下水汚泥を燃やしたらどうなるか

 引き続き、科学専門誌から「セメント工場における、代替燃料としての下水汚泥の使用:ヒトの健康へのリスク」という研究の概要を紹介しましょう。。http://www.sciencedirect.com

 研究をまとめたのは、スペイン・カタロニアの大学で、毒性学や環境エンジニアリングを研究する学者たちです。研究のきっかけは、2008年から下水汚泥がセメント工場で燃やすようになったことで、操業から一年後の、工場周辺の土壌や牧草、大気を採取し、これを同じ場所から2003年と2006年に採取していたサンプルと比較しました。その結果、

「ダイオキシンとフラン類は、牧草で0.1ナノグラム(牧草)、土壌で1.11ナノグラムと、前回の調査と非常によく似た傾向を示した。重金属については、あきらかな傾向はつかめなかったが、時間の経過とともに波があった。空気、土壌、植物の重金属の分析は、今回が初めてだったが、大気中の重金属は、世界じゅうの工業地帯で見られるのとほぼ同じ、また工場周辺の住民の健康リスクは、前回調査の、石油コークスを主燃料とする場合の結果と同じく、国際基準に照らして双方とも認容できるものだった」
 
 ここだけ読むと、下水汚泥を燃してもOK、そう聞こえるかもしれません。でも、下水汚泥焼却は、ダイオキシンやフラン、重金属類(ヒ素、カドミウム、コバルト、クロム、銅、水銀、マンガン、ニッケル、鉛、スズ、チタン、亜鉛など)を大量に排出し、健康被害の恐れがあることから、海外では強い抵抗があります。なのに日本では燃すのが普通。下水を処理した後に、凝縮脱水して出た脱水ケーキを、セメント工場や焼却炉で燃してしまうのですが、その排ガスにも灰にも、処理水にも、当然、焼却炉と同じような有毒物質が含まれます(5.埋立廃棄物分析結果)。これまた日本人の不健康のモト。
 
 しかも、こわいことに、環境(汚染)省は、市町村にこの下水汚泥焼却を押し付けています(焼却炉反対:兵庫県北但のごみ・下水汚泥焼却炉計画 >>)。下水汚泥は産廃だから、本来これは違法ですが、誰も文句をつけないので、それが通っている。新焼却炉は、これまで以上に危険なものになるでしょう。下水を燃やさなくて済むような、代替案を考えたいところです。2010.9.12

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/