原発新設に91%が「ノー」、韓国の住民投票

  ただし投票率は32%・・・これは、韓国・盈徳(ヨンドク)の住民が、政府や事業者の嫌がらせにめげず実施した住民投票での結果です。以下は、韓国・大邱在住の岡田卓己さんによる緊急翻訳です。下線(山本)部分に注意。原文はハンギョレ新聞↓
영덕 원전 유치 찬반 주민투표, 32.5% 투표해 91.7% 반대 2015-11-13 09:38  http://www.hani.co.kr/arti/society/area/717305.html

盈徳(ヨンドク)原発誘致賛否住民投票、32.5%が投票し、91.7%が反対
 
慶山北道・盈徳(ヨンドク)原子力発電所の誘致賛否を問う住民投票で、91.7%が反対票を投じた。投票率は32.5%に終わった。盈徳原子力発電所誘致
賛否住民投票管理委員会(委員長ノ・ジンチョル慶北大教授)は13日「住民投票開票の結果、原子力発電所誘致賛成票が7.7%(865人)、反対票が
91.7%(1万274人)と集計された」と明らかにした。全有権者3万4432人(9月基準)中、1万1201人(32.5%)が投票した。このような
投票率は、住民投票法で定めた効力の基準である3分の1を越えることが出来なかった数値だ。

 住民投票法第24条(住民投票結果の確定)は「住民
投票に付された事項は、住民有権者総数の3分の1以上の投票と、有効投票数過半数の得票で確定する」と規定している。また「全体投票数が住民有権者総数の
3分の1に未達になれば開票をしない」とされている。2014年地方選挙と2012年総選挙で盈徳郡(ヨンドクグン)の投票率はそれぞれ72.9%と
63.0%であった。

 だが、今回の住民投票は政府と慶北道、盈徳郡が「原子力発電所建設は国家事業であり、住民投票の対象でない」として、投票
業務を拒否して民間主導で行われた
盈徳郡議会(議長イ・ガンソク)が去る4月15日議員7人全員一致で、原子力発電所誘致賛否を住民投票で問おうとし、
決議案を採択したが無効とされた
このために、20%にも達する不在者投票もなかったし、完全な投票人名簿も作ることができなかった。緑の党と環境運動連合が、それぞれ住民投票参加運動を行ったが、投票率はついに3分の1を越えることができなかった。盈徳(ヨンドク)はこの間、世論調査で原子力発電所誘致
反対世論(60%)が賛成世論(30%)より倍も高い結果が出ていた

 ノ・ジンチョル住民投票管理委員長は「政府が住民の正当な住民投票参加を
妨害する反民主的な態度をとった
。また、韓水原〔韓国水力原子力(株)=韓国唯一の原発電力会社〕が投票所周辺に駐車した乗用車の中から、カメラとブラッ
クボックスなどを使って投票に参加した住民を撮影したり、投票所周辺で騒動を起こして投票参加を妨害した
ことについても遺憾の意を表明せざるをえない」と
話した。彼は「それにもかかわらず、盈徳の運命を自ら決めるために、住民投票に参加された住民たちに感謝の言葉を差し上げる。産業通商資源部長官と盈徳郡守〔郡長・郡知事〕は、住民の意見を謙虚に受け入れなければならない」と付け加えた。
盈徳(ヨンドク)/キム・イルウ記者
cooly@hani.co.kr
 
 以下は、岡田さんの解説です。ご本人の了承を得て掲載します。

>慶山北道・盈徳(ヨンドク:日本海(東海)側、慶州の北約50km)には、今年の初め核発電所建設建設が発表されました。盈徳より北方の三陟(サムチョク)で、昨年核発電所建設反対の市長が当選し、住民投票で80%以上の反対票が投じられ、原発建設の矛先が盈徳に向けられたためです。盈徳 緑の党・環境運動連合・農業組合は、毎週水曜日にキャンドル抗議集会・行進を各行政区で行い、私も脱核大邱市民行動に集まる緑の党・環境運動連合の方々とともに、何回か盈徳のこうした行動や1泊の会議・反対行動に参加してきました。
 そして、11月11日(水)に盈徳住民投票を行うことも決めました。
> しかしながら、盈徳郡守(郡知事に相当)は、郡議会全会一致で住民投票を行うことが決議されたのにもかかわらず、それを無視して「住民投票を行わない」と表明しました。
そこで、盈徳市民は自主的な住民投票を行うことにしました。
> 投票者名簿も与えられない中で、緑の党・環境運動連合・農業組合の方々は、各家を個別訪問して、全有権者3万4432人(9月基準)中、3万名近い投票者名簿を作成しました。投票所は20カ所で、大邱からも11日(水)の前日やそれ以前から投票行動の支援で盈徳へ行きました。韓国水力原子力(株)は、慶州・月城原発の職員約100名を先週から盈徳へ派遣し、「住民投票は無効だ」という大キャンペーンを行いました。
> こうした中での、投票率32.5%、反対91.7%です。
> 住民投票法では、投票率は1/3(33.3%)を越えなければなりません。それには、0.8%不足しました。しかし、この1万名の反対投票は、非常に大きな力であり、もしも公的な住民投票が行われたのならば、圧倒的な多数で誘致反対が決まったことでしょう。
> 私も参加した盈徳での水曜キャンドル抗議集会・行進は、人数も2~3百人くらいと参加者が少なく、住民投票の結果を危ぶんでいました。
> 今朝、大邱で一緒に脱核行動を行っている日本の友人に電話をしました。彼も火曜日から盈徳入りだったからです。すると、彼はまだ盈徳にいました。彼の話では、住民投票の行動の先頭に立ったパク・ヘリョン(盈徳環境運動連合)さんを初めとして盈徳の皆さんは大泣きだったそうです。
> 「盈徳の住民は反対行動については冷静だったが、心の中は核発電所に対して熱い怒りを持っていたことが証明された。これで、盈徳核発電所反対についても、より広く公然と議論ができ、大きな反対運動が形成できる」と、皆さん話していたようです。詳しい状況が分かり次第、また連絡します。

 三陟(サムチョク)での大敗に懲りた推進側が、どれだけ住民投票を嫌がっていたかわかります。日本より小さい韓国には34の原発があり、今後も12基を建設予定(英文Wiki)とのこと。
この強気の理由は、韓国は世界で唯一、核の最終処分地が決まり、すでに供用開始されているから(よく話題になるフィンランドのオンカロ地下処分場はまだ運用されていません)。

「韓国原子力環境公団(KORAD)は、慶州市の中・低レベル放射性廃棄物処分場「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第一段階の地下空洞型処分施設において、2015年7月13日より廃棄物の処分を開始した」http://www2.rwmc.or.jp/nf/?p=6796

 問題がおきると汚染は日本列島、日本海を直撃するでしょう。フクイチを起こしてしまった国の住民としても、韓国の反対運動を応援したいと思います。2015.11.14

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/