私は「大量監視社会」を書いたことをきっかけに、「携帯は使わない」ことに決めました。遠からぬ将来、必ず「負の側面」が出てくるだろうと思ったからです。だから、小さい子どもたちが器用にスマホをいじくっていたり、若者が端末でゲームにふけっていたりする姿をみると、「科学の進歩」というより、「人類の制御」と感じてしまうんですけどね。
(写真は指宿海岸で見つけたクラゲ、涼しげ。2013年)
この懸念を裏打ちするような研究結果や、記事が、今年になってから多数発表されています。下は、子どもへのWIFI暴露は、それまで考えられていたよりずっと危険だということを伝える記事。なんと、あのフォーブスに今年の1月発表されていました。以下はその訳。(出典:http://www.forbes.com/sites/robertszczerba/2015/01/13/study-suggests-wi-fi-exposure-more-dangerous-to-kids-than-previously-thought/ 翻訳:山本節子)
「子どもたちが鉛やクロロホルム、排ガスやDDTなどの農薬などに暴露したら、親は心配するでしょう。国連WHOの外部機関である国際がん研究機関IARCは、これらの物質を、その他250物質とともに2Bクラスの発がん物質-おそらく人に対して発がん性がある-に分類しています
。このリストにはもう一つ、高周波電磁界(RF/EMF)が入っています。このRF/EMFの主たる発生源は、ラジオ、テレビ、電子レンジ、携帯電話とWi-Fi装置です。
これは、最新の通信システムの危険性について非難する文章じゃないか、ですって? たしかに、これらの装置と、その結果生じる電磁界は、現代社会で非常に普遍的(しかも増えつつある)なのは明らかです。もし、私たちや子どもたちへのRF/EMF被曝を減らそうと望んでも、それは不可能です。それでも、私たちは、可能な限り、曝露を制限する必要があります。
それは、『ジャーナルオブマイクロスコピー&ウルトラストラクチャー』で発表された、「子供たちはなぜ大人より多くのマイクロ波を吸収するのか:その帰結」という、論争の的になった調査記事の結論のひとつでした。著者らは、他の研究結果の分析から、子どもも成人もマイクロ波を照射する装置によるリスクがかなり高いこと(子供に比べて大人のリスクは低いが、それでも高い)と主張し、次のような考慮が必要だと述べています。
- 子どもは大人よりマイクロ波の吸収量が多い
- 胎児は子どもよりさらに弱い(マイクロ波吸収率が高い)。したがって、妊婦は胎児をマイクロ波照射にさらすことを避けなければならない。
- 思春期の女性と成人女性は携帯をブラや頭に巻くスカーフに入れてはいけない。
- 携帯のマニュアルに書かれている警告は、電磁波への過剰被曝問題が存在することを明らかにしている。
- 政府は警告を発したが、市民のほとんどはそのことを知らない。
- 現在の被曝制限は不十分であり、改訂が必要だ。
- ワイヤレス装置は無線送信機であり、おもちゃではない。これらを使用したおもちゃを売る場合、密接なモニタリングが必要だ。
著者によれば、子どもや胎児をより多くのマイクロ波放射を吸収するのは、体がより小さく、頭蓋骨が薄く、脳の組織はより吸収性があるから、とのことです。
だからといって、すべての電子装置を投げ出せと言っているわけではありません。しかし、少なくとも、大人と子どもでは安全レベルが異なっていることについて、開かれた議論が必要です。願わくはこれらの問題を証明するか、あるいはこの主張を否認するための、より長期的な研究が行われますように。いずれにせよ、現在の政府の規則は十分でしょうか?現在の警告レベルは過去19年間更新されていません。
コラムニストのマーク・ギブズはNetwork Worldで「我々はWi-Fiでゆっくり殺されているのだろうか?」という、不気味な題の記事を発表しています。彼は「…
法律と警告はまことに結構だが、マイクロ波技術を使った製品に対する規制はすべて、安全側で誤ることはまず間違いない。つまり、安全というのは産業界にとってであり、社会にとってではないのだ」と述べています。記事は「我々は50年か100年後、Wi-Fiと携帯が人間の歴史で最大の健康危機をもたらしたことを、悲しみとともに驚きをもって振り返るのだろうか?」との問いかけで締めくくられています。
しかし、そんな最悪のシナリオにいたらなくても、この問題は、たしかに、子供たちがこれらの機器を使うこと、その使用制限などについて詳しい調査に値するものです。
少し突っ込みは甘いけど、なんせForbesだから。・・・それより、驚いたのが、この記事を書いたXテク・ベンチャー社のRobert J. Szczerba でした。彼 元ロッキード・マーティン社の上級名誉研究員であり、グローバルヘルスケアと生命科学部門の責任者として、autonomous systems(大規模IPネットの自律システム)、無人機(ドローンのこと)、仮想環境、データ分析、人工知能、ヘルスケア、ソーシャル・ネットワーキングを手かげてきた科学者・発明家で、いわばアメリカ軍産複合体の科学技術の中核にいた人物でした。その、自称「臆面もないテクノロジーオタクの科学者」がこんな記事を書いたのは、「すばらしい息子ー自閉症ーの父親でいることを誇りに思い、特別のケアが必要な子どもを代弁している」という背景があったから・・・倫理が伴わない技術開発は、常に地獄と隣り合わせ。
ところで日本政府は?というと、いまだにこんな↓調子で、ダメダメ組織。「知らせない」が基本政策だから、知らない人、知ろうとしない人は簡単だまされる。原発、焼却炉、ワクチンと同じですな。
医療機関でのケータイ利用は原則OK、新ガイドラインが公開 …
電波環境協議会は8月19日、「医療機関における携帯電話等の使用に関する指針」(ガイド
ライン)を発表した。医療機器への影響の懸念から原則として禁止されていた病院内での
携帯電話の利用が大幅に緩和されている。(以下略)
ネットリテラシーの高い人でないと、自分も子どもも守れない時代です。なので、
この夏、みなさんのご家庭でもWi-Fi使用についての「お約束」を決めてみませんか?
2015.7.25