富士箱根伊豆国立公園の特別地域及び特別保護地区内における行為の許可基準の特例を定める件の一部を改正する件」(環境省告示)(案)についての意見
提出者氏名:山本節子
住所:神奈川県鎌倉市津602-52
<告示そのものの違法性>
1.今回の告示改正は、国民全体の財産である国立公園の特別保護地区内に、特定の箇所付けをして脱法的に許可基準を解除し、一般廃棄物処分場の建設を可能にするものであり、国民として決して受け入れられない。
2.なぜなら、自然公園法施行規則第11条第20項は、国立公園区域内の土地利用について、「廃棄物を集積し、又は貯蔵するものでないこと」と明文で禁止規定を明記しており[1]、今回、改正しようとしている環境省告示第66号(平成12年10月3日)は、これに穴を開ける特例を設ける内容で、告示自体が自然公園法に違反する。
3.環境省は、いわば「告示」(ゾーニングの特例など)を用いて、施行規則(法律の具体的な規制)を無力化することにより、自然公園法を実質的に改悪している。これは国民の福利公益にそむくのみならず、法治制度に対する悪質な策謀、挑戦であって、即刻、是正されなければならない。
4.このような告示と施行規則のダブルスタンダードを許せば、全国の国立公園で同様な事態が引き起こされる。これは環境省の廃棄物担当部局の誤った環境政策(焼却炉と処分場に頼る「循環型社会形成推進基本法」)がもたらした悪影響であり、環境大臣はこれに抵抗して、自然公園を守るべき義務がある。
5.ところが、この告示に関する手続は、環境大臣とは無関係に、官僚と事業主体との間で進められており、国会の審議にかかることもなく、しかも地元民には何ひとつ知らされない仕組である。これは、法律を悪用した環境犯罪であり、環境省自然環境局国立公園課課長神田修二始め、この問題に積極的にかかわった関係者は国家公務員法違反等の罪で起訴されるべきだ。
6.八丈町は、国立公園について発言権はなく、同告示および今回の告示追加改正は、自然公園法の主旨からいえば、東京都の主導でなされたことは間違いない。この告示について町民は一切の情報を与えられておらず、そこには何らかの水面下取引、あるいは汚職・癒着があったと考えられる。
7.平成12年に告示66号が成立した背景について、国民は何ひとつ知らされておらず、政府には国会および国民に説明責任がある。また、今回の改正については、環境大臣に説明の義務がある。
8.このように、自然公園法には、国立公園内の特別保護地域に廃棄物処理施設を建設することを許可する条文はなく、それを可能にするいかなる告示も違法である。違法な告示にもとづく特例に法的有効性はなく、これに基づく事業そのものも無効である。
<当該事業の違法性>
9.今回の改正は、島嶼一部事務組合による廃棄物処分場計画の着工に道を開くものだが、告示の違法性を措いても、当該計画そのものには大きな違法性があり、このような事業を推進する政府・自民党の本質が問われる。まず、上述通り、自然公園法(施行規則第11条第20項)の禁止条項に違反する。国民は―たとえ法律を知らなくても―「国立公園内にごみ処分場」との考えに強く反発するだろう。
10. 環境基本法に違反する。処分場は表流水や地下水、そして土壌の汚染をもたらすことは、無数の実例で証明されており、これは、人間活動が生態系や環境を損なわないようにすることで、将来にわたって人類の存在基盤である健全な環境を維持することを定めた環境基本法(3条)に違反する。
11. 処分場は環境汚染を引き起こすだけでなく、ダイオキシンや有害重金属、などを排出することによって、海産物汚染からやがて人体被害を引き起こすであろうことは否定できない。これは住民の健康に生きる権利を侵す。住民は処分場による「負の影響」を全く知らされていないが、今後、埋め立てられるものの主体は焼却灰であり、それによる環境への悪影響と人体被害については世界から多くの懸念の声があがっている。日本政府だけがこの実態を無視している。
12. 生物多様性基本法違反。八丈島の野生生物は、離島という閉鎖生態系の中で独自の発展を遂げたものが多く、それは狭い範囲の微妙な生態系のバランスの上に生存している。当該計画は、この閉鎖生態系の生物バランスを大きく崩すことが当然視されるが、事業者はアセス調査(パシフィックコンサルタント㈱実施、廃掃法アセスと呼ばれる簡便な調査)で、現地周辺には数多くの絶滅に瀕した野生生物が生息していることを確認しながら、「予定地にしかいないような野生生物は確認できなかった」として、調査結果さえ公表していない。このことがすでに、豊かな生物の多様性を保全し、その恵沢を将来にわたって享受できる「自然と共生する社会の実現」をめざした生物多様性基本法、及び同名の国際条約に違反する。
13. 森林法違反。予定地の森林は、地域森林計画対象民有林の指定を受けていると思われる。このようなゾーニングのかかった地域は、予定地は水源の涵養、災害防止、環境保全などの公益的機能を有しているとされ、基本的に森林の機能を阻害する開発は許されていない。したがって、対象民有林での処分場計画そのものが違法といえる。どうしても事業を行う場合は、東京都の主導でこの指定を解除するための、長い、煩雑な手続を行わなければならない。ところが、都も一組も、他の法的説明同様、この森林法規制地域についても何の情報も公開せず、一切の説明を拒んでいる。
14. 道路法違反。予定地には多くの町道が通っている。これらの町道は多くの住民が使用している行政財産であり、必ず「事業前」に、その処分についての議会の議決を得なければならない(当然、住民にも周知する)。しかし、八丈町長は、住民に公表することなく、道路敷きを事業者の一組に販売した。住民は公開請求して初めて公共財産の売買の事実を知ったありさまで、これは道路法と特別公務員法に違反するだけでなく、詐欺罪にあたると考えられる。
15. 談合・癒着疑惑。違法告示66号に、どのような事情で「東京都八丈町中之郷の一部」(第3種特別地域)が記載され、それが今回、どのような事情で「東京都八丈島末吉の一部」となったのか、誰一人知らない。このような水面下の法制の穴抜けで、事業を行うというのは、そこに癒着が潜んでいることの証明である。公共事業は透明でクリーンなものでなければならない。自民党のダーティなやり方はもうこりごりだ。
16. 地方自治法違反。八丈島のごみの処理に関する権限は、本来、都ではなく八丈島(町民)にある。当該計画はそこに住む住民の意思を全く無視した押し付けであり、島民として許せない。ごみ問題の解決には、住民の全面的関与が必要であり、八丈島の住民は、ごみの排出段階から徹底的削減と資源化に取り組み、もってこの地域のごみ政策を大きく転換し、国立公園を守っていく決意がある。当該計画は、この住民の意思と権利を完全にふみにじるもので、その悪質さは例をみない。
現在、資料を収集中であり、追って提出する。以上
[1] http://kyushu.env.go.jp/naha/nature/mat/data/m_2_1/1_1_7_2.pdf 許可基準整理表(自然公園法施行規則第11条)