指定廃棄物の最終処分場決まる

 ゴミ問題が世界一深刻なのが日本。なぜなら、フクイチ原発事故以来、高濃度に汚染されたゴミの処理を「国」の事業としたため、その委託を受けた廃棄物業界(非常に広い裾野を持つ)が、公然と放射能廃棄物の焼却処理に乗り出したから。自治体は、彼らがばらまく「安全・安心」のウソを頭から信じ込んでいるから、手がつけられない。

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知事「苦渋の決断」
富岡、楢葉町長「古里復興へ容認」 指定廃棄物受け入れ

2015年12月4日 福島民報https://www.minpo.jp/news/detail/2015120427183
 東京電力福島第一原発事故の指定廃棄物を富岡町の管理型処分場に埋め立てる国の計画を受け入れると表明した内堀雅雄知事と宮本皓一富岡町長、松本幸英楢葉町長は3日、「苦渋の決断だった」と心境を明かした。内堀知事は、住民帰還や復興に支障がないよう安全・安心対策の確保を国に申し入れる考えを示した。内堀知事は会談終了後、記者団に対し「苦渋の決断だが、広域自治体の長として容認の考えを伝え、両町、6町村から理解を頂いた」と話した。地元の理解を得たことで、管理型処分場は約2年の協議を経て動きだすが、一部で住民の反対があり、風評被害、安全対策への懸念も根強い。内堀知事は「国が責任を持って各種施策を実行することが大切」と述べた。宮本富岡町長は記者団に「複合災害を克服し、古里の1日も早い復興を進めるため、苦渋の決断だが容認した」と説明。松本楢葉町長も「国の対策に一定の評価をした。廃棄物の減容化、知事と宮本町長の考えを踏まえて容認の意思を固めた」と語った。県外の指定廃棄物が富岡町に持ち込まれるのではないかとの懸念が一部にあることについて、内堀知事は「(各県での処理は)法律で決まっており、県内の廃棄物を県内で処理することが大前提。国はこの方針をしっかり守ってほしい」とくぎを刺した。双葉地方町村会長の馬場有浪江町長は「県と両町の決断を重く受け止める。国は安全・安心を第一に取り組んでほしい」と話した。

■指定廃棄物焼却灰や下水汚泥中心
 
指定廃棄物は、放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレルを超え、環境大臣が指定した廃棄物を指す。ごみの焼却灰や下水汚泥が中心で県内各地の仮設焼却施設や下水処理施設で保管されている。指定廃棄物に該当する稲わらや堆肥などは、発生場所の農地などに現場保管されている。指定廃棄物は
放射性物質汚染対処特措法(特措法)に基づき、放射性物質濃度で分類され、処分先が決まる。処分の流れは【図】の通り。放射性セシウム濃度が1キロ当たり
8000ベクレル超、10万ベクレル以下の廃棄物は、特措法で定められた処分基準に基づき、富岡町の管理型処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」
で埋め立てる。10万ベクレルを超える高濃度の廃棄物は、四方をコンクリートで遮断した遮蔽型処理施設で管理する必要があるが、県内にはない
ため、大熊、双葉両町に整備が計画されている中間貯蔵施設の専用施設に保管する。一方、除染で出た土壌は指定廃棄物とならず、放射性物質濃度にかかわらず中間貯蔵施設に保管する。環境省によると、県内で一時保管中の指定廃棄物は、9月末現在で13万8000トンに上る。このうち、10万ベクレル超の指定廃棄物は全体の約2%の約3100トン。同省は、県内での指定廃棄物の発生量は最終的に計18万2000トンに達すると推計している。

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 焼却処理の結果、焼却灰には放射能が凝縮され、バグフィルターをくぐり抜けて大気中に排出された放射能も、土壌や森、水域を汚染し、やがて下水汚泥に蓄積してゆきます。チェルノブイリを経験した科学者たちも、呼気による内部被曝は、食べ物の摂取による内部被曝より深刻な健康被害をもたらすことから、「放射性廃棄物は決して燃やしてはいけない」「汚染物質は拡散させないよう保管する」と力説しているのです。

 政策的には、ごみ焼却禁止、ごみの徹底削減などを打ち出せば、少なくとも余分な放射能の拡散は避けられたはずですが、大規模施設の建設・運営で儲けてきた廃棄物業界にとって、そのような予防原則など、「お経」に過ぎないらしい。かくて、東北地方では焼却炉建設ラッシュが続いているし、今後は焼却量も増えることでしょう。

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/