災害がれき受入れと健康被害

 災害がれきの「広域処理」をしてはいけない、そのことをもう一度、言っておきます。

 311のフクイチ3連発メルトダウンでは、首都圏も大量の放射性物質にさらされました。下水に流れ込んだ放射性物質は、脱水・焼却など「下水処理」を通して濃縮され、各地の下水汚泥から高濃度の放射能が検出されたものです。

 当時、こういう↓ニュースが時々流されていました。

東京湾の最終処分場は今/8000ベクレル超の青い畝”140㍍ 

東京新聞 2011.10.13 朝刊 こちら特報部

 放射性物質に汚染されたごみから出る焼却灰や下水汚泥焼却灰の処分は首都圏でも大問題となっている。特に人口が密集する東京23区の捨て場が、東京湾にある最終処分場だ。汚染焼却灰の処分地からも高めの線量が測定され、小中学生の処分場見学が自粛されたり、被災がれきの最終受け入れに抗議が寄せられたりしている。今、現場はどうなっているのか。(鈴木泰彦、小倉貞俊)

東京区部で出たごみが最後に集まってくる場所。それが東京港の区域に造られた「中央防波堤外側処分場」と「新海面処分場」だ。(中略)放射性物質を含むごみもここへ行き着く。東京都廃棄物埋立管理事務所によると、現在、中央防波堤外側処分場で汚泥焼却灰を、新海面処分場では燃えがらそのものである「主灰(しゅばい)」、清掃工場のろ過式集じん機などで集められた「集じん灰」を、それぞれ場所を決めて埋め立て処分する。(後略)

 日本のメディアはすぐに記事を消してしまうので(欧米の記事は50年前のものも検索できるのに)、これは阿修羅の掲示板からのコピー(一部)です。全文は→www.asyura2.com/11/genpatu17/msg/490.html

 現在、東京のごみの残渣は、最終的には東京湾「新海面処分場」に埋立られています(その前は日の出町だった)。

 新海面は、放射能を帯びた廃棄物や灰などの埋立を想定したものではありませんが、他に行き場がないため、311後は相当量の汚染廃棄物が持ち込まれ、埋め立てられたのです。都民への説明などはなかったことでしょう。もちろん、環境影響や人体被害についての調査が行われたという話もなく、実態は完全に闇の中。

 多くの人びとのイメージと違って、処分場の健康被害の最大の「経路」は、決して地下水汚染ではなく、埋立地から発生する「処分場ガス」や、舞い上がった飛灰・PM2.5などによる「大気汚染」なのです。そこに放射性物質が含まれていれば、呼吸などを通してヒトの肺に入り、内部被ばくによって免疫系を傷つけ、血液のがんである白血病などを起こします。

 東京の処分場は市街地からかなり離れているとはいえ、大気汚染の影響は避けがたく、子どもたちの血液にも異変が起きていました。そのことを指摘した三田医師は、後に東京から岡山県に移住されています。

 

「東京は、もはや人が住む場所ではない」東京から岡山に移住した日本人医師の発言が海外で話題に

 2014/7/25https://news.biglobe.ne.jp/trend/0725/toc_140725_6461325518.html(記事の一部)

「残念なことに、東京都民は被災地を哀れむ立場にはありません。なぜなら、都民も同じく事故の犠牲者なのです。対処できる時間は、もうわずかしか残されていません」(三田医師) 

 …三田医師は2011年の原発事故以降、子供たちの血液検査結果を分析してきたということだが、昨年の半ば頃から子供たちの血液中の白血球、特に好中球が著しく減少してきていることを示唆している。白血球、好中球は共に人体の免疫機能を司る重要な血液細胞で、その減少は免疫力の低下を招く。当時の小平の病院を訪れた患者の症状は、鼻血、抜け毛、倦怠感、内出血、血尿、皮膚の炎症などがあり、ぜんそくや鼻炎、リウマチ性多発筋痛を患う患者も明らかに増えたという。

 本ブログ:東京での生活は限界、ある医師の決断 | WONDERFUL …(2014/3/8)

 

 横浜市には東京のような大規模な処分場はありません。そこで行政と関係者は、学校や幼稚園、保育園の汚染土を「現地処分」で済ませようと、父兄や保護者に知らせず、ひそかに校庭や園庭に埋め立てたのです。…そして、バレると「分断作戦」。 

保育園埋設の放射性汚染土問題 横浜市が保護者に相談会

2019年06月06日

https://www.kanaloco.jp/article/entry-172907.htmlhttps://www.kanaloco.jp/article/entry-172907.html

  横浜市内の保育園の少なくとも300園に放射性物質に汚染された土壌が埋設されている問題で、市は6日、このうち一園で保護者への相談会を行った。市保育・教育運営課の担当者2人が保育園に出向き、質問に応じた。この保育園では、園児2人が白血病に罹患したと指摘されている。同課によると、このため保護者から問い合わせが相次ぎ、相談会の開催を決めた。同課は「市内の保育園で2人の白血病患者が出たことは確認しているが、どこの園かは明らかにできない」とし、汚染土と白血病の因果関係は「何とも言えない」としている。 同課によると、この日は午後3時から約4時間、相談に対応した。6家庭10人の保護者が「(汚染土を)移設しないのか」などと意見を述べ、市が安全性を説明。保護者からは「不安はある」との声もあった。同課は、現在のところ他の保育園で相談会を実施する予定はないとした上で「不安はできるだけ払しょくしたい」としている。汚染土については「対応が不要な放射線量」とし、保管施設の北部汚泥資源化センター(同市鶴見区)に移設する予定はないという。同園に在園していた長男が白血病に罹患した保護者の男性(33)は「今年卒園したが、同じクラスの子も白血病になった」と明かし、「埋設した土のことは説明されなかった。情報を開示し、同じことを繰り返さないようにするのが行政の仕事。被害が出てからでは遅い」と話した。

 

 素人職員による個別の「相談会」ではなく、父母会として市長を引っ張り出し、説明会を求めるべきところですね。

 なぜなら、汚染土埋設も土壌処分の一種であり、そこからは必ず処分場ガスが発生するからです。そして、そのガスが近隣住民がに大きな健康被害をもたらすことは山のような文献で証明されている。横浜の子どもたちは、東京のような「遠くの処分場」ではなく、「身近な園庭処分場」の被害を受けているのでしょう。これはおそらく氷山の一角。不安は(だまされて)払拭できるかもしれませんが、汚染と健康被害は払しょくなどできません。

 その上に、新たに放射能汚染の疑いのある災害ごみを処理するとは狂気の沙汰です。この政策のウラには、311からの懸案だった「がれき広域処理(による全国平均汚染)」を実現したいとの思惑があるのはまちがいありません。日本列島の放射能汚染は、終わるどころか、濃縮は今も進行中。政府と東京都はオリンピックですべてにフタをするつもりですが、2020オリンピックは、アスリートも住民も観客も平等に汚染することをめざした「放射能オリンピック」となることでしょう。2019/12/6

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/