原発「新規制基準」、やっぱりおかしかった

 ところで、高浜原発4号機は3月2日午前には「1次冷却水の温度が93度以下の冷温停止」を達成、機器も異常なし↓とのことで(なのに、トラブった・・・)、次は「再々稼動」が焦点になります。

原子炉緊急停止、機器に問題なし 関西電力高浜原発4号機
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/90716.html

 関西電力は3日、福井県高浜町の高浜原発4号機(加圧水型軽水炉、出力87万キロワッ
ト)の原子炉が緊急停止したトラブルで、発電機から送電側までの機器自体に問題はなかったと発表した。今後、検知器の設定値が妥当だったかどうか調査を進
める。原子力規制委員会への原因調査の結果と対策の報告は「来週早々になる」とした。
関電は、県と高浜町にも原因調査の結果と対策を説明し、了解を得た上で再稼働を進めたい考え。当初3月下旬を目指していた営業運転は「厳しいと考えている」として、4月以降に工程を見直す考えを示した。トラブルは、これまでの調査で2月29日に発電機と送電設備をつなぐ並列作業を行った瞬間、電圧差が生じ、送電側から一時的に設定値を超える電流が検知器
に流れたことで、警報が鳴ったことが判明している。発電機側から出た電気の電圧を上げる主変圧器や発電機などを外部点検し、内部の回路などを調べたが、異
常は見つからなかった。
検知器は、100%出力のフル稼働時に流れる電流の30%以上になると作動し、発電機を自動停止させる設定としている。会見で関電原子力事業本部の宮田賢司副事業本部長は「設定値を30%以上とした経緯などについても調べる」と話した。
(2016年3月4日午前7時15分)

 県と高浜町の「了解を得た上で」だそうです。でも、地方自治体の主権は「住民」にあり、これは、住民の了解なしには動かさないと言う意味だから、住民はそのあたりをきっちり把握しておかないとね。無能・無気力な原子力規制委員会に「お願い」するより、自治体に圧力をかけて正気に戻すようにした方がずっといい。
 ところで、アメリカの老朽原発ーーそこで何が起きているのか (03/05)を書いたついでに、初めて日本の原発再稼働に関わる新規制基準に目を通しました。すると・・・ガンダーセンの言う通り、無責任体制の極みでした。まず、新規性基準がカバーしているのは、これ↓だけ。

  • 地震や津波等の大規模な自然災害の対策が不十分であり、また重大事故対策が規制の対象となっていなかったため、十分な対策がなされてこなかったこと
  • 新しく基準を策定しても、既設の原子力施設にさかのぼって適用する法律上の仕組みがなく、最新の基準に適合することが要求されなかったこと


…今回の新規制基準は、これらの問題点を解消して策定されましたこの新規制基準は原子力施設の設置や運転等の可否を判断するためのものです。しかし、これを満たすことによって絶対的な安全性が確保できるわけではありません・・・(
新規制基準について
 
 おそるべきことに、施設の老朽化や劣化のことなど全く考慮してない!! 問題は自然災害だけ! 自然災害以外には、停電対策、火災対策(難燃化電線を使う)などをあげていますが、基本的に「施設は無傷、問題なし」の前提で策定したのが、新規性基なのです(ちなみに核燃料施設に関しては「経年変化に対する考慮」と,一言だけ書いてありました。https://www.nsr.go.jp/data/000070101.pdf)

 なるほどね~、だから川内でも高浜でも、みんな必死に火山や地震、津波を問題にしていたんだ…ほんとに不思議でしょうがなかったんですけどね。車だって、どんなに手入れしても40年は持たないのに(クラシックカーはいざしらず、今の車はプラスチック製だもの)、もともとの稼働期間を延長するというのに、(目の前に迫っている)施設老朽化より(圧倒的に頻度が少ないと思われる)自然災害を重要視するのはおかしい、誰かがミスリードしていると思ったのです・・・反原発で有名な団体やNGOも、ひたすら「避難計画がおかしい」だの「活断層が…」だったもんね。いや~、そりゃあ間違いなく「仕掛け」がある。
 
 で、規制内容の「方向性」がどこで決まったのか知ろうと、原子力規制委員会03-5114-2190に電話しました。ところが窓口の女性Sは、「私がお答えします」と担当者に代わろうとしない。で、あなた何よ?と聞くと、自信満々で「コールセンターの一員でございます」。
 はん、これは市民の生の声を規制委員会に伝えないための外部組織だ、と直感しました。で、確認すると、「はい、録音しております」。もちろん、私の電話番号も同定し、関係者に回されているはず。行政とその下請け機関は、個人のプライバシー無視は許されているのです。

 さて、彼女は私の質問(具体的には「検討チームの有識者を指名したのは誰か」、です)に全く答えられず、何回も「確認します」「少々お待ちください」をくりかえしたあげく・・・
 「指名したのは委員会でございます」「委員会の誰?」「少々お待ちください・・・あのう、学会からの推薦です」「推薦を依頼した文書はどこにあるの?」「そういうものはホームページにはありません」「だから電話してるんじゃないの」「すみません。お答えいたしかねます」「それはマニュアルの答なんでしょうけど、お答えいたしかねる、って、わかっているけど答えないってことよ」「・・・そうでございますか?」「そうよ、ちゃんと日本語を勉強しなさい!」と電話を切りました。

 Sは「私は事業者ではございません」と言ったけど、こういう「窓口」は、業界団体が関連していることが多いのよね。この電話で、規制委と電力業界がつるんでいること、新規制基準はそれこそ電力業界の意を受けて策定されたらしいことがわかりました(そうでなければ、検討チーム発足以前の文書もすべてオープンにしているはずです)。

 私は、老朽原発を動かすのは犯罪行為だと考えます。公害犯罪処罰法相当。市民にはその視点が欠けているんではないか? そして、原発再稼働で最重要視すべきは「老朽化・劣化」だと思います。高浜4号炉でおきた二回のトラブルも老朽化に関連していると思われるのに、市民もメディアもなぜその点をとりあげないのか? 東京嫌いの私が、ガンダーセンの話を聞きにわざわざ上京した意味はそこにあります。

 高浜4号炉の一次冷却水(汚染水)漏れも、今回の緊急停止も、北陸の強い潮風にさらされ続け、ぼろぼろになった施設からの、停止を求める悲鳴に聞こえます。しかし、規制委員会は再稼働を承認する組織、その手続きに乗れば、どんなに危険でも4号炉は再々稼動されるでしょう。そして次には、40年が経過した1,2号炉の再稼働が待ち構えています。2016.3.8

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/