緊急のお願い(風車「報告書案」にノーを)

昨日の環境省交渉の結果ですが、とりいそぎ、みなさまに二つのお願いがあります。

①環境省による今回の「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会報告書(案)」は、「低周波被害」の存在を完全に否定し、事業者に便宜をはかることを意図したもので、まったく受け入れられません。このことを是非知ってほしい

②しかも、環境省は17日までの予定でこの件についてパブコメを募集しています。ほとんど知る人がないので、パブコメも少ないことを予期しているのでしょう。環境省らしい、汚いやり方です。放っておくと、この人権侵害事業がどこでも簡単に実施されることになるので、ぜひ、みなさまもこの「報告書(案)」に「ノー」の意見を出して下さい。下の山本の意見を参考にしても、そのままでも、自分の意見を付記してもいいので、是非出して。

 環境省のパブコメのサイトはこちら

  ⇒http://www.env.go.jp/press/102888.html

 意見提出フォームは⇒ http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public

 文字数⇒2000字以内。書き直しは大変なので、あらかじめ文字数を確認しながら書くといいでしょう。

 なお、風力発電、低周波問題のことを知らない人々のために、一応「背景」を転載しておきます。

「再生可能エネルギーの導入加速化は我が国の重要なエネルギー政策であり、風力発電施設についても将来にわたって導入が進むことが想定されています。一方 で、風力発電施設から発生する音は通常著しく大きいものではありませんが、風車騒音特有の音の性質や、風況等を考慮した設置適地が静穏な地域であることが 多い等の要因により、苦情等の原因となる事例があります。
 このようなことを踏まえ、環境省水・大気環境局では、平成25年4月より「風力発電施設から発生する騒音等の評価手法に関する検討会」を設置し、有識者による検討を行ってきました。今般、同検討会において、風力発電施設の設置事業者・製造事業者、行政(国及び地方公共団体)、地域住民等の関係者の参考となるよう、主として商業用に用いられる一定規模以上の風力発電施設を対象とし、現時点までの知見及び風車騒音の評価方法について報告書案が取りまとめられました。本案について広く国民 の皆様からの御意見をお聴きするため、パブリックコメントを実施します。

 

 以下が山本の分析です。前半は「低周波」とは無関係ですが、参考までにつけました:

  • 再生可能エネルギーは、科学的にも経済的にも、社会的にも、今後、「重要なエネルギー源」となることは考えられず、これを「重要なエネルギー政策」と位置づけるのはまちがいだ。
  • 中でも、風力エネルギーは、特定の風向・風速の時しか使用できず、無風の時は無用の長物だ。
  • 風車は生態系保護にも重要な山の尾根などを完全に破壊して建設されるため、地域の生物多様性を破壊し、同条約などにも違反する。
  • どの地域にも、季節的に決まった「風の通り道」があるが、そこに大量の人工構造物を立てることによる地域の環境変化が懸念される(環境アセスは事業を進めるために実施される)。
  • 巨大な人工構造物である風車は景観を汚染し、視覚的にも強い不快感をもたらす。景観汚染は郷里の価値を著しく下げる。
  • 風力発電など再エネ開発を理由に電力料金を上げたのは、電力事業者へ便宜をはかっていることになり、納得できない(電力使用量に応じて再エネ発電賦課金が課されている)。そのため、多くの国々で風車反対の運動がおきている。
  • 風車導入のごく初期から、騒音・低周波による被害が起きていたにもかかわらず、国・地方自治体が企業側に立って被害者の訴えを無視してきたのは、行政の公平性に反し、被害救済を怠った「不作為」である。

 ここからが「報告書(案)」への批判。つまり、「低周波音」に対する意見です。パブコメへの参考はここからどうぞ。ただし全文は2000字を超えているので調整して下さい:

  • 風車被害は、生命や財産の喪失につながる深刻なものであるにもかかわらず、環境省がこれを「苦情等」と片付けているのは監督官庁としてきわめて不誠実であり、納税者に対する義務を果たしていない
  • 「設置適地が静穏な地域」とは、風車が主に過疎の農山村(人口が少なく事業への反対も少ない)に建設されていることを意味している。つまり、特定の土地の人間に苦しみを与えているわけで、これは著しい環境的不公平であり、容認できない。
  • 「報告書案」は、「被害」を「苦情」、「低周波音」を「騒音」とするなど、言葉の選び方から問題を過小評価しており、まったく誠実さがうかがえない。
  • また本「報告書案」をまとめた「検討会」のメンバーは、多くが工学畑の学者であり、低周波による人への影響を科学的に分析できる医師や研究者は入っていない。なお、佐藤敏彦氏は「医師」だが、過去の論文の表題からはこれまで低周波被害を研究してきた実績があるとは考えられない。
  • また、検討会メンバーは誰が指名したのか、企業や省庁との利益相反関係はないのか極めて疑わしく、調査してその結果を公表すべきだ。
  • この「報告書案」の結論は、最初から「低周波否定」、「風力推進」であったことが、低周波音の研究者である岡田健氏から明らかにされた。氏は9月14日に行われた環境省交渉の席上、次のような驚くべき事実を暴露されている。

  ――当初、メンバーに自分の名前もあったが、知らない間に消されてしまった。反対者は呼ばないのだ。

  ――ああいうアンケートを出して、「低周波に害がある」という答えが出てくるはずがない

  ――問題のないところだけ調査して評価するなんて、とんでもない

  ――G特性、A特性などを持ち出したのは、低周波をやろうという意思が全くないから。これは可聴音の騒音評価に使う言葉で、可聴音の評価に使うだけならいいが、それを低周波にあてはめるのは大問題

  ――「報告書案」は「低周波のリポート」などではない。言葉の定義も決まっておらず、「音の評価」などとしている

  ――日本では、2000年ごろから学会で「低周波については発言しない」ということになった。調査すると1.5Hz(超低周波音)が出ているにもかかわらず、それを無視し続けてきた結果、今、風車は手がつけられないところまで来ている

  ――「報告書案」は非常にばかばかしいレベルで、これだけは絶対に通してはいけない

  • 学会も環境省も、低周波音も、その被害を訴える人の存在も認めてながら、報告書案では「風車騒音は”聞こえる”音(騒音)として議論すべき」としているのは、著しく理論性を欠き、信頼できないものになっている。
  • このような「結論ありき」の調査結果を風車建設の「参考」にしてしまうと、さらなる環境破壊と人体被害を生むことは目にみえており、報告書案は撤回されなければならない
  • ところが現実には、企業はすでにこの(案)を利用している。たとえば、前田工業㈱は、山口県の安岡洋上風力発電のチラシに「環境省より風車騒音の評価の考え方(案)が発表されました」「風車騒音は聞こえる騒音の問題のことです」などと書き、関連する地域に全戸配布していた。つまり、本報告書(案)は事業者に便宜をはかるためのものと断言できる。
  • それを裏付けるのが、本報告書案の扱いが未定であるという点だ。9月14日、環境省職員はヒアリングに対し、「報告書案はパブコメをいただいてとりまとめた後で、扱いを決める」と明言した。つまり、この中途半端な性格の文書は、国民には何のメリットもない一方、企業にはすでに大きなメリットをもたらしているわけで、これは行政の公正さから見て大問題である。
  • 実験室実験で、低周波音が「超低周波数領域の成分は聞こえない/感じないことが確かめられた」から、「風車騒音は超低周波音による問題ではないということを示している」としているが、さまざまな条件を限って行われる実験室実験の結果を、実際の巨大風車による騒音被害にあてはめるのはきわめて乱暴、というか幼すぎ、科学研究が聞いてあきれる。
  • 「風車騒音の人への健康影響」に関しては、多数の査読つき論文を読んだ結果、「明らかな関連を示す知見は確認できなかった」としているが、実際は、引用された論文にさえ、騒音、低周波音に対する疑念が出されている。

  ――風車が居住地域に著しく近い場合には、、身体的、精神的、社会的に悪影響を与える可能性がある

  ――風車から発生する可聴音(騒音)によるアノイアンスにより、さまざまな健康影響が引き起こされることが否定できない

  ―ー風車から発生する聞こえない低周波成分の音や超低周波音は、健康影響を生じさせるかもしれない原因として除外できない

  • なお、どこの国でも「御用学者」はいて、企業や行政の求めに応じて結論を出すことは、特に医薬産業界で顕著だが、その他の分野でも状況は同じである。
  • また、報告書案はカナダ健康省の「(風車と健康被害は)関係ない」という論文に触れているが、これに関しては、「内容に矛盾がある」「レビューのデータなどが示されていない」「関連する資料も分析もピア・レビューもつけずに要約を公表するのはおかしい」などと研究者から強い批判が出ている(例:http://www.thewhig.com/2014/11/12/prof-disputes-wind-turbine-report)。つまり、嫌われる公害事業の推進につながる研究論文の背後には、常に政治的思惑があるのだ。
  • 20Hz以下の低周波音の被害を完全に切り捨てたこの報告書は、将来、物笑いの種になるだろう。この研究に支出された国費は、国民にとってはムダ金で返還を求めたい。
  • それ以上に「報告書案」は国民にとって害しかもたらさない(原発の運転を完全に野放しにするようなものーー実際も野放しにされていたからフクイチ事故が起きた)。環境省は本報告書案を取り下げ、市民の声を聞いて新たな方策を考えるべきだ。

とりあえずこんなもので。ああ疲れた。2016.9.15

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/