巨額賠償評決の武田製薬は、証拠隠滅をはかっていた

  今朝、武田薬品、巨額賠償評決に猛反発というニュースが流れました。

「武田薬品」衝撃「懲罰賠償6100億円」はわずか45分で評決された…武田反発「全面対決する」糖尿病治療薬「がんリスク」隠し訴訟  4.21 07:00 [west経済武田薬品工業が糖尿病治療薬「アクトス」の発がんリスクを隠していたとして、米連邦地裁の陪審が出した60億ドル(約6100億円)もの懲罰的賠償金の支払いを命じる評決が波紋を呼んでいる。評決は判決ではなく、賠償が決まったわけではないが、賠償金は過去最大級で、武田株が急落するなどの「騒動」に発展。武田では“稼ぎ頭”として経営を支えたアクトスの後継薬が開発が中止に追い込まれており、事業環境も厳しい。6月のクリストフ・ウェバー最高執行責任者(COO)の社長就任を前に、武田は大きな壁にぶち当たっている。記事詳細]

 原告の主張を馬鹿にした、企業寄りの記事です。しかも、このニュースが外電で流れたのは4月9日で、「ニュース」でさえありません。ハフィントンポストも、ブルームバーグもみな報道していたのです(私も外電で知った)。ところが、日本ではこの問題が報道されなかった・・・私としては、メディアがひたすらSTAP細胞のアホな議論を追っていたのは、武田問題隠しを意図していたのかと考えています。「遅ればせながら」出されたこのサンケイの記事も、当然、企業とメディアの深い仲を反映しているはず。なお、この問題を伝えた唯一のメディア、薬事日報も、ニュースソースは武田のプレスリリースでした。株価の下落もこの↓記事のせいでしょう。

【武田薬品】アクトス膀胱癌連邦裁訴訟で陪審評決‐異例の賠償金6000億円超
4/11http://www.yakuji.co.jp/entry35496.html


 武田薬品は8日、米ルイジアナ州西部連邦裁判所で係争中の2型糖尿病治療薬「アクトス」の製造物責任訴訟で、リスク周知が不十分だったために副作用で膀胱癌になったとする原告の主張を認める陪審評決があったと発表した。補償金1475000ドル(約1億5045万円)に加えて、懲罰金として武田に60億ドル(約6123億円)、2006年まで共同プロモーションしていた米イーライリリーに30億ドル(約3062億円)の支払い義務が認定された。製薬業界では世界的にも異例の損害賠償額だが、判決で覆える可能性もある。アクトスをめぐっては、雄ラットでの膀胱癌リスクが確認されており、99年の発売当初から添付文書に記載してきた。ヒトでのリスクについては、米国で実施している疫学研究「KPNC試験」の中間解析で、主要評価項目では統計学的なリスク差がなかったものの、治療期間が長いとリスクが上昇する傾向が認められ、現在も観察が続いている

 武田のプレスリリースは→ 2型糖尿病治療剤「アクトス®」に起因する膀胱癌を主張する製造物責任訴訟の陪審評決について

 アメリカでは糖尿病患者はまさに国民病。人口の8.3%、2300万人がすでに糖尿病と診断されている、「予備軍」も、毎年数百万人にのぼる、とのリポートもあります。http://www.diabeteshint.com/diabetes-us-statistics-2013.html、肥満大国・アメリカの不健全ぶりを考えれば、納得。アクトスはドル箱だったのですね。・・・その結果、アクトス被害の訴えは相当多く、ルイジアナ州だけでも1200件、全米では3300件以上の「膀胱がん」訴訟が出されていると推計されています。この訴訟のおかげで、アクトスのデータが再分析され、膀胱がんや心不全の訴えの実態がわかり、問題は世界に広がりました。そして、2011年6月までに欧州では処方が禁止されています。NPO法人 医薬ビジランスセンター(薬のチェック)代表の浜六郎氏によると(当時):

 「ドイツ保健省は2010年11月、ピオグリタゾン(アクトス:武田薬品)や同系統のグリタゾン剤であるRosiglitazone(Avandia)を、保険で支払う医療費の償還対象から外す決定をした。11年6月9日、フランスで新規患者への処方を禁止する決定がなされ、ドイツでも同様の決定がなされるに至った。先のドイツでの保険償還対象外措置の主な理由は、心不全と骨折の増加である。今回のフランスとドイツでの新たな患者への使用禁止の主な理由は、膀胱がんの増加である。日本ではいまだに厚生労働省は何の措置も取っていないが、欧米では、ここ1~2年の間、同効物質のRosiglitazoneとともにアクトスの害作用が問題になってい…」http://medical-confidential.com/confidential/2011/07/post-267.html

 とんでもない糖尿病薬だったわけです。フランスでは回収対象になり、アメリカFDAはラベルに新たな「警告」を出すように求めるなど、アクトスの危険性が証明されたのですが、日本の厚労省は知らんふり。日本の患者は、常においてけぼりなのですね・・・

 厚労省、製薬メーカーと並んでタチが悪いのがマスコミ。上の記事はまったく触れていませんが、武田が「懲罰的賠償金」を被った理由は、イーライ・リリー社とともに、「アクトスと膀胱がんの関係を示す文書を組織的に破壊した」から。しかも、武田は、裁判所が証拠保全の命令を出した後に、ファイルもeメールも消去したとのことです。露骨な証拠隠滅で、日本の医薬産業界の歴史的な隠蔽主義をものがたっています。・・・他にも付け足しておきたいことがあるけれど、長くなるので、このへんで。2014.4.21

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/