「HPVワクチン被害者の希望に沿って」行なわれた名古屋市の子宮頸がんアンケート調査。その結果は、打っても打たなくても「差はない」というもので、各界から大きな批判を浴びていましたが、河村市長はこの「結果を撤回」することにしたとのこと・・・つまり、いったん速報で出した「結果」を取り消して、「結論は出さない」ことにしたということです。
子宮頸がんワクチン調査 名古屋市が結果を事実上撤回
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160626/k10010572681000.html
子宮頸がんワクチンの接種後に出た体の痛みや記憶力の低下はワクチンによるものかどうか、全国で初めて大規模調査を行った名古屋市が、ワクチンを接種したグ ループとしなかったグループとの間に症状の差は無かったとする分析結果を事実上撤回し、今後、データの分析はしない方針であることが分かりました。こ のアンケート調査は、去年、名古屋市が市内の中学3年生から大学3年生の女性およそ7万人に、体の痛みや記憶力の低下など24の症状の有無を尋ねたもの で、子宮頸がんワクチンを接種したグループとしなかったグループとで症状の出方に違いがあるかを比較する全国初の大規模調査として注目されました。
名古屋市は、去年12月、2つのグループの間に有意な差は無かったとする見解を発表していましたが、今月出された最終報告書では、この見解を事実上撤回して 調査の生データを示すにとどまり、今後、データの分析は行わない方針であることが分かりました。名古屋市は、12月のデータの分析方法に疑問の声が寄せら れたためとしています。
薬の副作用の問題に詳しい京都大学の川上浩司教授は、名古屋市が独自に調査したこと自体は評価されるべきだとしたうえで、 「専門家の間でもデータの分析のしかたで意見が分かれることもあるが、調査は7万人の市民に協力を求めたもので、市民がいちばん知りたい疑問に答えるべき ではないか」と話しています。ワクチンと症状との関係については、国も同様の調査を行っていますが、結果がいつ出るのか見通しは立っていません。
接種の積極的な呼びかけ中止して3年以上経過
子宮頸がんワクチンを巡っては、国が接種の積極的な呼びかけを中止して3年以上が経過する異例の事態となっています。国 は、呼びかけを再開するかどうか判断するため、全国の医療機関を通じて同様の症状が出ている患者の状況を確認し、ワクチンの接種と症状の因果関係を調べる 調査を去年から始めています。しかし、現在は1万9000ある医療機関に対象となる患者がいるかを確認している段階で、患者の詳しい症状などを集めて最終 的な分析結果をいつ出せるのか、見通しは立っていません。子宮頸がんワクチンを接種する人は、ピーク時の100分の1以下に減っている状況が続いていま す。アメリカなどでは、病院のカルテの情報などを元にこうした調査を迅速に行える仕組みがあり、日本も同じようなシステムを一刻も早く導入すべきではないかと指摘する声が専門家から上がっています。
名古屋市の決断は当然でしょう。実はこのアンケート調査、最初から「差はない」という結果を引き出すためにデザインされていました。そのことは本ブログで予測し(名古屋市の子宮頸がんアンケートへの疑問 | WONDERFUL WORLD 2015/09/05 )、現実もその通りになったのですが、これを「撤回」したのは、「疑問の声が寄せられたため」ではなく、おそらくこの調査に関与した学者が引いたのと(利益相反の疑い)、被害者らの提訴が近いからではないかと考えます。
さて、NHKの記事で気になるのが最後のマーカー部分。「アメリカなどではこうした調査を迅速に行なえる仕組みがある」そうだけど、これは、国家と企業(ワクチン推進者)が、「調査」を口実に個人情報に直接アクセスできることを意味しており、個人情報保護の観点からは非常に危険であり、導入すべきではありません。
彼らが真似たいのは、多分、アメリカのVAERSVaccine Adverse Event Reporting System(ワクチン有害事象報告システム)でしょうが、これは被害者の訴えをそのまま受け付け、ネットで公表するシステムであり、個人のカルテにまで遡って被害の分析を行なうものではありません。なんたって、「カルテ」は究極の個人情報だから、そこへアクセスするとしたらいろんな法律を変えなきゃいけない。ところが一般市民はそんなこと知らない。そこを見越して、医薬産業界はー国営放送を通じてー「新たな調査システム」の必要性を訴えているわけだから、くれぐれもだまされないようにしましょう。なんたって、上記VARESの「有害事象」さえ、日本語では「副反応」と意図的に誤訳されているのです。この件、重要なので、続けます。2016.6.27