汚染にさらされる農村

 ネオニコ問題の資料として、今年1月、長野県の数団体が共同で出した「要望書」を貼り付けておきます。都会人があこがれる「 田舎暮らし」は、実は危険と隣り合わせ。特に果樹栽培地帯は、深刻な農薬汚染にさらされています。私は、長野県のある自治体で、「農薬散布によって子どもたちに行動異常が目立ち、学級崩壊寸前になっているところもある」と聞きました。都会の消費者に被害が出るということは、生産地の住民にはさらに重篤な被害が出ているということです。それをもたらしているのが、地域住民ーー特に公務員ーーの無知といいかげんさ。↓の件についても、フォローしなければならないのですが……2013.10.5

長野県知事阿部守一様         平成25年1月21日

   農薬の空中散布に関する要望書

【趣旨]
 昨年4月、長野県では松くい虫防除の為の「防除実施基準」が改正され、新基準に基づいて松くい虫防除の為の農薬の空中散布が県内各地で実施されました。千曲市では毎年125ha散布しており、今年度も同様に散布が実施されました。坂城町では昨年度まで3年間中止しておりましたが、今年度は25ha実施されました。
 散布薬剤はネオニコチノイド系農薬のエコワン3フロワブルで、坂城町と千曲市が共同実施という形で、平成24年6月19日早朝、坂城地区、上山田地区、更級地区に散布し、21日に雨宮、土口地区に実施されました。散布後、1週間過ぎごろ、保育園児や小学生の子どもが鼻血を出していたとか、大人でも強い頭痛があったなどの症状を訴える人があることを知り、千曲地区、坂城地区において、知り合いのごく限られた範囲の聞き取り調査をまとめました。
 健康被害状況として、千曲市に報告と同時に「松くい虫防除農薬空中散布後の健康被害調査の申し入れ書」を提出し、健康被害調査の実施をお願い致しました。坂城地区でも坂城町に対し申し入れ書を提出しましたが、どちらの市町でも調査は行ってもらえませんでした。その後、私達は住民の認識度等も知る為に、散布地区の住民に対し、アンケート調査を致しましたところ、薬剤の危険性についてある程度知っていた人はわずか1割もありませんでした。中には空中散布を実施していることさえ知らない人も何人もいました。


 ある若いお母さんは、「毎年620日頃、プールが始まる頃になると、小学生の子どもが鼻血を出す」と言っていました。「昨年(H23)3回も出したので医者に連れて行ったら、粘膜が弱いのでしょう、と言われた」そうです。今年(H24)は2回出したけれど、医者には行かなかったそうです。その子どもさんは普段には鼻血を出すことはないと言っていました。又その方の親戚で上田の方の子どもさん2人が、毎年6月下旬になると喘息症状が出ると言っていました。(千曲市では毎年620日頃空散を実施しています) その方も空中散布薬剤との関係に付いては全く認識されていませんでした。


 農薬の毒性、危険性を知らなければ、たとえ様々な症状が出ていても農薬との関係性に気付くことが出来ません。医師に診て頂いても医師が農薬についての知識がなければ、やはり関係性に気付かずに終わってしまいます。化学物質過敏症のようなカナリヤ的な存在がいて、初めて気付く事ができるものです。


最も懸念される事は、胎児や乳幼児への影響です。


元東京都神経科学研究所の脳神経科学者、黒田洋一郎先生や、群馬県の青山内科小児科院長青山美子医師、又、佐久綜合病院名誉院長 松島松翠先生など科学者や医師が、口を揃えて危険性を訴えている事は、「農薬による子どもの脳の発達障害」ということです。


 県や市町村で行われる農薬使用のあり方を検討する会議において、最重要な課題である筈の「子ども達への影響」については、いつも全く検討される事がないのは何故でしょうか?近年、発達障害の子どもが激増していることは、近い将来、社会の成り立ちが根本から揺るがされていると言わねばなりません。



果樹園が多いなど、農薬の多用地域の子どもに、より多く発達障害がみられるという事は当然、農薬との関係性を疑わなければなりません。県として、「子ども達の発達障害を防ぐ対策」を緊急対策として関係部局を挙げて取り組んで頂きたく、お願い致します。


 次に、東京女子医科大学東医療センター麻酔科医師 平久美子先生が発表された研究論文「ネオニコチノイド系殺虫剤のヒトへの影響」によると、農薬散布時期に一致してニコチン様症状を訴え、受診する患者が増加しているという事。又、国産果物、茶飲料の連続摂取の後、ネオニコチノイド中毒様症状を訴えて受診する患者が激増しており、患者の尿からネオニコチノイド代謝産物が検出されたと報告されています。


 又、ネオニコチノイド農薬の特徴としては、水溶性、浸透性、残効性があり、果物の果肉に移行し、60日後に33%の残留が確認されている。土壌中の半減期は、クロチアニジンは1,386、アセタミプリドは代謝産物を含めると1532日で、80%減衰には80120日を要し、土壌内で、より毒性の強いデシアノアセタミプリドを生じる。水中での安定性は高く、半減期はアセタミプリドは349日と非常に長い。以上のような特性を持つ農薬を使い続けることはこの上もなく危険な事と言わねばなりません。


平先生は昨年暮、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省、環境省に対し「ネオニコチノイドの残留基準引き下げを求める」内容証明郵便を送付されました。


 残存毒性の長いネオニコチノイド系農薬の環境汚染への影響は非常に大きく、大気汚染、土壌汚染、水質汚染は更に食品汚染をも進めてしまいます。
 又、自然界の生き物の絶滅の速度はこのところ急激に進んでいます。


 ミツバチがいなくなったという事はよく言われますが、セミ、トンボ、カエル、などもめっきり居なくなりました。昨年夏、セミの声は本当に少なくなり寂しい思いをしました。また、スズメ、ツバメを始め、野鳥なども本当に少なく、春、一番鳥の声の賑やかに聞こえなくてはならない季節に、山に行っても鳥の声が聞こえず、静まりかえっています。まさに、「沈黙の春」は不気味なものを感じます。
 残存毒性の長い農薬は自然界の全ての生き物を絶滅に追いやるものであるといえます。
 

 私達人間も自然界の生き物である事を忘れてはなりません。以上の観点から、下記の事を要望致します。早急に善処頂きたく宜しくお願い致します。

【要望項目】
1.子ども達を危険にさらし、自然界の生態系を破壊する、農薬の空中散布を中止して下さい
2.子ども達の発達障害が激増している事と、医師や科学者達が「農薬による子どもの脳の発達障害」を指摘している事を、最重要の課題として関係部局の連絡を密にしてしっかり検討して下さい。
3.妊婦や乳幼児の親への、農薬や化学物質(身近に使用される殺虫剤、食品添加物などをも含めて)への注意喚起を行うと同時に、健康調査を行うよう指導して下さい。
4.残存毒性の長い農薬が及ぼしている、食べ物の汚染による人への影響をしっかり調査検討(科学者の研究発表など)して早急に善処して下さい。
5.
残存毒性の長い農薬がミツバチ等をはじめ、自然の生態系に及ぼしている現状を、科学者の研究発表などを参考にして、しっかり調査検討をして、あらゆる生き物(人間も含めて)が絶滅に向かっている現状を変える為に善処して下さい。
6.平成23年度に県で出された「有人ヘリ松くい虫防除検討部会 最終報告書」に提示された「空散効果の写真」(岩井堂山の坂城町側と千曲市側の比較)については、植生が全く違う事や、伐倒駆除の有無、撮影対象区の説明不足など、資料として大変不適切なものですので削除して下さい。                                  以上

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/