「化粧品のおはなし」というアメリカのビデオ・クリップが、ニ週間で20万ヒットを達成した、そんなニュースが入りました。これは、シャンプーやローション、デオドラントなどの日用品に、いかに多数の毒物が含まれているかを伝えるビデオで、美容業界で働く人やがん患者、グリーンビジネスなどから圧倒的な支持を受けているそうです。製作者の意図はとても単純・明快。
1.ガン予防
アメリカでは男性の二人に一人、女性の三人に一人が、生涯に何らかのガンにかかっているそうです(そんなに!?)。この異常な状況は、どうやら1950年代の石油化学の発展に始まったらしく、今に至るまで有害化学物質がほぼ野放し状態のよう。今、アメリカ市場で流通している8万種以上の化学物質の大部分も、テストさえされておらず、この間、がんは爆発的に増え、今や子どものがんも珍しくありません。新生児のヘソの緒から300種類の化学物質が発見されて大騒ぎになったのは、つい数年前の話でしたっけ。
2.発がん物質を化粧品に使うな!
なんとベビー・シャンプーに発がん物質が含まれていたたと知り、驚きました。当該企業は「ごく微量だから、影響なし」と言ったとか。でも「微量ならOK」なんて大ウソで、有害物質に閾値(=しきい値)などないことは、これまでもいくつかの物質について証明されてきました。なお、ここで注意すべきは、リスク・アセスという代物。「どこまでなら大丈夫か?」というアセス論争ほど無益なものはなく、「日用品には有害物質を使わない」を常識としなければなりません。
3.安全な化粧品(日用品)を
アメリカでは、ここ数年の不況にもかかわらず、「安全」な製品を作っている小企業は業績を伸ばしているそう。ところが、現行法には「オーガニック、ナチュラル」との表示について規定がないため、大企業派好き勝手にネーミングをつけて売りまくっているようです。日本ではどうなのか、最近、若い人の間で流行っている手作りや「エコ製品」ブームは、彼らの防衛策かもしれません。
実はこのビデオ、「安全な化粧品法(The Safe Cosmetics Act of 2010)」の法案提出に合わせて発表されました。現行の「食料・薬品・化粧品法(Food, Drug and Cosmetics Act of 1938)」は、古いだけでなく、まったくの企業寄り。最近問題になった、高濃度の水銀を含む「美白クリーム」に対し、監督官庁のFDAはリコールさえ出せないというから、完全なザル法です。
そこで新法案は、以下のような目的をかかげています。
すごいのは、冒頭からパンテーンの「プロVシャンプー」など製品名が出てくること。他にもプロクター&ギャンブルの「ハーバル・エッセンス」や、エステー・ローダーの名前も出ているので、企業側の反撃もすごいことでしょう。何しろ大企業は、この法律を骨抜きにすべく、ここ数年、多くのロビイストを雇って逆宣伝を続けてきたといいます。なお、製作者のアニー(語り手、GAIAの友人)の前作The Story of Stuff(ごみのお話)は、1200万人が視聴し、アメリカの保守派が敵視しているという代物。早口の英語はリスニング材料にもぴったりなので、両方ともぜひ見て下さい。私は講演会で資料として使っています。2010.8.9
(参考)
http://storyofstuff.org/cosmetics/
http://www.safecosmetics.org/section.php?id=74
Why We Made the Story of Cosmetics
http://thomas.gov/cgi-bin/query/F?c111:1:./temp/~c111tWFcKP:e0: