川崎市の放射能ごみ

 川崎市が福島の災害ごみを「勝手に」引き受けたことに対し、市民から苦情が出ているようです。① でもね、これって、川崎市ばかり責めてもしょうがないんですよ。だって、廃棄物の広域処理は今や「国」の権限ですから。(これについては拙著「ごみ処理広域化計画」を)。
 その証拠に、川崎市のHPには次のような記述が(強調・筆者):
 

 災害廃棄物の本市への受入れにあたりましては、国等において、災害廃棄物の処理に関する全体的な計画が示された段階で、その計画に基づき、関係自治体とも協議しながら、市民の健康と安全を第一に処理の体制を検討していくこととなります。また、実際の受入れに際しましては、放射能汚染など市民の健康に影響のない廃棄物を受け入れることとなります。今後、災害廃棄物の処理計画については、市ホームページ等でお知らせしていきます。本市では、今後も引き続き、様々なかたちで被災地への積極的な支援を行ってまいりますので、御理解、御協力をよろしくお願いいたします。環境局施設部処理計画課電話044-200-2586 
 こういう風に、災害廃棄物の処理は国が計画をつくり、各自治体に押し付けるわけで、地方自治法違反です(自治体同士ならOK)。さらに問題は、ごみが放射能汚染されている場合。上には「市民の健康に影響のないごみ」とありますが、だからといって、放射能汚染ごみは受け入れないということではありません。改正原子炉等規正法では、汚染レベルが低いものは放射性廃棄物とはみなさないと規定し(クリアランス制度)、普通に処理(主に焼却)しているため、それを準用する可能性大。阿部市長はそれを先取りしたのでしょう。
 
 というのは、川崎市には、廃棄物や焼却灰の専用コンテナ、「クリーンかわさき号」があり、2007年の新潟県中越地震でも、長岡から川崎市浮島処理センターへ震災ごみ数十トンを長距離輸送したという実績があります。③ 今は梶ヶ谷貨物ターミナル駅―神奈川臨海鉄道末広町間を1日1往復運転している④だけですが、今回の震災ごみの処理は国費でという方針が出ているから、この事業はコンテナ所有者のJR貨物にも大きな収入をもたらすはずだからです。
 汚染ごみは動かさない、燃やさないのが基本。そうしないと汚染を拡大させてしまいます。ごみは単に目の前から消えればいいという考えをいいかげんに払拭して欲しい。2011.4.14
①http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110414/dst11041400130006-n1.htm
http://www.city.kawasaki.jp/e-news/info3848/index.html (被災地から発生した災害廃棄物の受入れについて)③http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/toshibu_jishin/3/4-3.pdf#search=’JR
http://blog.kamotsu.net/2011/04/fukushima-kawasaki/

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/