佐那河内:「広域化」でなくてもやっていける

 佐那河内村長選の続報が次々に入っています。小さな村の選挙に注目が集まるのは、国県主導の「ごみ処理広域化計画」に、住民が一矢を報いた珍しいケースだからでしょうか。横須賀のひどさに比べると(誰も地元で反対しない)、胸がすく思いです。

佐那河内村長選 出直し選 ごみ施設計画撤回派岩城氏が当選 推進派、原氏を破る/徳島 2015年11月02日 毎日新聞地方版
http://mainichi.jp/area/tokushima/news/20151102ddlk36010414000c.html
 徳島市など県東部7市町村が佐那河内村に計画する広域ごみ処理施設建設の是非を問う出直し村長選が1日投開票され、新人で計画
の白紙撤回を掲げた岩城福治氏=無所属=が、前職で計画推進派の原仁志氏=同=を僅か52票差で破り、初当選を果たした。投票率は90.44%で、昨年7月の前回(82.27%)より約8ポイント上昇した。当日有権者数は2196人(男1046人、女1150人)。岩城氏の任期は、1日から2019年10月31日まで。岩城氏の当選で、佐那河内村でのごみ処理施設建設は当面棚上げとなった。原氏は、広域行政に積極的に関与することで村内の行政サービス向上を訴えていたが及ばなかった。岩城氏の事務所では、当選の一報が伝わると、集まった支援者から歓声が湧き起こった。登場した岩城氏は万歳で初当選の喜びを分かち合い、「一旦計画を白紙に戻す」と述べ、住民と議論した上で建設の是非を判断する考えを改めて強調した。【立野将弘】 
 ◇開票結果=選管最終発表
当 1014 岩城福治 58 無新
   962 原仁志 63 無前

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 「広域ごみ処理施設」計画は、前村長が昨年7月に当選した時でさえ、有権者にも議員にも知らされず、完全に闇の中で進められていました。普通は議員を入れた協議会などで議論するから、非常に異常な進め方です。前村長が判断力も思考力もなく、なんらかの利害関係者に引きずられていたのかもしれませんけどね~。幸い、昨年10月にはこの計画が明るみに出て、怒った住民や議員は、すぐに反対グループを組織。議会は同年12月と今年3月、住民合意のない計画の
白紙撤回を求める意見書を全会一致で可決しました。その後の住民の努力ーー情報集めや交渉、住民教育ーーを考えると、票差が52票とは、推進側の巻き返しが激しかったせいかもしれません。
 さて、推進派は「(小さい村葉)広域行政の中でしか生き残れない」と言うんですけどね、これは間違い。人口の少ない地方自治体は、古くから相互扶助・応援の慣行があり、いろんな分野でそれぞれ相互協定を結び、協力体制を整えているはずです。消防も福祉も。
 ただし「ごみ」は例外。ごみ処理の基本は発生源処理(分別含む)であり、広域化することで、コストが増え(施設が巨大化し)、汚染が広がるから。廃棄物処理法もそのような基本を踏まえ、ゴミ処理を「自治事務」としていたのです。
 それをぶち壊したのが、本来、ごみ処理には無関係だった国と県なんですね~そのあたりは私の「ごみ処理広域化計画」を見ていただけるとよくわかると思いますが、とにかく悪法「循環型基本法」以来、日本の廃棄物処理はもう滅茶苦茶。なぜなら、広域ゴミ処理は、焼却炉メーカーや大手・地元ゼネコンを潤すためのビジネスとして導入されたからです。

 すべてが産業界の都合。彼らの狙い環境省の交付金(循環型交付金)と民営化であり、施設が大きいほど、新技術を導入するほど交付金の額はあがる。もちろん、住民の意図など完全無視。おまけに、交付金のあり方をうるさく監視している市民などいないから、工事費の水増しはあたりまえ、談合も当たり前、そしてそのつけはすべて国民へ。
 この事業に対する交付金を得るには、まず、①一部事務組合を設立し、次に②「循環型社会形成推進地域計画」を環境省に提出し、③その後、交付金を申請となります。この作業に初めから終わりまで密接にからむのが「県」。だから、徳島県が、今回の事業では「ウチは関係ない~」と逃げ回っていたのは超おかしい(私がどんなに追及しても「知らぬ存ぜぬ」でしたからね)。
 だって、業界は、こうして地方自治体をオトリに、国県を通じて税金を吸い上げているわけ(見返りは天下りの椅子と裏金)だから、普通は県が前面に出ますよ。それが出なかったのは・・・やはり「放射性廃棄物」が隠れているんだろうなあ。住民の信頼と安心があってこその地域行政。生きき残ろうと思えば、「広域」から外れることです。2015.11.3
 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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