アメリカでGMOラベル義務づけへ

 たまにはいいニュースを。カリフォルニア州でGMO(遺伝子組み換え食品)の義務表示が近く実現しそうです。これはGMOに反対し、その汚染の拡大に警鐘を鳴らし続けてきた数多くの団体が、共同で同州の司法長官にGMO義務表示法案を定を市民投票(Citizens Ballot Initiative )にかけろ、と迫ったもの。2012年に行なわれる投票で、有権者の多くが「賛成」票を投じれば、アメリカで初めてGMO食品の表示が開始されることになります。
 もちろん、このような運動はこれが初めてではありません。アメリカでは――おそらく日本以上に――遺伝子組み換え食品への反対が唱えられてきました。世論調査でも90%が表示義務付けを望むという結果が出ていたほどです。なのに、政府はがんとして企業の利益保護を優先し、人々の訴えを無視してきた過去があります。「オーガニック・コンシューマー」は、「皮肉なことに、巨大な独裁国家であり、腐敗と人権侵害がひどい中国やロシアさえ、体内に入るものについての市民の懸念に答えて(表示して)いるのに、アメリカでは基本的な知る権利も認められていない」
 ……まあ、中国に対する無知と反感はおいといて。この発言者は、アメリカの「自由と民主主義」とは、人々のものではないという単純な事実に気づいていないのです。「ウオール街を占拠せよ」運動でも「アメリカは(リッチな)1%が支配している」って叫んでいるのに。
 それにしても、賛成者も多そうだし、オバマ大統領も候補者時代に「表示」を約束したことを思えば、法案成立も時間の問題に見えますが、そう簡単にいかないのが軍産複合体のアメリカ。政府=企業。
 アメリカでGMOが表示されないのは(むしろ「違法」とされる)、政府とモンサントの腐れ縁のせい。1990年代初め、FDA食品薬品局はモンサント社の弁護士マイケル・テイラーを雇い、同社が開発した合成牛成長ホルモンの使用についての法律を作らせています。その結果、ミルクにこのホルモンが出ていることがわかって、ホルモン使用ミルクの表示を求める声があがったのですが、同社はこれにあくまでも抵抗。ようやく去年になってオハイオ州で敗訴し、今後、表示への希望が出てきました。
 GMO食品については、FDA所属の科学者たちさえ、その毒性、アレルギー、その他の健康リスクについて深刻な懸念を表明していたのですが、FDA は彼らの8万ページにのぼる「発見」を隠蔽していたというからすさまじい。GMO食品の登場は、実は私たちの生きる権利を根底から脅かすものであり、いわば1990年代から食を巡る世界的な戦争が起きているのですが、日本ではそれほど深刻にとらえられていないんじゃないのかなあ・・・。2011.10.27
(参考記事)
http:organicconsumers.org/articles/article_24074.cfm
http://www.organicconsumers.org/articles/article_24192.cfm

「表示を!」運動に関わった代表的なグループ。なお、日本での表示のいいかげんさについては、そのうちヒマができたらコメントします。
Organic Consumers Association,
Dr. Bronner’s Magic Soap,
Center for Food Safety,
Mercola.com,
Nature’s Path,
Natural News.com,
LabelGMOs.org,
Food Democracy Now,
Institute for Responsible Technology

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/