか。でも、いくら放射能汚染が身近になったとはいえ、これは違法状態です。なのに、報道はまったくその点にふれていません。
 福島で被ばく線量調査 4割が1mSv超え
 12月14日(水)
テレビ朝日系(ANN) 
 全県民200万人の健康調査を進めている福島県が、一部住民の外部被ばく線量の推計結果を発表しました。1ミリシーベルトを超えるとされた人が4割近くに登ることが分かりました。今回発表されたのは、浪江町や飯館村などから避難した約1700人分です。このうち、原発で作業をしたことがない一般の住民1589人で1ミリシーベルトを超える外部被ばくをしたと推計される人は、全体の37%にあたるということです。最大値は14.5ミリシーベルトでした。
 浪江町民:「我々はあきらめるしかないけども、これからの子どもたちがかわいそうだ」   「対応が遅い。対応が遅いというか、公表が遅い」
 健康調査の検討委員会は、「この放射線量で健康に影響があるとは考えにくい」としています。
 
今回の数値は、人々の行動パターンを18のモデルケースに当てはめて「推計」したものに過ぎず、信憑性ゼロ。内部被ばく、ホットスポット、他の核種の影響などは考慮されてもいないし、記事にはばらつきもあり、最高値を19ミリシーベルトと伝えているメディアもあります。
 けしからんのは、最後の一行。「この線量」とは100ミリシーベルト/年という意味だから、検討委員は「年間1ミリシーベルトを超えてはいけない」という法律の規制を公然と無視しているのです。おまけに、匿名の町民の声として「我々はあきらめるしかない…」。よしてほしいなあ。地元があきらめたら、県外で被ばくした人々は声をあげられなくなってしまうじゃない? 福島の人々は、原発立地を許したことと、被ばく問題を、責任をもって追及してもらわなければならないのに。
 この記事は、国民に「被ばくはたいしたことではない」と刷り込むためのものですが、福島の人々はそれに慣らされないでほしい。この全県民調査自体が、おそらく県外の対象群と「それほど違わない」ことをアピールするためのものだと考えられるので、県民は同じ資料を入手し、自ら判断できる能力が必要だとも思います。医師らを入れた組織ができれば一番いいけれど、日本の医師らはなかなかフリーで動きたがりません。2011.12.16

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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