裁判所は国の責任を認めない

 日本人が忘れてはいけないこと。日本はワースト原発事故の国だということ。なぜなら、過去を忘れたがっている人々の動向を見て、裁判所はこんな↓判断をするからです。

国の責任、地裁判決は8勝8敗に 新潟で原発避難者訴訟

2021/06/02 15:29朝日新聞社

 東京電力福島第一原発事故で福島県から新潟県に避難した237世帯805人が国と東電に計88億5500万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が2日、新潟地裁(篠原礼裁判長)であった。判決は東電の責任を認めて賠償を命じたが、国の責任は認めなかった。全国で起こされた同様の訴訟で、地裁が国の責任を否定したのは今回で8件目。ほか8件では国の責任を認めており、判断が割れている。東電の責任については16件すべてで認めている。今回の訴訟の提訴は2013年7月。原告数は福島県の訴訟を除くと全国最多で、避難指示区域外の自主避難者が約8割を占めている。夫を残し母子で避難する母子避難が多いのが特徴だ。精神的損害の慰謝料などとして、原告1人あたり1100万円の賠償を求めた。主な争点は、▽国が原発事故につながるような大津波を予見し、東電に対策を講じさせることで事故を防ぐことができたか▽賠償の目安となる国の「中間指針」に基づく賠償は十分か、の2点だった。原告側は、全237世帯の陳述書を提出。それを分析した専門家の証人尋問を実施するなどして、被害の実態の立証を試みた。

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 裁判所は「公正な判断」をするところではありません。それは一度でも行政訴訟をやってみればわかります。政権への忖度、名もない一般市民への蔑視、凝り固まった無能なお頭…裁判官は一般社会ではやっていけない連中ばかり。だから、事実と向き合うことなどできはしない。フクイチ事故の最大の責任者は、原発推進策を決め、そのための法律を作り、そこに多額の税金をつぎ込んで原発大国を作り上げてきた「国」です。

 そして、人々が「コロナ」に気を取られている間に、原発は徐々に息を吹き返しています。

美浜3号機 6/23再稼働発表。40年超の再稼働は国内初

2021/05/27 https://www.mbs.jp/news/kansainews/20210527/GE00038477.shtml
… 原発の再稼動をめぐっては、福井県知事が当初、使用済み核燃料などを保管する中間貯蔵施設を県外に設置することを条件としていましたが、関西電力はその候補地をまだ決定できていません。関西電力は中間貯蔵施設の候補地について2023年末までに確定させるとしています。

 福井県知事が、自らつけた条件を自ら無視してしまったウラには、いつもの工作があったことでしょう。福井県民や隣接市町村の住民は、この知事の「裏切り」を厳しく責め、老朽原発の早期廃炉を求めないと、第二のフクイチが待っています。なぜなら、見出しにあるように、40年超の原発再稼働は初めて。いつどんな事故が起きるかわからないからです。

 忘れていけないのは、この美浜3号機は過去に、配管破裂事故を起こし、大量の高温上記を浴びた作業員ら6名が死亡するという大事故を起こしたこと。以下美浜発電所 – Wikipediaから。

「事故直後に死亡した4名の死因は全身やけど(熱傷)および、ショックによる心肺停止で、ほぼ即死に近い状態だったとされる」「 本来は肉厚4.7mmまで減肉してしまう前に予防措置をとるという内部規則があり、1989年には配管を検査し1991年には取り替えることになっていたにもかかわらず、関西電力と検査会社(三菱重工業と日本アーム)の見落しで点検台帳に登録されておらず、この個所は稼動以来の27年間一度も点検さえ行われていなかった[17]

 

 そして、事故原因は、利益至上主義の企業の姿勢でした。↓は地元福井新聞の2019年の記事。

美浜原発死傷事故「まさか」が現実 未点検配管破裂、発生から15年

 関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)で破れた配管から高温の蒸気が噴出し、作業員11人が死傷した事故から8月9日で15年。運転中の原発で起きた国内最悪の事故は、配管が運転開始から28年間、一度も点検されなかったことが原因だった。美浜3号機は現在、40年超運転を目指し、安全対策工事を進めている。関電幹部は、事故の教訓を忘れず、安全最優先を貫いていく決意を示す。美浜町の経済界や住民からは、常に緊張感を持ち続けるよう求める声が上がる。⇒関電・森中本部長「リスク発見能力上げる」

 事故は2004年8月9日午後3時20分ごろ発生。美浜3号機のタービン建屋で、タービンを回すための2次冷却水の配管が破裂して高温の蒸気が噴出、同14日から始まる定期検査の準備のため近くで作業していた下請け会社「木内計測」(大阪市)の作業員4人が死亡、7人が負傷した。負傷者の1人は同25日に入院先で死亡した。破れた配管は水流や腐食によって厚みが減る「減肉」を起こし、10ミリだった厚みは最も薄い所で0・4ミリまで減っていた。

 「美浜で蒸気漏れがあった。けが人が出ているらしい」。関西電力の元幹部の男性は県内の町役場にいた時、部下からの電話で事故を知り、けが人の情報に鳥肌が立ったという。この約1カ月前、定検中だった大飯原発1号機(福井県おおい町)で、予想以上に配管の減肉が進んでいる箇所が見つかっていた。「まさか大飯のようなもの(減肉)ではないやろう」と信じたかったが、「まさか」は現実となってしまった。原子力安全・保安院(当時)の報告書などによると、破裂箇所はメーカーの三菱重工が1990年に点検リストを作成した際、記載から漏れ、事故まで一度も点検されなかった。事故前年の2003年、三菱重工から点検リストを引き継いだ関電の子会社「日本アーム」(現日本ネットワークサポート)の担当者が気付き、点検対象として関電にメールで報告したが、重大に扱われず、点検は04年8月からの定検に先送りされた。

 男性は、事故の背景に減肉現象に対する関電の「不誠実な対応」があったと指摘する。厚みが国の省令で定める基準を下回っていることが分かっても、都合の良い評価をして使い続けることがあったという。「自分で自分をごまかして次の定検で取り換える。それまで技術基準違反の状態で運転するということがいくつも出てきた」

 1日動けば1億円のもうけが出るとされるプラント95年から始まった電力自由化の流れの中で、効率化を追求する経営環境も影響した。被害に遭った作業員は、定検による停止期間を短縮するため、準備として運転中のタービン建屋に入り、配管の真下で作業スペースを設置していた。

 子会社の指摘を受けて調査し、破裂箇所の厚みが基準を満たしていない可能性があると分かったらどうだったか。「運転を止めた結果、大丈夫だったら『なんで止めたんや、あほ』となる。不確かな情報で止めるのは難しかったと思う。ただ準備作業はいくらなんでもさせなかった」と男性。「立ち入りさえしなければ、少なくとも人は死ななかった。(放射性物質を含む)1次系に気が行きすぎて、2次系は緩かったというのが反省だ」と悔やんだ

 電力会社のこの利益至上主義は、フクイチ後の今も変わっていないことを、私たちは肝に銘じておかないと。

ちなみに、以下は老朽化原発の運転状況。「がれき」「脱原発」であれほど騒いだ人々が、この問題を取り上げないのはなぜかと思います。

運転中(発電中):7基 停止中:26基

(2021年5月21日8時30分更新)http://www.gengikyo.jp/db/fm/plantstatusn.php?x=d


20216/3

 

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/