広域がれき処理は違法(1月30日の質疑から)

 昨日の記事、知事の名前を間違えていました。黒沢でなく、黒岩だったか・・・で、ここで訂正しておきます。けど、名前も含め、不思議なほど存在感がない方です。お飾りという言葉がぴったりなのは、本人もある程度それを自覚しているんじゃないかな?
 さて1月30日の最大の山場をメモから起こしました。マスコミが完全黙殺するであろう部分。
 発言の機会は突然来ました。後の方で指名された人が、「喉が痛いので、代理として山本節子さんに発言してもらいたい」と述べたのです(後でブログの読者と知りました)。とたんに司会者の頬が硬直。まるで「しまった…」という声が聞こえるようでした。私は立ち上がりましたが、司会は「ご本人に話してもらいたい」と譲らず、誰もマイクを渡してくれません。会場がざわめき、私の耳には「話させろ!」「止めさせろ!」の両方の声が入ってきました。
 と、機転をきかせた市民が、阻止しようとする職員に追いかけられながら、私にマイクをバトンタッチしてくれました。会場は騒然。「発言できません!」「マイクを!」などの声が飛び交ってうるさい中、私は市民に向かって山北町のエコループの話をし始めました。県主導で、神奈川県の水源の町に巨大ごみ処理コンビナートを作ろうとした話です(つぶしましたが!)。県による法令無視、環境破壊事業の悪例の一つです。その途中、県は私の発言を阻止するのは逆効果と判断したのか、「3分で」発言を許したのです。その質問は概ね以下の通り。


 ①まず根拠法を教えて下さい。実際は根拠法はないのではないかと思っていますが。というのは、がれき特措法には市町村のガレキ焼却など書かれていない。それに、
100ベクレルなら汚染物とはみなさないというのは、原子力規正法の数値で、放射能が一般環境中に出てくると想定されていないから、この数値を今回のガレキ焼却にあてはめるのは不適当です。


②受入れ自治体と基本協定を結んでいるのですか? 東京都では説明会に先立って先方と協定を結んでいますが? また、現地の芦名と焼却灰受入れで水面下交渉が進んでいるのではないかとの疑いが捨てきれません。


③内部被ばくについて、資料の試算は経口接種のみですが、なぜ吸入を考慮していないのか。焼却により非常に径の小さい有害物質(SPM)が生まれますが、これはバグフィルターなどではキャッチできません。簡単に肺に達し、内部被ばくします。危険が一番大きいのが子どもたちです
 ④海外のNGO,学者、専門家から強い批判が起きていることにどう答えるのですか?たとえばアーニー・ガンダーセンは「我々はもう一つのフクシマに直面している』、ドイツ放射線防護協会「汚染値が低いからといって拡散してはいけない」マンガノ教授「すでにアメリカでは14000人の余分な死者が出ている」



ここで司会が「三分たちましたっ!」と私の発言をまたもや強制終了させ、黒岩氏に答を促しました。
(黒岩):法的根拠については、環境省から答えてもらいます(「自分で答えろよ!」「答えられないのか!」)。受入れ自治体と協定のようなものは結んでいません。



 (環境省)今回の、災害廃棄物の広域処理は……根拠法はありません。廃棄物処理法に沿って……(小さな声でもごもご)。
100ベクレルが原子力規正法のクリアランスレベルだということはその通りで、今のような事態を想定していなかった。……がれき特別措置法は昨年の国会で、新たな事態が起きたということで作られたものだが、今回のような広域処理は、措置法の対象になっていません。やはり、廃棄物処理法で……焼却排ガスからはセシウムは出ていません。バグフィルターで補足されることがわかっている。環境省は広域処理のガイドラインを出しており、そこにデータも載せている。40以上の焼却炉でモニタリングしたが、10
万近い(ベクレル? 聞き取れず)ものを燃しても、排ガスからは不検出でした。データを見て下さい(山本「それはメーカーのデータでしょう?」)。
 
答になっていないし(ごまかしに必死…ごまかせないけどね)、答えていない点もあるのに、司会は急いで次の人に質問をふりました。
 質問:十年後、五十年後、がんになったら、責任をとってくれるのですか?


黒岩:それはちょっと飛躍した言い方ではないでしょうか。100ベクレルでは安全ということがわかっている。



 たった今、環境省が否定した「100ベクレルの安全性」、「根拠法なしの事業」という言葉の意味を、質問者も黒岩氏も理解していなかったのです。というか、黒岩氏は決まったセリフしか言えないのでしょう。で、以下に、当日の私の質疑の意味がわからなかった人のために、ポイントをまとめました。他にもありますが、とりあえず重要なところだけ。赤字は環境省がはっきり認めた部分です。
〇 行政の事務はすべて、根拠になる法律(根拠法)が必要です。これは「法治国家」の根本であり、「自分の思い」でなんとかなるようなものではありません。震災廃棄物(がれき)の広域処理は、根拠となる法律が存在しない、違法事業なのです。
〇 廃棄物処理法も、この事業にはあてはまりません。「放射性廃棄物の処理」は同法から除外されているから。原子力規制法の「クリアランスレベル」も、今回のがれき処理の根拠にはなりません
〇 どうしても広域がれき処理を推進したいのなら、関連法すべての改正が必要です。
〇 つまり、広域がれき処理は違法・無法であり、やってはいけません。これは当然、行政訴訟の対象になります。
 このことは、環境省も県職員も業者もよーくわかっています。わかっていないのは、議員と市民。法律のしくみを知らない人をだますのはとても簡単なんです。みなさん、必死に勉強して下さいね。2012.2.12

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/