焼却炉から難燃剤

   ついでにもうひとつ、焼却炉から出る危ないもの、難燃剤。
   日本ではほとんど問題になっていませんが、健康被害を起こすとして、海外で批判のマトになっているのがポリブロミネーテッド・ジフェニール・エーテル(臭素系難燃剤、頭文字をとってPBDEなどと呼ばれる)。その主な発生源のひとつが、焼却炉。
 台湾の学者たちが、さまざまな煙突排ガス中のPBDE濃度を調べたところ、幾何平均(平均値の指数を取ったもの)は、8.07 から 469 ng/Nm3だったそう。すごくバラつきがありますね。ところが、 焼結炉(24.7mg/h)や電気アーク炉(11.3mg/h)、発電所(50.8mg/h)からは、まさに桁違いのPBDEが放出されていました。単位がナノではなく、ミリなのにご注意。これは、PBDEはPCDD(ダイオキシン類)同様、焼却発生物であることを示しているのだそう。
 結果として、台湾では、燃焼によるPBDEの発生源としては、発電所 (30.85 kg/年)が最悪で、次に車の排ガス (14.9 kg/年)、そして精錬工程 (5.88 kg/year)の順序だそう。このリポートの概要は、こういう言葉で締めくくられています。
 「ごみ焼却炉、精錬工場、発電システムなど燃焼工程は、大気へのPBDEの重要な発生源だ」。
  あら、じゃあ、焼却炉の多い日本では、いったいどうなるんでしょうか?日本語の情報として、2006年のwired visionのリポートを紹介しましょう。
 「動物実験では、出生前後にPBDEにさらされた場合、脳の発達に問題が生じることが明らかになっています。こうした研究では、学習、記憶、行動の面での問題が認められます。また、成長期にPBDEに触れると甲状腺ホルモン濃度が低下し、生殖機能に影響を与えるほか、免疫システムの機能低下を招く可能性があるとの結果も出ています」
 あたしらは関係ない? でもね、母親の世代より、子供たちのPBDEの蓄積がずっと高く、2.8倍にもなる、というアメリカの調査結果もあるのです。大気汚染物質だけでなく、すでに食物連鎖の中に入ってきているのですね。若者や子供たち行動が「異常」だとしたら、それは大人の無責任が招いていることなのです。2010.9.18
(参考)
http://wiredvision.jp/archives/200601/2006011303.html
http://www.who.int/heca/infomaterials/hecanet_newsletter_jun_2010.pdf

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/