指定廃棄物の「処理完了」と「火災」

 いよいよ放射性物質を含むさまざまな汚染物質の焼却ラッシュが始まることになりそうです。燃やしても放射性物質が分解されるわけじゃないのに、とにかく目の前の「廃棄物」を減らせばいいというのが「放射脳」連の考え。そのため、環境省は、「指定廃棄物」というジャンルを作り、放射性廃棄物を廃棄物処理法の対象としてしまったのですが、その違法性をきちんと指摘できる市民団体、専門家がいない日本では、環境汚染はさらに悪化することになりそうです。
焼却処理が完了 放射性物質汚染の下水汚泥
2016/06/01 http://www.minpo.jp/pub/topics/jishin2011/2016/06/post_13788.html
 郡山市の県県中浄化センター下水汚泥仮設焼却施設で31 日、東京電力福島第一原発事故による放射性物質に汚染された下水汚泥の処理が完了し、施設の運転が終了した。施設は環境省が整備し、平成259月に1キロ当たり8000ベクレルを超える放射性セシウムを含む「指定廃棄物」の汚泥約11千トンの焼却を開始した。264月からは同8000ベクレル以下の汚泥約27千トンを県が処理した。汚泥は全て同センターでの下水処理の過程で発生した。焼却前、フレコンバッグ(除染用収納袋)に入れられ、センターの敷地内に山積みされていた。焼却灰約7500トンはフレコンバッグと貨物コンテナに入れて敷地内で保管している。このうち約7千トンは指定廃棄物で、国有化された富岡町の管理型処分場に搬入される見込み。8000ベクレル以下の残る約500トンは埋め立て処分できるが、県は環境省と対応を協議している。県は293月までに施設の 解体を完了する予定。費用は東電に請求する。
 専門家がいるなら、この焼却処理の結果、大気中に飛散した放射性物質、そして焼却灰に移行した放射性物質がどれくらいになるのか、まともに研究し、データを出せばいいのですが、そんな奇特な研究者はいません。なんてったって、鮫川村の実験用焼却炉のデータでさえ、8割が墨塗りで公開されていないんだから。・・・つまり、国も自治体も企業も研究者も、焼却処理によって放射性物質が環境中に拡散するってことはわかっているのです。もちろんバグフィルターでキャッチなんかできないって。そして「処理」が済めば施設は解体され、証拠隠滅が図られる……地域住民は、定期的に大気観測、土壌観測、健康調査をすべきですが、こんな地域ほど自公保守老が仕切っているんだろうなあ。
 ところで、各地で指定廃棄物の火災が起きていたのも、今回、知りました。たとえば;

指定廃棄物が入った袋を焼く 郡山で倉庫火災

 16日午前3時40分ごろ、郡山市日和田町、郡山建設廃材リサイクル事業協同組合の倉庫から出火、プレハブ平屋の倉庫を半焼、保管されていた指定廃棄物の焼却灰が入った大型の土のう袋約200袋を焼き、約4時間後に鎮火した。けが人はなかった。 郡山北署によると、大型土のう袋には、建設廃材を焼却して出た放射性物質の濃度が1キロ当たり8000~10万ベクレル以下の指定廃棄物の焼却灰が入っていた。同署が原因を調べている。環境省福島環境再生事務所によると、火災発生前の付近の放射線量を測るモニタリングポストの値は、同3時に毎時0.191マイクロシーベルト、鎮火後の同8時に毎時0.192マイクロシーベルトで、大きな変化はなかった。同事務所によると、倉庫には1200~1300袋の同袋が保管されていた。火災で袋から出た灰は新しい同袋に詰め直し、同倉庫に保管するという。現場はJR郡山駅から北に約9キロの郡山北部工業団地の一角

 驚くことにこれも郡山市。そしてもっと驚いたのが、焼却灰のフレコンバッグが燃えたということ…。「灰」がいったい何度くらいで「燃える」のか知りませんが、灰溶融だって1000度以上の高温が必要だから、その焼却灰ーーしかも1トンにもなるーーが簡単に燃えるなんて考えられません。でも、記事には「袋から出た灰は~」とあることから、倉庫壁やフレコンは燃えても、灰は燃えなかったのではないかと考えられます。じゃあ、いったい何が、なぜ「四時間」も燃え続けたのだろう。
 また放射線量が、出火直前と鎮火後でほぼ変わらなかったというのは、誰が聞いてもウソっぽい。
 で、「火災後」をチェックしてみたら、こんな記事がありました
(ごみから社会が見えてくるhttp://gomif.blog.fc2.com/blog-entry-371.html 以下同じ)
 市民が
5月28日(火災から12日後)に測定したところ、「火災の保管庫直近の西側が一様に高く、5月28日現在も0.53マイクロシーベルト/h」でした。ということは、火災当日の線量はもっとずっと高かったはず。
行政も業者も本当のことは言いません。というか、ウソばかり言う。
 さらに驚くのは、「火災原因はいまだ調査中で、郡山消防署によると火災原因判定書が出るまで2か月ほどかかるということです」とのこと。複雑な建物でもないし、多くの化学物質を扱っているわけでもなし、火災原因を突き止めるのに二か月もかかるはずはありません。おそらく、火災原因はわかっているけど、ほとぼりを冷ますまで二か月くらい必要とみているのでは、というのが私の感想です。
 もっともっと驚いたのが、環境再生事務所は、消火時に化学消火剤(泡)を使っていたが、間に合わないので途中から水に切り替えた、そのため、バキュームカーとタンクを用意していたということです。
「--火災消火時、焼却灰は水をかけると流出するので、化学消火剤(泡)で消火していたが、間に合わないので途中から水に切り替えた。その際バキュームカー2台を配置し水は吸引してタンクに詰めた。取り替えタンクも用意した上で行った」
 消防署がバキュームカーや水タンクを用意して駆けつけてくるはずはないので、おそらく環境再生事務所の指示なのでしょう…じゃあ、環境再生事務所はいったいいつ火災の発生を知り、いつこういう準備をしたのでしょう。・・・早い話が、この火災、「出来合い」ではないのか、というのが山本の感。というのは、毎日新聞の記事(指定廃棄物倉庫から出火 放射線量変化なし 福島 毎日新聞-2016516http://mainichi.jp/articles/20160517/k00/00m/040/056000c)には、こんな下りがあるからです。

 ・・・バッグの容量は1袋約1トンで、敷地内4カ所に計約1600袋を保管している。倉庫は施錠されていなかった。周辺に火の気はなく、福島県警が、出火原因を調べている。 同組合の矢野和宏専務理事(63)は取材に対し「民間で指定廃棄物の管理を徹底するには限界がある。国は民間に任せるのではなく、何らかの保管方法を考えてほしい」と話した
 176カ所に点在、集約見通せず
 福島県内にある指定廃棄物は昨年末現在で14万2139トンに上る。環境省は民間の産業廃棄物処分場「フクシマエコテッククリーンセンター」(同県富岡町)を国有化して最終処分する計画だが、事故から5年が経過しても搬入時期は見通せていない。同県の指定廃棄物は現在、民間施設や公共施設、畑などの民有地計176カ所で一時保管されているが、今年3月にも同県二本松市で、畑に置いてあった指定廃棄物が燃える火災があった。また、指定廃棄物ではないものの、昨年9月の関東・東北豪雨では、除染で出た草木類を詰めた袋が大量に仮置き場から流出した。相次ぐ汚染ごみのトラブルに、地元自治体などからは「仮置きは不安定で、台風など自然災害時には大きな被害につながりかねない」と懸念する声が上がる。環境省は「保管管理者に管理体制の徹底を求める以外にない」と対応に苦慮しているのが現状だ。【渡辺諒】

 「核ごみの管理」を押しつけられた形となった民間企業が、国の無策に反発しているわけで、おそらく「火災」の背後にはいろんな事情が隠れているのでしょう。でも、もとはといえば環境省だって「核のごみ」処理にはどシロート。ついでにいえば、東電にも核廃棄物のノウハウなんぞありません。原発を入れる時、誰もそんなことは考えず、問題がわかってからも、知らんふりし続けてきた。私は、原発は政府と核推進企業・政治屋・科学者による市民へのテロだと考えています。テロリストを逮捕もせず、相応の罰も与えないで来たことが、今の惨憺たる状態を招いている。テロ企業はつぶすしかない。2016.6.5

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/