国際水銀条約―あなたの署名を!

 水銀条約――私の話を聞いてくださった方は、この話題に覚えがあるかもしれません。この条約を政府系サイトは、こういうふうに説明しています。
 水銀条約(Treaty on Mercury Reduction) とは
 途上国などで深刻化している、
水銀による環境汚染と健康被害を防止するための国際条約。UNEPの主導により、2013年の制定を目指して話し合いが進められている。現在のところ、水銀の供給・需要・貿易の削減や、水銀とその廃棄物の適正な管理と保管、大気への排出削減、普及啓発や各種支援―などの規定が盛り込まれる見込みだ。メチル水銀を原因とする水俣病を経験している日本は水銀条約の制定に向けてリーダーシップをとるべき立場にあり、同条約を「水俣条約」と名付けることなどを提案している。>>水銀条約について続きを読む
 実は、水銀汚染は全地球的な深刻な問題であり(=だから国際条約を決めようとしている)、決して途上国だけの話ではありません。なのに、リーダーシップを取るべき日本は、市民にことの重大さを伝えてもおらず、それどころか他の先進国と一緒になって、これを法的規制がかからないようにしようと暗躍中。
 そこで、これに気づいた環境保護NGOが、きちんとした法的規制を作れ、という署名活動を行っています。下はパキスタンのNGOが出した動議ですが、ぜひこの国際署名にご賛同下さい。(逐語訳ではなく、通りやすい日本語にしてあります。)
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「動議案169 野生生物と生態系、人の健康を守るため法的強制力をもたせた国際水銀条約を」
(原文はここ⇒http://portals.iucn.org/docs/2012congress/motions/en//M-169)



 重要な条約の基本原理に関する措置が弱いため、人為的水銀排出の世界的増加傾向に対し、有効な制御になるとは考えにくく、
野生生物や生態系、人間の健康の保護に失敗するであろうことが深く懸念されている。そこで、2012 年9月6日~15日に韓国済州島で行われる世界自然保護連合のセッションにおいて、
1.INC参加国すべての代表が、以下の要求を支持することを求める:
 a. 特に(水銀汚染に)敏感な人々が存在することを認識し、野生生物、生態系、人の健康を水銀から守ることを目的とする、法的拘束力のある国際取り決めであること
 b.水銀使用を削減するための有効な手段であること
 c.条約の実現化と、市民社会およびその他の利害関係者が、条約の実施と施行に関し積極的役割を果たせるようにするため、国内実施計画の策定を義務付けること
 d.水銀による汚染地域の特定と、指定を必ず義務付けること
 
e.できるだけ早く、有効かつ実施可能なコンプライアンス規定を持たせたと条約を成立させること
2. 会長が IUCN 委員会及び水銀暴露による健康被害と保護意識の拡散を呼びかけている会員ネットワークと協力してことにあたることを求める。


スポンサー: 持続可能な開発政策研究所 (SDPI、イスラマバード、パキスタン)上席顧問、化学薬品、持続可能な産業開発、
Mahmood A. Khwaja博士
www.sdpi.org Tel: 0092 51 2278134 & 36
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 署名は、まず「We will support your No.169 motion on mercury treaty」などと書き、英語で団体名/組織名、そして代表者名と国名を記して、Dr. Mahmood A. Khwaja m.a.khwaja@gmail.com; khwaja@sdpi.org まで送ってください。
 この動議は、水銀問題に関する見直しプロセスを経て、IUCN会議2012のウェッブサイトにアップされているそうで(No.169として)、署名者の名前は署名簿に掲載されます。こういう国際署名に日本人の名前は極端に少ないので、ぜひやってみてください。なお、2008年のスペインでの会議には、この問題を討議に世界中から6千人以上が参加したとのことです。久しぶりの、大型の世界環境条約なのですが、環境問題は、一国ではとどまらないことに、多くの日本人に気づいてほしいです。2012.7.18
(参考記事)
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110323/106181/(日経、皮相)
http://www.unep.org/hazardoussubstances/Portals/9/Mercury/Documents/INC3/IPEN_INC3_Initial%20Views%20on%20the%20Draft%20Mercury%20Treaty%20Text,%20September%202011_Japanese.pdf(IPEN,詳しい)
http://www.airies.or.jp/publication/earth/pdf/13_2-04.pdf(大気中水銀のモニタリングについての論文)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/