日本医学放射線学会の山下センセイ並の「声明」発見

   献血の記事にいくつかコメントをいただいたんでまとめて返答します。なお、匿名は止めてね。
★「過去に放射線治療を受けた人は、一生献血できない」との既述ですが、採血基準には放射線についての項目はない、ということは既に書きました。ただし、現場では、ガンなどで放射線治療を受けたことがあると申告したら、その場で拒否されたとのブログ多し。無申告だと採血されるのかもしれませんね。
★被爆による血液の放射能汚染は、当然、血液製剤の放射線照射とは違います。ただし、放射線照射された血液が、果たして安全なのか、どんな機関がどのように管理しているのか、ということは問題視してもいいでしょう。特に311後の今は。私は放射線を当てたじゃがいもだって食べたくないし。
 次は:「がれきの放射線量ですが、自然界の放射線源もあり……私自身は○○市に住んでいますが、ここは桐生市よりも自然放射線量の多い地域で、当然私の血液は桐生市の市民の皆様よりも放射線量が多いわけですが、新潟市でも献血を禁止するべきでしょうか?どの程度の自然放射線源の地域なら供血が許されるのでしょうか?」

 ★私はその筋の専門家ではないので、こういう質問は医師会とか放射線医学会にどうぞ。でもね、献血の基準についても、関係筋からとっくに何らかの声明が出ていなければいけないと思いますが、これも各自でお調べを。ただ、自然放射線と原子炉や核実験で生まれる人工放射線は、全く違うということくらいは知っておいていただきたい。 自然放射線(太陽光や宇宙船)だって無害というわけではありませんが、自然界にもともとなかった人工放射線は、基本的に非常に危険な存在なのです。従って、「飛行機に乗っても○○シーベルト」「自然放射能と人工放射能の放射線は同じ」という、がれき推進派の比較は、無知な人を誤解させるための話法に過ぎません。
 人工の放射性物質は分離性を有してDNAを傷つける、本来的に危険でな物質であるからこそ、原子炉等規正法や放射線防護法などで、原発作業者を守るべく基準や規制を設けているのです。問題は、今や、その人工放射線が、コントロール不能な形で一般環境中に出てきてしまっていること、そして、政府はさらにそれを拡散させようとしていることです。
 と、ここまで書いたところで、念のため、「日本医学放射線学会」のサイトを覗いて……驚きました。以下は同社団法人の、放射能に関するQAのごく一部です。日付は2011/03/22。下線筆者。
 Q2 妊婦やお腹の中の赤ちゃんや小さな子供のほうが放射線の影響を受けやすいのでしょうか?

 A2 今、皆さんがどこにいても、地域の放射線量は妊婦や子供への影響を心配するには及ばない少ない線量です。妊婦になると、突然放射線の影響を強く受けるように、体質が変わるわけではありません。普通の大人と同じです。大人より子供(小学生くらいまで)の方が、大量に放射線を浴びた場合の影響は2~3倍高いと考えられています。しかし、子供の方が極端に放射線の影響を受けやすい訳ではありません。通常放射線の専門家が子供には配慮をしましょうと伝えているのは、子供は、大人よりも将来の時間が長く、将来どのような健康状態になるかがわからない今の段階では、なるべく注意をはらっておこう、と考えているからです。いろいろな場面で、大人達が「子供は将来があるから大切にしよう」、と思うことと同じです。最近の研究では、お腹の中の赤ちゃんは、私たち専門家も驚くほど、細胞の中の遺伝子が放射線の影響を受けないことが明らかになりました。お母さんは体内の子宮で自らの子を守っています。お母さんの身体が遮ってくれるので、外から放射線を浴びても、その半分以下の放射線量しか赤ちゃんには届きません。http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=911
 おいお~い! 例の山下センセイをしのぐ暴論じゃないの。
 ところが同学会、この後、放射線防護委員会アドホック委員会を開催し、「基本的考え方」をまとめています。そこでの記述はこう変化しています(子どもの部分のみ、2011年6月2日)。
*小児への放射線影響 : 広島・長崎の原爆被爆者の調査結果などから、放射線影響による発がんの生涯リスクには被ばく時の年齢が大きく影響することが明らかとなっている。たとえば、白血病以外の全てのがんの相対リスクは被ばく時年齢が10歳以下の場合では、対照者の2.32倍となっている。先の項で述べたごとく、100mSv以下の低線量における発がんリスクは、小児においても確認されてはいないが、小児の被ばくに対しては、多くの場面で特別な配慮がなされなければならない。
http://www.radiology.jp/modules/news/article.php?storyid=931
 100mSvの記述については、ここでは触れませんが、少なくとも子どもが大人より感受性が強いことは認めざるを得なかったようです。でも、3月時点――正しい情報が最も求められていた時――彼らは全くデタラメな声明を出し、そして、こういうウソを垂れ流しておきながら、訂正も謝罪もしていません。しかもいまだに、平然と3月の記述をHPに残しているのはいったい何のつもり? これを見て真に受けるお母さんや妊婦だっているかもしれないのに。・・・とにかく、3月22日のQ&Aは一見の価値あり。日本の医学界の闇がうかがえます。2012.6.4

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/