重水素実験に対する抗議文

 2月8日、重水素実験に反対する人々が核融合研、土岐市などに行き、実験中止を求めて抗議文↓を手渡しました。よくまとまった抗議文で、問題を知らない人も、一読すれば、これまでのおおよその経緯と問題がわかるでしょう。わからないのは、市街地の近くで中性子を発生させ、施設を放射化させる危険な実験をやろうとする科学者の頭ン中。科学者の思考形態は、もともと「研究命、人命無視」「説明不要、責任不負」、実験を行うためなら何だってやる人々…核融研にはそんな連中が集結しています。原発も設置をバックアップしたのも科学者。そしてフクイチが起き、今、日本は世界を汚染したと批判されているのに(日本では報道されない)、また新たな汚染源を開発しようとしている彼らはまるで狂犬。私たちに必要なのは「科学者監視の会」です。

 

201728

大学共同利用機関法人 自然科学機構

核融合科学研究所 所長 竹入康彦 様

 

重水素実験開始に対する抗議文               

 さる2017117日に貴研究所は大型ヘリカル装置(LHD)の重水素実験を2017年3月7日から開始すると発表されました。この実験では大量の中性子とトリチウム(三重水素)や数十種類の放射性物質が発生する為、私たち地域住民はその安全性に非常に危惧と不安を感じています。今回の実験開始発表に抗議し、実験の中止を強く求めます。

 そもそも貴研究所の前身である名古屋大学プラズマ研究所の土岐市移転計画が1979年に発表されて以来、地域住民は「核融合」の安全性に疑問を抱き1982年に「名大プラズマ研究所土岐移転に反対する会」を発足、公害調停(20012003)、協定書締結反対署名3万筆(2013)など一貫して反対し続けて来ました。しかも貴研究所が土岐に移転する際にトリチウムを使用した実験(DT実験)は行わないとしていたこと、重水素実験によってトリチウムが発生することについて明確に十分な説明を行わなかった(隠していた)ことは公害等調整委員会の調停案にも明記されています。

 重水素実験は、重水素同士の反応(DD実験)の後、直ちに重水素と発生したトリチウムの反応が起こる事実上のDT(重水素とトリチウムの核融合)実験であり、年間最大555億ベクレルという到底微量とは言えない放射性トリチウムが発生する実験です。

 貴研究所はこのトリチウムの発生は副次的なものであるとか、 単なるプラズマの研究だなどと住民には説明していますが、共同研究において、 『重水素プラズマ実験で本質的となる核融合出力の測定』と明示し、DT反応により生じる14MeVの強力なエネルギーの中性子の計測装置の開発を目指していることからも、重水素実験の本質はDT反応にあると考えます。<資料1>

 この重水素実験に対しては、ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さんが古川雅典多治見市長に反対する見解を記した手紙(20132月)を送っていらっしゃいます。

 市民の反対を無視し強引に結ばれた2013年の貴研究所と岐阜県及び土岐市、多治見市、瑞浪市による協定書、覚書、同意書に私たちは今でも納得していません。近隣する多治見市滝呂町は研究所からわずか700メートルにある住宅地で小学校もあります。このような住宅密集地で2mの厚さのコンクリート(天井はわずか1.3m)でないと防げないほどの中性子が発生する危険な実験を行うのは、全く非常識です。

 また、トリチウムは透過性が高く、非常に扱いが困難で、環境に出てしまうと水そのものとなり、人体に取り込まれDNAの一部となることで深刻な内部被曝を引き起こすことが指摘されています。貴研究所は排水を土岐川に流すとしていますが、土岐川は愛知県では庄内川となり、伊勢湾に流れ込みます。昨年の貴研究所と委員会のトリチウム測定によると現在の土岐川集水域の濃度は平均0.3Bq/Lですが、 実験中の管理基準値は600Bq/L2000倍です。トリチウム濃度を検査した上で排水するとしていますが、規準が甘過ぎる上、濃度規準なので、河川や海の底質への蓄積、生態系への悪影響は全く考慮されておらず、とても受入れられません。

 

 貴研究所のある土岐市の生活環境保全に関する条例 第2条には「放射性廃棄物の持ち込み禁止等」、また、土岐市放射性廃棄物等に関する条例(案)第3条には「土岐市は、放射性廃棄物等の最終処分場とそれに関する全ての施設の建設を拒否する。2、土岐市は、市地域内においていかなる場合も放射性廃棄物等の持ち込みを拒否する、とありますが、重水素実験による強烈な中性子により放射化した装置・コンクリートは放射性廃棄物となり、土岐市に存在し続ける事になります。重水素実験は明らかにこの二つの条例に違反しています。

 近接する滝呂町住民には、今回の実験開始について未だに直接説明もありません。また、この実験は地元土岐市・多治見市・瑞浪市だけでなく、ひとたび過酷事故・災害・テロ等が起きれば近隣の愛知県住民(研究所から瀬戸市まで4.6kmと瑞浪市より近く、名古屋市東谷山とうごくさんまでは12.8km)にも広範囲に影響があると考えられます。にもかかわらず、貴研究所はこれまで一度も隣接する瀬戸市民、豊田市民、愛知県民に説明しておらず、この実験自体知らない近隣行政・市民が殆どです。愛知県によれば、住民の要望を受けて貴研究所に周知や説明会を求めたが応じてもらえなかったとのことです。私たちの税金を使った研究をし、放射性物質を発生させる実験を計画しているというのに、貴研究所は全く説明責任を果たしていません。

 この研究にはこれまで巨額の国費が投じられてきましたが、実用化のめどは研究が始まって60年経った今も未だにありません。核融合は膨大なトリチウムや放射化された放射性廃棄物の問題から逃れることはできず、決してクリーンなエネルギーではありません。高速増殖炉「もんじゅ」と同じく、税金の無駄遣いです。

 さらに、一昨年、貴研究所で火災死亡事故があった際、愛知県、瀬戸市に連絡はありませんでした。それどころか多治見市役所は連絡があったにもかかわらず、近接する多治見市滝呂地区の住民に知らせませんでした。この事実から東京電力福島第一原発事故と同様に、万が一事故が起こった場合、住民に速やかに情報が伝えられず、避難もできず、棄民される懸念が多いにあります。

 福島第一原発事故により現在も原子力緊急事態宣言が発令中で、環境中に放射能が放出され続け、私たちの生活環境は脅かされています。被災者は未だに救済されておらず、甲状腺がん等の健康被害も増え、多くの人が苦しんでいます。この教訓に学べば、私たちはこれ以上放射性物質、放射性廃棄物を発生させる重水素実験を認める事はできません。本実験は岐阜県において本格的に放射性物質が発生する初の事例でもあり、これを認めることで高レベル放射性廃棄物処分や関連の研究等の容認にも影響が波及する恐れもあり、強く危惧いたします。本実験の中止を強く求めます。

以上

 

(提出団体)

多治見を放射能から守ろう!市民の会 

NO NUKESとエコ・東濃

核融合を考える友の会

核のゴミから土岐市を守る会

埋めてはいけない!核のゴミ実行委員会・みずなみ

放射能のゴミはいらない!市民ネット・岐阜

平和・人権・環境を守る岐阜県市民の声

くらし しぜん いのち 岐阜県民ネットワーク

 未来につなげる・東海ネット

核のごみキャンペーン・中部

瀬戸市の問題を考える市民ネットワーク

原発おことわり三重の会 

放射能汚染を監視する市民の会(全国)

他11団体

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/