環境省が6月19日付けで、妙な入札公告3本を出していました。
平成27年度廃棄物発電の高度化支援事業委託業務【総合評価落札方式】
平成27年度北九州市における廃棄物発電のネットワーク化に関する実現可能性調査委託業務【総合評価落札方式】
平成27年度福島市における廃棄物発電のネットワーク化に関する実現可能性調査委託業務【総合評価落札方式】
ごみ焼却炉に発電施設をつけ、それをネットワーク化するためのビジネスモデル実験を行えというものです。こういう場合、実際の事業化に向けて、すべてお膳立てが整っています。しかも、この事業は、ごみの全量焼却(これが循環型基本法のねらい)を前提にしており、市民はごみを絶やさない(ごみになるものを作り続け、買い続け、消費し続ける)ことが求められます。311以後、「反原発、再稼働反対」と同時に出てきた「再エネ推進」運動が、ごみ発電を含めた、新たな公害の後押しをしている形です。
しかもそのモデル地域として選ばれたのが北九州市と福島市。これは「がれき」にからむ事情を思い出すと意味深です。福島市は建前上、がれきを外部に出していませんが、北九州市は、がれき受け入れを巡り、「市民運動」が炸裂したところ。1970年代以降、公害阻止運動などなかった北九州市(あったかもしれませんが、伝えられていないのでわからない)で、運動の核になったのが「避難ママ」でした。しかし、運動は分断され、市は理由なくがれきに固執し、受け入れてしまった・・・。おそらく裏で何らかの「バーター取引」をしたのだろうと感じていましたが、これがその答えの一つでしょう。北九州市は「ごみで生きる町」を選んだのです。
以下、上記入札説明書の19ページの「仕様書」から、事業の中身を一部抜き出しました。
別添2 平成27年度北九州市における廃棄物発電のネットワーク化に関する実現可能性調査委託業務仕様書
1.目的
東日本大震災以降のエネルギー戦略の見直しが求められる中で、分散型電源かつ安定供給可能
である廃棄物発電が果たす役割は大きくなることが期待されている。廃棄物発電施設が持つ地域のエネルギーセンターとしての機能を高めるには、電力システム改革に対応して廃棄物発電による電力供給を安定化・効率化する新たなスキームを構築するなど、廃棄物発電の導入・高度化を促進する必要がある。本業務は、複数の廃棄物発電施設と電力供給先によるネットワークを構築して廃棄物発電による電力需給を安定化するスキームについて、北九州市の協力を得て事業としての実現可能性を調査するものである。
2.業務内容
自治体が関与する機関が特定規模電気事業者(PPS)となって、廃棄物発電施設の余剰電力を自治体の公共施設等に供給する廃棄物発電のネットワーク化に関し、実現可能性を調査する。具体的には、北九州市の3つ
の清掃工場について電力に関するネットワークを構築し、その余剰電力を北九州市の市有施設等に供給する、地域エネルギー事業の電力需給管理について検証す
る。その際に、電力システム改革に伴う発電側の計画値同時同量を見据えた電力供給の在り方についても併せて検討する。さらに、電力の見える化等の需要家へ
の省エネルギー行動支援の有効性や、付加価値サービスの可能性を調査し、ビジネスモデルとしての事業性を評価するとともに、本地域エネルギー事業を実施す
る上での課題、CO2削減効果等の検討を行う。
(1)地域エネルギー事業の検討
北九州市新門司工場、皇后崎工場及び日明工場を発電側とし、市有施設及び事業者を需要側とし、電力需給管理の検証を行う。電力需給管理は、発電側の発電(余剰電力)計画
に基づく余剰電力量の予測、及び需要側の需要曲線に基づく需要電力量の予測と、実際に収集する余剰電力量及び需要電力量のデータとを比較し、電力の需給バ
ランス(実同時同量)の実現方策を検証する。つまり、発電側の供給不足時の対応、過剰時の対応等について、方策を明確にした上で、本地域エネルギー事業の
事業性を検討する。システム構成等については、以下のとおりとし、リース契約により整備する(【別紙】システム構成概要を参照)。
①データの管理
・検証を行うため、アグリゲーションサーバ及びバックエンドサーバを設置する。
②需要家(市有施設及び事業者)10か所程度にスマートメータ(計量装置)を取り付け、インターネットを介して、既存の東田CEMSと接続する。東田CEMSとの接続は平成22年度「地域エネルギーマネジメントシステムに関する標準化調査事業」(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)で規定された共通仕様書の内容をもとに作成するインターフェースで行う。東田CEMSには、需要電力量の1分電力値を送信する。
③すべての対象需要家からの需要電力量データは、東田CEMSで需要家毎の30分電力値に一次加工して、アグリゲーションサーバに送信する。
④ごみ発電施設(3か所)にスマートメータを取り付け、インターネットを介して、アグリゲーションサーバと接続する。アグリゲーションサーバには余剰電力量の1分電力値を送信する。
⑤アグリゲーションサーバでは、受信した需要電力量のデータと余剰電力量のデータを比較検証し、不足電力の仮想発電機による調整方法や、余剰電力の売却の検証を行う。
⑥アグリゲーションサーバと需要家端末をインターネットを介して接続し、消費電力のデータ等を需要家端末に提供し、電力消費状況の見える化を図る。
⑦業務実施に先立ち、システムの機能確認を行うため、需要家と東田CEMSとの接続、東田CEMSとアグリゲーションサーバの接続及びごみ発電施設とアグリゲーションサーバの接続について通信確認を行う。また、アグリゲーションサーバに蓄積したデータについて、セキュリティ対策等の確認を行う。
(地域エネルギー
・マネジメント・システムの略で、「地域節電所」とも呼ばれる。東田CEMSは「北九州スマートコミュニティ創造事業」の中核をなすシステムで、CO2削減のために再生可能エネルギーをいかに大量導入するかに加え、地域全体のエネルギー需給のバランスと負荷の平準化、電力品質の確保を目指すものである。その実現に向けCEMSは、発電設備や蓄電設備のほか、需要家の設備とも情報網でつながり、需要
・発電予測、需給計画、需給制御、電圧制御、発電制御、デマンドレスポンス(DR:需要応答)といった機能を実現するものである。(以下略)
プラントメーカーだけでなく、コンピュータ、通信関連事業も含む、311後の「新ビジネス」「新公共投資」の創設というわけです。そのことは、環境省の廃棄物発電の高度化支援事業を見ると、よりはっきりするでしょう。日本には、ごみ焼却処理に反対する組織はないし、市民はあいかわらず無知、「再エネ」派の主張(「再エネ」とつけば、みな自然に優しいとの誤ったイメージを振りまいている)のせいで、歯止めをかけられるところがない(山本個人では手が回らん)。少なくとも、ごみ発電と風力発電は許しがたいのですが。
なお、環境省は、暴力団との関係を否定する「誓約書」を出せ、と求めていますが、北九州市の公共事業、特に廃棄物関係は多かれ少なかれ暴力団がらみ。これが「空証文」であることはだれもが知ること。どうしょうもない日本の環境行政です。2015.6.21
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