芦名「焼却灰受け入れ説明会」を聞く

 15日、神奈川県の「焼却灰受け入れ説明会」に行ってきました。会場の芦名コミュニティセンター前では、地元の人たちが反対の紙を掲げたり、マイクを持って「受け入れるなー」、「子どもを守れー」と元気がいい。早めに行ったのに、会場はもう満員状態。200人くらいの予定に対し、500人以上がつめかけ、急きょ別室を用意するほどでした。
 やがて登場した黒岩氏はとても政治家を目指すような人には見えず、かえってやな感じ。かの岡崎知事がそうだったっけ。ところが、彼は開口一番、「私はみなさんの、放射性物質に対する恐怖感、アレルギーは誰よりもよくわかっているつもりです。選挙でも誰よりも早く『脱原発』を口にしました」
 これで、この人の頭の程度がわかります。放射能の危険性は事実であり、それに恐怖感を持つのは極めて自然、だからこそ国民の多くは「脱原発」を求めているのです。でも、アレルギーとは、「何かに過剰な抵抗を示す」ことだから、彼は「放射能なんて、ほんとはちっとも怖くないんですよ」と言っているのと同じなわけ。何か言ってやりたかったけど、進行を妨げてもね、と黙っていました。以下は、独断と偏見で再現した、当日の発言のほんの一部です。
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 【黒岩知事の発言ポイントと(山本の解説・感想)】

  神奈川県はガレキ処分で被災地に協力すべきだ。
 (そんな法律的な義務はありません。それどころか、市町村に焼却を押し付けることになるから、廃棄物処理法、自治法、その他、いろんな環境法令に違反します。当然、地元の協定にも違反。新人無所属知事にしては大胆すぎ)
  受入れ基準は、国の8千ベクレルではなく、100ベクレルとする。100ベクレルなら放射性物質として取り扱われないし、安全、大丈夫、自然放射能や飛行機に乗る方がずっと高い。
 (唖然。原子炉規正法の規定を、生活に近いゴミ処分場にあてはめていいはずないじゃないか!)
  芦名の処分場はすばらしい、これはみなさんのご協力のおかげです。
 (この日、何回もくり返された言葉。その度、会場はなぜかシーンとなり、処分場や汚染施設を押し付けられた地域の痛みが感じられた)。
  私たちは「被災地」というのを間違えているのではないか。都の先行調査の結果では、東京都のガレキと混焼したあとの空間線量が最も高かった。
 (これは別の意味で超重要。つまり都が、住民の反対を押し切って焼却しているガレキは、すでに地域の第二次汚染を招いているという意味になる。都民はきちんと説明を求めないとね)
  横須賀市、川崎市、相模原市が焼却の検討をしている。
 (違法な「広域化計画」にさえ違法!これらの地域の方々、すぐ中止を求める運動を!)
  焼却すると、放射能の濃度は約33倍に高まり、100ベクレルが1600から3600になるが、それでも国の8000より、ずっと低い。
 (誰の研究成果やら。焼却処理による放射能汚染の濃縮・拡散が、そんな程度じゃないってことは、すでにニュースにもなっているのに。
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  焼却灰はフレコンバッグのまま、防水シートの上に覆土しながら重ね置きしてゆく。
 (実物が示されると、会場は騒然。「自分の庭に置いとけ!」。質疑ではフレコンバッグの耐久性は十年ほど、下流の小田和湾で背骨が曲がった魚が見つかっているという声もあがった。ま、処分場の「漏れ」が常識なのは、日の出の森のことを考えても明らかだから。)
 
 次の東北訪問のビデオ放映は、知事の思惑に反してみごとに逆効果をもたらし、会場からはあちこちから「もう止めろ!」など怒りの声が。その後、ようやく質疑応答となりました。以下はその超簡略版。編集あり。順不同。
 【質疑応答】
 Q;無条件で反対です。17、農政局長と副知事が地元町内会役員会に説明に来たが、「地元の理解が大前提」とのことだった。地元が同意していないのに対話集会を開くのはおかしい。独断で決めて、「撤回するつもりはない」とも言っているが、これはどういう意味?

 
A:まず住民に伝えて聞いてみたいと思った。独断ではなく、誠意を尽くして説明する。「撤回するつもりはない」とは、あくまでも納得が前提という意味です。


 
Q:ここまでなら安全、と考える基準はありますか?五年後、十年後に子どもたちがガンになるかもしれないが、それをどう考えていますか?


 
A:私は専門家ではないから、特別な数値は持っていません。子どもたちがガンになるかどうかはわからないので(会場から「だからやっちゃいけないんだよ」「そうだ、そうだ」)でもタバコの方が(放射能より)よっぽどひどいんですよ。放射性廃棄物を持って来るのではありません。それに、徹底的にフォローします。データもずっと公開し続けます。


 
Q:何をもって「合意」とするのですか?(何回も出た質問に、知事、なかなか答えず。最後にしぶしぶ)。


 
A:今の協定のままでは県外からの持込はできないので、改訂をお願いすることになります。


 
Q:この協定があるのに、なぜこんな受入れのアイデアが出てきたのか、どこから出たのか?


 
A:新たな事態が起きたからです。受入れは私の思い。なんとかして、被災地をみんなで支えて誠意だけでなく、知恵も出しとにかく早く復興しないと…    

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【感想】


ガレキの広域処理、特に焼却灰の引き受けは、汚染と被害を均一化し、原発延命につながるのは誰にでもわかる論理。「反原発」の公約にも完全に反するから、おそらく支援団体(自民・民主・公明、業界)の強い指示を受けているのでしょうが、こんな知事ならいない方がいい。
 なお、芦名処分場は、神奈川県唯一の「公共関与処分場」として、現地の強い反対を押しつぶして強制完工したもの。地元は、かろうじて、受け入れごみを県内の産廃
8項目にしぼった協定書を県と結んだのですが、黒岩知事は、この「お約束」を一方的に反故にしようとしているわけです。それに、この事業は
協定書の改訂だけじゃなく、廃棄物関連法の改訂、放射性廃棄物関連新法を制定しないと進められません。石原都知事がそこをごり押ししているのは、「超法規的」というか、非法・違法な加害行為となり、私は刑事罰が必要だと思います。訴えてやりたい。2012.1.17
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この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/